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ホーリーナイト・ラヴァーズ
ホーリー・ナイト・ラヴァーズ<Ⅹ>
しおりを挟む「わたしのカラダ、昨日からずっとおかしくて。おなかの……このあたり。ここがね、ずっと……拗ねてる感じで」
この際すべて白状してしまうことにして、痛む箇所を指す。簡潔にいえば、排卵痛がわたしの主訴だった。
「拗ねてる?」
「そう。ちくちく痛くて、『今月もまた赤ちゃん作れないの?』ってせっつかれてるみたい。細い針でぷすぷす刺されてる感じ」
こんなことを言われても訳がわからないだろうし困るだけだろうに、親身になって聞いてくれている彼。くびれに置かれた手も労るように撫でさすってくる。
「今月も……ってことは、昔からよくあるの?」
「たまに。でも、ここまでひどいのは初めてかも」
「大丈夫? いまも痛む?」
口角を下げて心配そうにしている彼の手を持って下腹部へ誘導する。
「ちょっとね。…………ほら、ここ。触って?」
「このあたり?」
「ぁんっ♡ おててあったかくてすき♡ そう、そこ……その下にあるの、わたしの卵巣♡♡ ぜったい排卵しちゃってる……♡ 赤ちゃん欲しい欲しいってぎゅんぎゅんして、苦しいの止まってくれなくて……♡♡ ね、わかる?」
自分よりも高い体温と硬く乾燥気味の皮膚が問題の箇所に触れるや否や、スイッチが入ってしまったわたしは目の前の男に訴えかけた。だって、この苦しみから抜け出すためには彼の協力が必要不可欠だから、必死にもなる。
「ほんとにどうしちゃったの……。やっぱり今日、いつも以上に積極的だね♡♡」
彼はくびれを強調するように腰をくねらせるわたしを愛しげに眺めている。
「こんなわたしは嫌?」
「まさか! いつもの控えめなきみも好きだけど、大胆なきみもすごくいい……♡ でも、ベッドの上では前から情熱的だったかな?」
舌なめずりをしても、その気品は少しも損なわれることがない。けれど、野性的なその色気にあてられたわたしはたまったものではない。十分に疼いていると思っていた全身の性感帯が悲鳴を上げているのを感じる。
「だって、待ちきれなかったの♡ 昨日はおなかがうずうずして、全然寝れなくて、つらかったんだから……」
と言うと、彼は納得した様子で大きく頷いた。
「…………ああ、それでお目目が真っ赤なんだ。今日のきみ、なんだかうさぎみたいだね。発情して、恥ずかしいおねだりしちゃって……寝不足で目まで赤くしてさ。ふわふわでかわいいだけじゃない……♡♡」
どんな痴態も彼の目を通せば、愛らしいフィルターで補正されてくれるらしい。ほぼ確実にそれがわたし限定で発動するであろうことに優越感をおぼえつつ、いましがたなされた評価を上目遣いに復唱した。かわいくて寂しがりな、繁殖力の高い草食動物。
「うさぎ…………」
「うさぎといえば、きみって見かけによらず性欲旺盛だよね。そういうところも似てると思うし、すごくかわいいんだけどさ、付き合い始めたときから心配で仕方なかったよ」
「心配?」
「だって、早く孕ませないと、他の奴に取られちゃいそうで……。何回ゴムに穴開けようと思ったかわからないくらい思い詰めてたんだよ。いまだから言えることなんだけど。さすがに実行したことはないからね。騙し討ちとか無理矢理とかはしちゃいけないし、そういうのはやっぱり、同意してもらったうえで正々堂々するべきだから」
形の良い唇から紡ぎ出される本能に即した本音に、先日会ったばかりの友人の懸念が頭を過る。彼女はこう言った。『カレ、あんたにベタ惚れだから、結婚したらさっさと孕ませちゃうかと思ってた』と。そんなはずはないと高を括っていたが、なんと彼女の読みは的中していた。あのとき、わたしは心の片隅で『もしそうされても嫌ではない』と思っていた。でも、いまは違う。『いますぐにでも孕ませてほしい』と願っている。
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