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It's time 4 a coffin break!
It's time 4 a coffin break!【12】
しおりを挟む「……ん? でも、なんで急に『空き家を再利用しよう!』みたいな事になったの?」
「僕たちは四人でルームシェアをする計画を立てていたんだが、めぼしい物件はすでに埋まっていてな」
とスーはため息を吐く。
「ええ。そもそも、なぜそのような話が持ち上がったかといいますと、私の当時の自宅の位置は少々乗り継ぎが厄介で……三人に引っ越しの相談をしているうちに『四人で住まないか』という話になったんです」
パックの説明で断片的だった話が少しだけ繋がってきたけど、引っ越し相談がルームシェア計画に発展する事ってそんなにないと思う。
「みんなってめっちゃ仲良いよね」
「うふふ、照れちゃうなぁ」
チルは口の前で両手を合わせた。
「もちろん私たちが仲良しグループである事を否定はしませんが、ルームシェアまでする運びになったのには別の理由もあるんです」
「別の理由?」
「そうだ。カリンも気付いているかもしれないが、僕たちは結構な夜型でな……パック以外のメンバーは店からも近い場所に住んでいたんだが、寝坊して遅刻寸前になってしまう事も多かった。しかし、『一緒に住めば、毎朝誰か一人くらいは余裕を持って目覚められて、他の者を起こす事が出来るんじゃないか』というアイディアがヴィニーから出て、全員が俄然乗り気になったというわけだ」
「なるほど」
朝に弱いタイプの夜型なのに、朝型の生活してて偉いな……なんて失礼な事を考えているのがバレないように神妙な顔で頷いた。
「でも、お店とか最寄りからの距離とか家の広さとか……なかなかここだと思える物件がなくてさ」
当時を回顧しているヴィニーの口から多くの人の必須条件が挙がらないのはちょっと不思議な気もしたけど、当たり前すぎて言わなかっただけかもしれないし、気にする事でもないか。
「そこまで贅沢な条件でもなかったはずなんだがな、とにかく物件探しは思いの外難航した」
「あのときは大変でしたね」
「うふふ、もっと早く決まると思ってたねぇ? だけど、休憩時間にみんなで話し合ってたら、他のキャストの人に『昔は社員寮があって、利用者のいなくなったいまでも屋敷はそのまま残ってるらしい』って聞いたんだ」
「そのうえ、所有者も変わっていないとお聞きして」
コンカフェ自体はかなり新しいサービスのはずだから、同じ経営母体がやってた(あるいは現在もやってる?)他の事業の社員寮だったんだろう。
それが前に社員寮として使用されていた時期っていうのがどのくらい昔の事なのかはわからないけど、壁紙や床の状態をじっくり観察すると、結構年季が入ってるのがわかる。っていっても、目を凝らしてやっと『もしかして意外と築年数いってる?』って思う程度だけど。
「所有者さんにダメ元で頼み込んでみたら……『今は使われていないし、管理も最低限で行き届いているとは言えないけど、キミたちが住みたいなら貸してあげるよ。ただ、オレは基本的に手が空いていないし、そもそもそこまで足を延ばせない。だから、掃除とかその他の必要な事は自分たちでやってね。費用は出すから領収書は必ず切っておいて』って許可もらえて。そこから少しずつ綺麗にしていったんだよね~」
『手が空いていないし、足を延ばせない』って言葉遊びになってるじゃん。いちいち言い回しが小洒落てて好感度の上昇具合が留まる所を知らない! これが噂に聞く『恋はいつでもハリケーン』!?
「その口調……貸してくれたのは、みんなの衣装張り切って用意してたっていう店長?」
興奮のあまり、つい大声になる。
「ああ、その通りだ」
会った事もない店長のファンになっちゃいそうなんだけど、最推しはヴィニーだから! 担降り秒読みのオタクみたいな前振りはやめなさい。
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