“Boo”t!full Nightmare

片喰 一歌

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Happyyy Halloweeeen!

Happyyy Halloweeeen!【23】

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「気になってた事があるんだけど、聞いていい? そのへんがわかったら、良い感じに話の続きも浮かぶかもなんだけど」

「私たちに範囲でしたら答えますよ」

 パックが『わかる範囲』とは言わないのが気になるけど、せっかくそう言ってもらえたからには聞きたい事を率直に。
 
「年一の大規模なお祭りってどんなやつ? 魔物に変装してた頃の名残ってのは覚えてるけど、それじゃただの仮装パーティーって事にならないかと思って。街の人が楽しみにしてた理由ってそれだけ?」

 現代のハロウィンと同じようなもんだからいちいち説明しなかったのかもとは考えたけど、どっちにしても聞かない事には不確かなままだからね。

 『着たい服があるなら着たいときに着りゃいいじゃん』。

 『なんでもない日だって好きに着飾ったらいいのに』。

 そんな風に考えてしまう私には、街の人たちが年一のそのお祭りを楽しみにしていた理由がどうしても理解できなかった。

 『そのお祭りはそこまで楽しみにするほどのものなのか?』というのが一番の疑問だったというわけだ。

 しかし、スーは浮かない顔をしている。

 その理由は尋ねるまでもなく明かされた。
 
「……催しの内容としてもが、人々にとっては着飾る機会などそうそうなかっただろうからな。仮装というイベントの程度としてもという表現は適切ではない気がするんだ。カリンの感性を悪く言いたいわけではない。現代人にとって、非日常的な装いをする事は身近な娯楽だろうしな。僕たちがいい例だ」

 スーは私が傷付かないように気遣いつつ、でもはっきりと指摘してくれた。

 『当時の』とか言われると本当にあった事みたいに思えてくるけど、たぶん没入感を維持するためだよね。

 フィクションの世界とはいえ、時代設定は現実でハロウィンが生まれた頃と同時期くらいみたいだし、仕事の大半はきっとブルーカラーなんだろう。

 普段は汚れてもいい動きやすい服に身を包んで一日中働くその人達が仮に農家さんだとすると、たぶん休みなんてあってないみたいなもので……誰にも憚らずおめかしできる機会が、そのお祭りの日くらいしかなかったとしたら?

「……いや、ごめん。スーの言う通りだと思う。いい大人のくせに、その人たちの事情とかまるっきり無視した事言ってた。私だって新しい服おろすときは嬉しいもん。千円切ってるセール品でもワクワクするし、普段着れないような綺麗な服に着替えられる貴重な機会だったら、もっとワクワクするもんね……」

 気分がどんどん落ち込んでいく。

 なんでそんな事も想像できなかったのか。

 いまの発言は普段の言動そのものだ。私はいつも失言ばかりだ。私はいつも様々なトピックに口出しするが、ひとつだって正しかった事はない。誰も私を愛さない。

 ……なんて思える程度には元気なのがまた自分でも腹立たしい。

「ええ。ですが、そんなにお気を落とさずに。時代や暮らしぶりの違う人々に対しても、現代の価値観を持ち込まない……というのは、誰にとっても難しい事です」

「そうかな」 
 
「うんうん、そうだよぉ」
 
「…………カリン。詫びにもならないかもしれないが、少しこちらに注目してほしい」

 スーに従うと、そこには先ほどまでの浮かない顔ではなく、悪魔らしい笑みを浮かべた彼がいた。
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