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It's time 4 a coffin break!
It's time 4 a coffin break!【10】
しおりを挟む「ね。だからほんとはそこまで警戒しなくていいんだけど……いまじゃ、本名で呼ばれてもすぐに反応出来るか怪しくなっちゃったね」
「ほんとだねぇ」
朗らかに笑うヴィニーとチルを見て思う。私は必要以上に悲観的に捉えてすぎてたのかもしれない。
「えーと……つまり『うっかり本名で呼ばないように指導されて始めた習慣だったけど、あだ名のほうが馴染んじゃったしちょうどいいや!』みたいなノリ?」
「うふふ。そうそう」
「もう随分長い事、スー以外の名前で呼ばれていないな」
「ついでに言うと、名乗る機会もないよね」
「その必要がありませんからね」
不便でも不本意でもなさそうなみんなの様子を見て一旦は安心したけど、現在の形に落ち着いた経緯を聞いてくと、子持ちの専業主婦が『○○ちゃん/くんのママ』(深刻な場合だと夫からも『お母さん』って呼ばれたりもするんだっけ……?)としか呼ばれなくなって、アイデンティティをすり減らしていく……って話がふと過った。
たまにそれ以外の呼ばれ方をしたと思っても上の名前……生まれたときの苗字じゃなくて夫のほうの苗字ってケースが大半だろうし、そんなの削れるなってほうが無理だよね。妻でも母でもないその人自身の気持ちに行き場がないもん。
いかんいかん、また思考回路が湿っぽい感じになってきた。いっちょ『フォニイ』の替え歌でも思い出すか。
簡単なことも解らないわ♪ 和菓子ってパンだっけ~♪
うん。何度見ても素晴らしくシリアスクラッシャーな字面。天才の所業。死語かもだけどシリアルでもある。バザールでござーる。
「…………じゃあさ。みんなはそのあだ名、気に入ってる?」
様子を見る限り不要な心配かとは思うけど、聞かない事には本心はわからないし。
「うん、好き。『一緒に過ごす』って意味だもんねぇ」
にこにこしたチルが一番に答えてくれた。彼はきっと、その名の通り誰かと一緒にいるのが好きなんだろう。
何年か前の流行語だったっけ、『チルい』。冷食信者としては『冷やす』ほうの意味が先に浮かぶけど。ところで冷食信者ってなにさ。恋愛勇者の親類?
「ああ、僕も好きだな。簡素でいいと思っている」
と頷いたスー。その理由がまたシンプル。凛とした響きが本当によく似合ってる。
「俺も好きだよ! ちょっとミニーちゃんに似てて♪」
挙手までした無邪気なヴィニーには、さっき『ヴィニーとスー』って言ったとき『ウィニー・ザ・プー』を思い出したのは内緒にしておこう。
そういや競走馬にも同じ名前の子がいなかった?
愛称っぽいけど正式名称なのかな。アンジェリーナって名前の人がアンジーって呼ばれるみたいに。外国の人の名前難しい。
「私もなかなか気に入っています。韓国の方とお話しすると、大抵『パク』さんだと思われてしまう事も含めて」
最後にパックが上品に笑った。いやお兄さん、名前の一部奪われてますがな。
「何回説明しても伝わらないんだよね~」
「ええ。ですので、恒例行事として楽しんでしまう事にしたんです」
韓国の人って表音文字に慣れ親しんでるからか英語の発音良いし、促音の有無が判別しにくいのかもしんないね。絶対音感の人が意識しなくてもあらゆる音階を聞き分けちゃうみたいに。
パックが英語名かはさておき、ネタとしても使えて興味深いエピソード。
「そっか。みんな気に入ってるんだったらよかったよ!」
全員分の話を聞き終わる頃には、私はすっかり本物の笑顔を浮かべていた。
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