“Boo”t!full Nightmare

片喰 一歌

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We hope your Halloween is a ”Treat”!

We hope your Halloween is a ”Treat”!【1】

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「え?」

「ここにふたつの紙コップがあるな?」

 『なにが始まったの?』と聞く前に、スーがテーブルの向こうから私に問い掛けてきた。

「そうだね?」

 スーの言うとおり、手元には紙コップがふたつある。

 向かって右側がオレンジ、左側が茶色。なんとも秋らしい色合いだ。

「そのまま瞬きせずに見ていてくれ。カリンから見て右にゴーストのアイシングクッキーを、左にはコウモリのアイシングクッキーを入れて伏せる」

 スーは近くにあった大皿に山積みになっているクッキーの中から二枚を手に取った。
 
 色も形も全然違う二枚を選んでくれているおかげで、少し離れた場所から見ていてもわかりやすい。

「うん」

 スーの手に視線が持っていかれないようにふたつのコップを凝視しながら、鬼の形相をしていませんようにとひそかに祈った。

「そのままテーブルを二回叩いて……」
 
 テーブルを指でトントン叩く音がしたけど、我慢我慢。

「コップを開けると……」

「クッキー入れ替わってるじゃん! すご!!」

 感嘆の声を上げると、スーは口元を手で覆った。

「なにをするかなんて見切ってただろうし、そこまで喜んでくれるとは思わなかった。大した腕前じゃないが、やった甲斐はあったみたいだな。よかった」

 A CHI CHI A CHI 照れてるんだろうか~♪

 まったく愛い奴め。いやキャラ変唐突すぎ。

 『YUBI TO YUBI 掛けてるんだろうな~♪』って気付いてくれた人ありがとう。

「こういうのって何回見ても楽しいし、十分すごいって!」

「そうだろうか。誰にでもすぐ習得できるレベルのものだと思うぞ。教えるから、カリンもやってみないか?」

「やってみたい! 教えて教えて」

「ああ。こういうのは、タネがわかるともっと楽しくなるからな」

 誇らしげに言ったスーの笑顔が眩しい。
 
「でも、できる人の言う『誰にでもできる』って案外そうでもないというか……あ、スーのこと疑ってるとかじゃなくて、私の手先がめっちゃ不器用だって話ね」

「そうか? でも、やってみないことにはわからないぞ。僕はカリンが本当に不器用かどうかも知らないしな。もし謙遜じゃないにしても、いま見せた以外にも簡単なものはある。うまくできなければ、他のを教えよう。……それでどうだろうか」

「じゃあ、そういう感じで!」

 あ……ありがてえ……! はちゃめちゃに気が利いてやがる…………!
 
 あまりの手厚さに拝んでいたら、ヴィニーとチルに笑われた。
  
「……でしたね、スー」

 黙って私達の様子を眺めていたパックがスーに話しかける。

 声を潜めていたせいか名前以外聞き取れなかった。

「詫びだからな」 

「ふたりともなんか言った?」

 なんて、スーの言葉は聞こえてたけど。
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