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竜舌蘭
第二十四夜
しおりを挟む自宅で作る濁った氷と並べれば、その差は誰の目にも明らかだろう。
恐らくは、彼女と私の並びも同じようなものだ。
見劣りするのが怖くないとは言わないが、問題は『絶世の美女である紅さんの隣に並び続けるなどといった事を、私自身がいつまで許容出来るか』だ。
平凡な容姿を持って生まれた人間が血の滲むような努力を積んだところで、素地の良さには敵わない。
ダイエットもメイク研究も、マイナスをゼロに引き上げる事が出来たらしめたものだ。
自分で言うのもどうかとは思うが、私はその最大限の努力をすでにしていた。
――――これ以上、どうしろと言うのだろう。
「なら、ベッドの上で言おっかな」
そんな葛藤など知る由もなく、彼女は普段の調子で軽口を叩いた。
「ちょ、いきなりぶっ込みますね!?」
彼女の家に泊まる時は同じベッドで寝かせてもらっているが、私達の関係性が変わろうとしている今、その意味合いもまた大きく変わってくるはずだ。
「もう慣れてくれた。……でしょ?」
ピアスを揺らす彼女の顔が遠くなっていく。
適正な筈の距離が、やけに遠く感じた。
「慣れたっちゃ慣れましたけど! 『そういうのも二人っきりの時にお願いしたいなあ』って事ですよ!」
「そ? 善処しとく」
「頼みますよ?」
「ふふ。……楽しいね」
「そうですね」
これまでの私達と同じように、二人だけの微笑みを交わし。
カウンターの下で重ねた手を今度はこちらから握れば、彼女の高い頬が盛り上がった。
「よろしく、翠」
それが告白の返事だという事は疑う余地もない。
「はい、よろしくお願いします。紅さん」
声にも表情にも出ていないかもしれないが、この瞬間の私は、落ち着いた雰囲気のバーで最も浮かれた人間だろう。
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