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鶯音を入る
第二十夜
しおりを挟む「……翠には、わかっちゃうんだ」
その呟きは、真相が暴かれて観念したという感じではなく、呪縛からの解放と言った方が良さそうだった。
「紅さんは、ハッキリ言うのもオブラートに包むのも、両方上手いですね。私も見習わないといけないなあ……」
「ううん。必要ない。……アタシ、翠が良い所も悪い所もハッキリ言ってくれるコだから、ここまで話せてるし、好きになった」
彼女の笑顔が真夏の太陽あるいは日差しなら、彼女の言葉はさながら紫外線のようだ。
好きな人を身体に悪影響を及ぼすものに例えるなんてどうかしているが、あらゆるガードを突き抜けて真っ直ぐ届く言葉に色んな意味でドギマギさせられっぱなしなのだから、そう言いたくもなる。
「過去形ですか?」
「そんな訳ない。今も好き。多分、これからも好き。だから、変わりたいなら応援する。けど、アタシの前でだけは、何でもズバズバ言う翠でいて」
私の女神様は、またしても火傷してしまいそうな愛を直送してくる。
こんなに好きにさせて、貴女は私をどうしたいんだろう。
「何それ。プロポーズみたいじゃないですか。私達、このままここにいても結婚なんて出来ないし、どこか他の……同性婚が出来る場所に行ったって、子どもは作れないのに」
そこまで言って、ハッと口を噤んだ。
婚姻と生殖を無理矢理結び付ける思想に辟易していた筈が、私もやはりそのドブの住人だったらしい。
そんな事より今は、デリカシーに欠けすぎている発言のせいで彼女の傷を抉ってしまっていないかが気掛かりだ。
恐る恐るうっすら目を開けて様子を窺うと――――。
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