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サイワイ
サイワイ【2】
しおりを挟む「なるほど。本来なら、彼女はもっと長生きだったと」
「はい。それに、死そのものは避けられないとしても、あんな惨い死に方はあんまりです」
死神として働く者に一台ずつ配られる端末には、担当地域内で近日中に迎えに行くべき者の名簿が送信されてくる。
そこに記された情報は対象の名前や顔、死因に死亡時刻など多岐にわたる。俺はそれを余裕を持ってかなり先の分まで読み込み、スケジュールを組んでいた。
膨大な量のデータを逐一確認するのは骨が折れたが、大切な仕事の一環だ。欠かすわけにもいかない。
その中に彼女を見つけたときは背筋が一気に寒くなった。
「そうか。オレとしては異論はないよ。稟議書だってこうしてちゃんとここまで通ってきてる。冥界は結構アバウトだから、そんなきちんとした手順を踏まなくても、直接話してくれるだけでよかったんだけど、ハルトの気持ちは伝わったよ。……ごめんね、意地の悪い真似をして」
彼の手によって書類がひらりと掲げられる。そこには目立つ印がくっきりと押されていた。
「いえ」
「だけど、知っての通り、死因を捻じ曲げるのは重罪だ。死期を先延ばししたり、訪れる死そのものを退けたりすることが出来ない以上、最も高等な死に対する反抗だからね。承認するのは構わないけど、覚悟は出来てるかな?」
基本的に絶やすことのない穏やかな微笑を不意に消し、こちらへ問う姿は威厳に満ちていた。
「はい。どんな罰も受ける所存です」
「その言葉に嘘偽りはなさそうだね。……さて、どうしたものか。誰も不利益を被ることはないとはいえ、罪は罪だ。形式上、なにかしらの罰を与える必要があるんだけど……困ったな。いい案が浮かばない。すまないが、少し時間をいただいても?」
「問題ありません。むしろ、俺の我儘で仕事を増やしてしまって、申し訳ございません」
「いや、いいんだ。ありがとう。キミの処遇は追って連絡するよ」
「かしこまりました。では、失礼いたします」
そうして執務室をあとにした俺は裁きが下るのを待った。
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