我々はうさぎではないので、乙女座の我が子にはまだ巡り逢えない

片喰 一歌

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グッド・ナイト・タイム

グッド・ナイト・タイム<Ⅸ>

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「……なんて言っても、無責任に種付けするだけして子育てにはノータッチな最低野郎って感じだね。困ったな……。どう伝えたらいいんだろう」

 爽やかな彼の口から出てきた単語に耳を疑う。聞き間違いかと思ったけれど、彼はのほほんとしている。

「ああ、ごめんね。少し品性に欠ける物言いだったかな? それとも……想像した?」
 
「想像、って…………」

 さらりとくびれに触れる指先は、わたしの本能を身体の芯から引き摺り出そうとしているようだ。確かめるまでもないのに、わたしは大好きな声で際どい言葉が紡がれるのを期待してしまっていた。
 
「俺にナマで挿れられて、一番奥で出されちゃうところ♡」

 家畜相手にするような表現に比べれば人間的とはいえ、それでも十分に直接的な台詞を囁いてくる彼も相当昂っているらしい。妄想を搔き立てる言葉責めにはまだストックがありそうだ。
 
「やっ……♡ えっちなこと言わないで♡♡」
 
 なんて、大嘘ばかりじゃ意味がない。わたしはきっと、あなたの思うより奥手でも純情でもない。ひと泡吹かせたかったけれど、次に発言したのも彼だった。

「そしたらさ……赤ちゃん、デキちゃうかもしれないね?」

 悪魔の誘いに、どくりと脈打つ心臓。彼の胸にも手を当ててみたけれど、いまいちよくわからなかった。

「…………言われる前から想像してたよ」

 でも、やられっぱなしではいたくない。彼が我を忘れて没頭するくらい夢中にさせたい一心で、からからの口で愛欲を吐き出すと、窺えたのは意外そうな顔。第一声は成功だ。

「え?」

「軽はずみにしていいことじゃないのはわかってるの。でも、ゴムなんてしないでそのまま挿れてほしい……って」

 少年と男性の切り替えに、わたしばかりどきどきさせられるのが悔しくて、大胆になってしまう。そんなことを競うための時間ではないのに。

「それは、妊娠がどうとかってこととは別に?」
 
「うん。終わったあと、急いで抜かなくていいから……」

 セックスにおける不満があるとすれば、絶頂の余韻に浸れないことだった。果てたあとに離れていく彼の身体を引き留めてしまいたい衝動に駆られた経験は一度や二度ではない。ただそれだけの理由でナマでしたいなんて言って、引かれてはいないだろうか。きゅっと閉じていた瞼を開けると、鍾愛を溢れさせた彼と目が合う。

「…………なにそれ。ずっとくっついてたいってこと? かっわいいなぁ……。そんなに俺のこと大好きなんだ?」

 首に縋り付く。彼本来の香りが鼻腔に充満して、幸福感に鼻を鳴らしてしまった。これではまるで愛玩動物だとわかっていても、止められない。

「大好きじゃ足りないよ、愛してるの……。ねぇ、あなたは? イってからもわたしとくっついてるのは嫌?」

「とんでもない! むしろ、叶うならヌカ六したいくらい……♡」

 綺麗な顔立ちに似合わない俗っぽさの象徴じみたそのワードは、わたしの穴を濡らしていく。

「ヌカ六って…………!」

 一度も抜かないで、繋がったまま六回戦なんて。そんなことをしたら、確実に妊娠してしまいそう。……とはいうものの、彼もわたしと触れ合っていたいのだと知ることができて、ほっとひと息つく。

「でも、あなたならできそうだね」

 普段の回復力を思うと、彼側に問題はなさそうだ。わたしの体力が持つか心配だけれど。少し考えて言うと彼は笑った。
 
「さすがに六発は厳しいんじゃないかなぁ。でも、そうだね。なんとなくわかってきた気がするよ。俺たちは赤ちゃんがどうこうって前に、お互いのことが好きすぎるみたいだ」

 とキスを降らせる彼も、わたしとふたりの生活が気に入っているのだと自惚れてもいいのだろうか。

「ふふ。そうみたい」

「俺もきみのこと愛してる」

 随分と生々しい話をしてしまったが、気まずい空気が流れることもなく、わたしたちは戯れ合った。
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