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あなたからのプレゼント?
あなたからのプレゼント?
しおりを挟む十一月も残りわずかとなったある晩のこと。ここしばらく仕事で忙しかった彼と数日ぶりに食卓を囲んだあと、わたしたちはソファに移動して、まったりとしていた。
「あぁ、そういえば……クリスマスに欲しいもの、そろそろ決まったかな?」
背後から聞こえた声は浮き立っている。ひとに贈り物をするのが好きな彼は、この時期に限らず年中サンタクロースのようなものだ。
「まだ決まってないの。ごめんね」
と振り向いて言えば、彼はにっこり答える。
「ううん、気にしないで。きみの欲しがるものはいつも慎ましいというかなんというか……。直前になってからでも間に合うから、ゆっくり考えたらいいよ。決まったら教えてね」
「ありがとう」
前へ向き直ったわたしは、対のマグカップから立ち昇る湯気を追いかけながら、昨年はなにをねだっただろうかと考える。わたしは彼がいてくれるだけで十分満たされているし、何不自由ない暮らしを送ることができているのだって彼の稼ぎあってのことだから、取り立てて欲しいものなどないのだけれど。
視線を湯気から左手へと移す。わたしの薬指に馴染んだ指輪。彼と一緒に過ごすとき、必ず着けるようにしているこの輝きは愛の証。いまどき『結婚は一生に一度きり』なんてこともないけれど、少なくともわたしが愛するひとは生涯で彼ひとりだ。彼もそうであってほしいと、わたしの手首に添えられた彼の手に光る指輪に願った。
「そういえば、あなたは? なにか欲しいものある?」
ふと思い出して聞いてみたが、答えは聞くまでもなくわかっている。
「俺? どうかなぁ。欲しいなと思ったら、その場で買っちゃうし……特にこれといって思いつかないんだよ。ごめんね」
予想通りの彼らしい回答につい笑みがこぼれる。プレゼントの希望がないのもお互い様ね。
「言うと思った。それはいいけど、ちゃんと自分のものも買ってる?」
「買ってる買ってる。でも、どうして?」
きょとんとした顔が愛らしい。羨ましいくらいぱっちり大きな目に、その周りを縁取る睫毛だって、わたしみたいに必死になってカールさせなくても、ふんわり自然に上を向いている。
「あなた、すぐわたしに『きみに似合いそうだから買っちゃった』っていろいろくれるから」
「なるほど。きみは優しいなぁ」
そう言って、彼はわたしの頭を撫でた。髪を滑っていったその手つきに思わず反論する。
「どっちが」
こんなとき、『あなたのほうがずっと優しいよ』とでも言えればいいのに、ままならない。顔から火が出そうになってしまう愛の言葉でもないのに、わたしは彼を前にすると、どうも素直になれなくて困る。
「……ふふ。かわいいねぇ、きみは」
いちいち振り返って見なくてもわかる、慈しみを帯びたあたたかい声が耳をくぐっていった。心のなかまで読まれてしまったようで恥ずかしくて、返事の代わりにその手に頭を押し付ける。……今年のクリスマスプレゼントは、なにをリクエストしようかな。
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