“Boo”t!full Nightmare

片喰 一歌

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It's time 4 a coffin break!

It's time 4 a coffin break!【15】

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「……あ、そうだ。カリンちゃんの家ってここから近い?」

 そんな馬鹿な事を考えていたら、マカロニチーズの作り手ヴィニーが思い出したように訊いてきた。これまた唐突な話題転換だけど、少し考えて口を開く。
 
「遠くはないけど、近いとも言えない微妙な距離? 内回りの電車乗って何個か行ったとこが最寄りだから」

 隠すつもりがあったんじゃなくて、単純に何駅先かド忘れしちゃった。いつもなんとなくで乗り降りしてるから……。帰るとき数えてみる事にしよう。覚えてればだけど。

「そうでしたか。では、始発が運行し出す頃に駅までお送りすればいいでしょうか?」

「送ってくれるのめっちゃ助かる! 実は道順覚えてなくてさー」

 と白状すると、チルが真っ先に同調してくれた。
 
「うふふ。迷っちゃうほど複雑じゃないけど、一回通っただけじゃ覚えられないよねぇ」

「そうなんだよ。一回通っただけで道順記憶出来る人、ほんと尊敬する……」

「あ~、確かにね。そういえば、ここに越してきたとき、どこにどの部屋があるかなかなか覚えられなくて苦労したんだよ。ね、みんな!」

 ヴィニーは懐かしむように言って他の二人に話を振ったけど、二人は首を傾げている。

「それはヴィニーだけでは? 私たちはすぐに覚えましたよ。そうでしたよね、チル?」

「うふふ。ヴィニーよりは早かった、かも?」

「みんなひどいな~。いいけどね、俺にはカリンちゃんっていう仲間がいるし」

「大丈夫。私よりヴィニーのほうがずっとマシだって。知らんけど」  
  
 そのあとも他愛のない話が続いた。部活の合宿とか修学旅行とか思い出せて楽しかったけど、私にはさっきからちょっと気になってる事があったりする。

「……スー、遅くない?」

 出ていってもう結構経つのに、スーはまだ戻ってきていなかった。プリンの様子を見てくるだけにしては時間をかけすぎだ。

 約束を破るタイプにはどうしたって見えないのに、なにかトラブルがあったのかな。

「うふふ。食べすぎてお腹壊しちゃったのかも?」 

 そこは笑うところではなくないか、チルさんや。

 わりかし日常的な不調っていったって、トイレなんて何度も行きたいもんでも籠りたいもんでもないし、お腹痛いの普通にしんどくない? てかシンプルに嫌。

 腹痛のとき無性に謝罪したくなるのってなんでなんだろうね。痛みが引くはずもないのに。

 でも、チルは全然心配してなさそう。

 ……って事は、スーは普段から一旦離席するとしばらく戻ってこないタイプってだけか? ええい、わからん。

「だとしたらかわいそうだね」

 私が口を開いたのとほぼ同時に、扉を開ける音が聞こえた。
 
「どうした? なにかあったのか」

 もちろんそこにいたのはスーだ。特に顔色が悪い風には見えない。よかったよかった。

「ちょうど貴方の話をしていたんです。テキパキしたスーにしては時間がかかっているのではと心配してくれていたんですよ」
 
「そうだったのか。今日はカリンもいるし、せっかくだからと思って、出来上がったパンプキンプリンをパフェにしていたんだが、生クリームを泡立てるのに思いの外時間を食ってしまって……すまなかったな」

 そう言って見せてくれたパフェグラスのてっぺんには、チルとスーの作ったパンプキンプリンが乗っていた。そんな最高の仕事をしてくれてたとは。
 
「冷凍のやつ切らしちゃってたか~。なのに、わざわざありがとね!」

「礼を言われるほどの事じゃない。カリンもいるからとは言ったが、僕自身がパフェを食べたくなってしまっただけだ。プリンだけ食べたければ、冷蔵庫から追加で持ってくるが……」

「パフェめっちゃ好きだからこっちがいい! ありがと、スー!」

 私は誰よりも先に返答した。それを見て笑っていたみんなもパフェを受け取る。みんなだってパフェのがいいんじゃん!

 パンプキンプリンが好きです。でも、パフェのほうがもっと好きです。だって、スーの作ってきてくれたパフェにはパンプキンプリンが乗っかってるからね!
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