我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

片喰 一歌

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ホーリーナイト・セレナーデ

ホーリー・ナイト・セレナーデ<Ⅲ>

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「……ぁっ♡ こんなの知ったら、戻れなくなっちゃう……♡♡ びゅーってされるの、すっごく気持ちいい♡」

 開けっ広げな感想にも彼は目を眇める。 

「よかった……♡ 俺もつい夢中になっちゃった♡♡ 苦しくなかった?」

「全然平気♡ もっと激しくてもいいくらい♡」

 繋がったままの性器から、どちらのものとも知れない体液が重力に従って流れ出る。深い欲望と重い愛情に酔いしれ、なかなか視線が解けない。世界にたったふたりだけになってしまったような気分だ。間違いなく、いまこの瞬間、この場所は名実ともに『聖域』だと思った。

「激しくてもいい? 『激しいのがいい』じゃなくて?」

「あなたとだったら、なんでもいい♡♡」

「そっか。じゃあ……ちょっと動くよ。ごめんね」

 彼はわたしを抱えて身体を倒していく。その弾みで、すでに硬度を取り戻しつつあるソレに内側を引っ掻かれた。

「ひゃっ、ぁ♡ 今度は正常位でするの?♡」

 無駄な肉のない顎に惚れ惚れとしながら、高い位置から見下ろしている彼に尋ねた。
 
「うん。やっぱり俺はこっちのほうが性に合ってるみたい♡♡ このほうが激しくできるしね?」

 と無邪気に笑って言うけれど、その内容は地味にえげつない。予告編のように二、三度突かれ、頭の中に桃色の靄がかかり始める。

「んっ……! わたしもあなたに上に乗られてるの好き♡♡ 逃げたくても逃げられない感じがして…………」

「そんなふうに思ってたんだ? ……それなら、こうしたら?」

 言うなり、彼は身を屈め、わたしの両脇に肘をついた。下敷きになっていた髪が引っ張られて顔を顰めると、即座に横にずらしてくれる。申し訳なさそうな表情と唇の動きで伝えられた『ごめんね』には、ゆっくり頷いて微笑んだ。

「きみのこと、閉じ込めちゃった♡ 」

「ふふ、閉じ込められちゃった♡」
 
 笑い合ったあとで真面目な顔になった彼は、こつんと額を合わせる。
 
「愛してる」

 凛とした声で発せられた五文字に色めき立つ。聞き慣れ、言い慣れている四文字を返そうか迷ったが、この場面で最も適切な受け答えはわかっていた。

「わたしもあなたを愛してる」

 と言えば、まんまるな瞳は半月になり、時を置かずに三日月になった。そのまま彼が瞼を下ろして口付けを交わす。わたしはキスのあいだ、閉じていても立体感のある眼球をこっそり盗み見ていた。

「ありがとう」

 目を開いた彼は、一度口を離してそう言ったのち、ゆるゆると律動を再開させた。
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