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短夜
第七夜
しおりを挟む「別にいますぐ決めなくてもいい。どうするかはアタシと過ごしてみた感じで決めてくれたら。家着くまでにも喋れるし、着いてからもすぐに襲うとかないし」
その彼女だが、会話のテンポは元通り。すでに余裕を取り戻している。
私と同じような凡骨だったら、ここで安っぽい上目遣いやボディタッチなどを使ってきていたはずだが、彼女はそうはしなかった。
只者ではないという直感はやはり正しかったようだ。
だが、それは頭一つ抜けた美貌のみに特化した下らない賞賛などではない。
「…………まあ、女性に無体を働かれたところで妊娠はしませんし。どっちかというと殺される心配をするべきでしょうね。でも、こんな目撃者の多い場所で殺人鬼がターゲットを探す筈もない。なので、その線も限りなく薄いです」
遠くから眺めていた時は、『社会階層が違う人だ』と感じていた。
それは当然良い意味とは言い難く、パトロンが沢山ついていそうな……人の金で遊び暮らしていそうなイメージだった。
しかし、実際に会話をしてみて、その印象は『もっと根本的な意味で違う世界の住人』というものに変化しつつある。
金ではないにしろ、彼女が私の持つ何かを狙っているのは確かだ。
身も心も汚れきった女の私は、怜悧な瞳に浮かんだものが欲望だと知っているから。
「だから、貴女は本当に独りが嫌な人か、それを装っただけの色狂いか……って所でしょうか。さしあたっての危険はなさそうです」
前々から目を付けられていた可能性もなくはない。危うく出かけた言葉を、唇を窄めてしまい込む。
自意識過剰な女など、彼女と枕を交わすに値しない。
「じゃあ、OKって事でいい?」
存外、短気な性分なのか、彼女は白か黒かの返事を迫る。
それだけでもう少し満たされた気がしたが、メインディッシュはこれからだ。
私が彼女に感じていた違和感がどれだけ正しいかを確かめるまたとない機会が向こうから転がり込んできたのだから。
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