誰かが尾鰭をつけた話

片喰 一歌

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第3章 昼下がりの川辺

第55話 問答(中)

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「『意味をわかったうえで言っている』と判断してもいいのかな?」

 紫水は唇ではなく、質問を重ねました。

「問題ありません。……わたし、紫水さんが好きですから。最初のうちは、恩返しができればそれでいいと思ってました。でも、だんだんそれだけじゃ足りなくなってきて……。いまは『になりたい』って、はっきり思ってます」

「『そういう関係』、か…………」

「だめですか?」

 千鶴は、考え込む紫水を下から覗き込みました。

 すぐそばにいるせいか、呼吸をひとつするごとに、いつも以上に強い彼の香りが彼女の鼻腔を満たしていきます。

「想いを寄せられて、悪い気はしないさ。それが愛しいひとからであるのなら、なおのこと。……だけど、そんなことを言ってしまって、本当によかったのかい? 私が悪い男だったら、きちんとした手順も踏まないまま、肉体だけ貪られてしまうかもしれないのに…………」

 紫水は、小さな唇に当てていた指を、見せつけるように軽く吸いました。

「……でも、紫水さんは、そんなことしないでしょう?」

「なにを根拠に?」

「悪い人だったら、きっとそんなふうに警告してきてくれません。わたしがのぼせ上がってるのをいいことに『ぱくっ』、ですよ」

「なるほどね。言いたいことはわかったよ。……だけど、自分の身体を大事にしないのは……いただけないなあ」

んだとしても、いけませんか?」

 千鶴は、硬い太腿に小さな手を置きました。

「…………。すまない。それはなにもいけないことではないし、『大事にしているからこそ、もらってほしい』なんていう思いもあるのかもしれないね。男の私には、よくわからないけれど……。美しく、そして好ましい言い回しだと、個人的には思っているよ」

「そこまでわかってるんだったら、もらってくれてもいいじゃないですか……。胸にもお尻にも、もっとお肉ついてる女性ヒトじゃないと、抱く気になれませんか?」

「ああ、そうだとも。千鶴はもっとお肉をつけるべきだ! …………なんて、私が言うとでも? 確かに『どういう身体つきをしているか』を重視する人もいるだろう。そんなことよりも『誰の身体なのか』のほうが重要だよ。少なくとも、私にとってはね」

 紫水はそう言い、熱視線で千鶴の全身をひと舐めしました。

「……君の言っていることは、ある意味では正しい。千鶴の精神は、そこらの大人たちなんかよりもしっかり成熟していると……出会ったときから思っているさ。でも、その身体はどうだい? まだ大人になりきってはいないだろう?」 
 
「だけど、わたしが知ってる人だと……!」

 どんなに言葉を尽くされても腑に落ちない千鶴は、紫水に食ってかかります。

「そうだね。中には『そのくらいいれば問題ない』と、みだりに手を出す男もいる。でも、医者の私からしてみれば、君はをするにはまだ早い」

「でも…………っ!」
 
「『成長が遅れている』からじゃない。君の身体はもう、他の……どこぞの家に嫁いで、をしている子たちと同じくらいの年齢には、とうに達している」

 紫水は努めて冷静に、前のめりな彼女を制しましたが、瞳の奥には確かに熱情の炎が燻っていました。
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