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鶯音を入る
第二十七夜
しおりを挟む「開け直す予定……は…………」
『ない』と答えるのを阻むように、彼女が大袈裟に息を吸った。
「アタシと同じの、買わない? お揃いで着けるの」
耳に手を添えた彼女は、一流アクセサリー会社のブランドアンバサダーと見紛う程だった。
「お揃い?」
「そ。嫌なら、無理強いしないけど」
「紅さんとのお揃いは欲しいんですけど、私達、趣味合わなくないですか?」
彼女の持っているピアスを思い浮かべていくと、そこにはある共通点が浮かび上がる。
しかし、その共通点というのが問題だった。
「確かに。でも、合わせようと思えば、出来なくもない位でしょ。正反対、まではいかない」
「そうなんですけど、私が言いたいのは……紅さんの好きなのって、大きくて重いピアスじゃないですか。穴開け直すのも、お揃いにするのも問題ないんですけど、ちょっとそこがネックになってくるというか……。イヤーなのにネックだし、全然嫌じゃないのにイヤーってのも面白いですよね!」
訳のわからない事を言い切って一瞥すると、彼女はポカンとして呆気に取られているようだった。
「耳たぶ、千切れそうで怖い?」
「その通りです……」
「アタシに合わせるつもりだったの? 二人で決めよ?」
「でも…………」
私だって、お洒落には一家言あるが、彼女だってとてもお洒落な人だし、拘りがあるのなら、出来るだけそれを曲げさせたくない。
「確かに、アタシは小さいピアスは、そんなに着けない。……けど、もし翠とお揃いのピアスを小さいのにしたら、鏡見てない時も、一緒にいない時も、『翠とお揃い』って思えて、幸せだと思う」
躊躇って、拳を握り締めていると、魔女のような爪を持った手が重ねられた。
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