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We hope your Halloween is a ”Treat”!
We hope your Halloween is a ”Treat”!【5】
しおりを挟む「でも、考えてみたら来年の夏って一年くらい先か。この景色も目に焼き付けとかないとね。心のシャッター、エンジン全開で行っとくし!」
もし言い訳が許されるなら、思い出してほしい。
上京して何年も経つのに生活圏内に気軽に遊びに誘える友達が一人もいないまま。そんな私のぼっちしんじつを。
ゆえに、多少の浮かれには目を瞑ってはくれまいか。
だからキャラ変が雑かつ急。アクセルベタ踏みでハンドル切ってるんじゃないよ。
「シャッターなのに、エンジンですか?」
くすくす笑って指摘してきたのはパック。
ボケ担当のくせにキレッキレのツッコミありがとう。嫌味なくらい有能だな、ほんと。
「……うん、確かに変なこと言ってたわ。けど、そのへんはニュアンスで察して」
恥をかいてもごもごしながら、もう一度、窓の外に広がるパノラマに目を向ける。
大きな駅舎にファッションビル、お馴染みの観光名所のタワー。
「すごいね。観光名所っぽいものは大体見え……」
って事は、あっちの方角には新しいほうのタワーが…………と思いきや、ない。
「…………カリン? どうしたの?」
私の言葉が不自然にフェードアウトしたことに気付いたチルが寄ってきた。
心配してくれているのは伝わっているし、なにか返事をしたいけど、ちょっといまはそれどころではない。
「あ……いや、えっと……」
これは一体どういうことなのか。
見間違い、もしくは現在地の問題か。
ろくに道順も観ないでついてきたせいで、方向感覚が狂ってしまっている可能性もある。
けど、近くにある特徴的すぎるオブジェが見えているのなら、タワーが見えないという事はないはずだ。
なぜなら、そのオブジェはタワーの目と鼻の先と言っていいほど近接しているから、タワーの一部さえ見えない現在の状況は異常と言う他なかった。
あれだけ目立つランドマークが一夜にして消えてしまうなんて事は、普通に考えてありえない……と思うんだけど。
もう一度脳内の位置関係と照らし合わせてみたところ、見落としでもなければ現在地の問題でもなさそうだ。
本当に悪い夢でも見ている途中なんじゃないかと怖くなって身震いしたけど、幸運なことに、ここには頼もしい人たちもいる。
この異常事態が私一人に起きていることなのかどうかは、いまから確かめてみればいい。
「ところでさ……この景色、なんか足りない気がするのって、私だけ?」
まだ少し震えている手を握り締めて、何度もシミュレーションした喋り出しのとおりに切り出すと、いやに明るい声がパーティー会場に反響した。
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