“Boo”t!full Nightmare

片喰 一歌

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It's time 4 a coffin break!

It's time 4 a coffin break!【5】

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「見るからに落ち込んでいる姿も見るに堪えませんけど、無理に笑顔を作られてしまうのも、それはそれで寂しい事ですけどね」

「あ~、わかるかも。心配する事も許してくれてない感あるもんね」

 お菓子作りを一人でやるか他の人とやるかってのも完全に好みの領域だろうけど、私は今回めちゃくちゃ楽しかったよ。けど、次に一人のときにもやりたいかって言われたら別にそんな事ないし、しないと思う。
 
 こんな風に一人じゃ絶対にやろうとは思わない事に挑戦出来るのも、他人となにかをするうえでの楽しさのひとつだ。

「……みんなにはわかっちゃうんだね、笑顔の種類まで」

 でも、最初から楽しくなれる事が約束されてなきゃいけないってわけでもなくて、全部自分次第な気がする。

 だから、きっともうすぐ本物になってくれる作り笑顔も引っ込めはしない。私はみんなに心配をかけないためじゃなく、自分のために笑ってる。

 すでに完成された楽しい事に飛び込むのもいいけど、自分から見つけたり作ったりしていってもいいものなんじゃないかな、楽しさって。もっと自由にさ。

 楽しい事と楽しくない事があるんじゃなくて、なにを楽しいと思えるかの問題っていうか。どんな事の中にも楽しさを見つけるって意気込みが大事なのかも。

「うふふ。ただの勘だよ?」

 どんなときも文句ばっかり垂れてる自分がちょっと恥ずかしくなってきた。『長所と短所は表裏一体』って言うし、人や物の短所が目につくなら、それと同じ数だけ長所を発見してるはずなのに。

 一方的に見下して、あげつらっては嘲笑って……。同族じゃなくたって人間性の最低度合いはどっこいどっこいだ。私が大っ嫌いな浮かれDQNにしろ、ダブスタクソ上司にしろ、モンスターカスタマーにしろ。

 いままでそうやって生きてきた事実は覆らないし消せもしない。でも、意識を変える事だったらいまこの瞬間から出来る。
 
 不満げな口元を少しだけ上向かせた効果かどうかはまだわからないけど、『やりたくない事』で埋め尽くされていた脳内に、突如として『したい事』が浮かび上がってきた。最優先の緊急タスク。ソシャゲ風に表現するとしたら、期間限定ミッション。

「でも、すぐに元気百倍ってのは難しいけど、塞ぎ込んでたら余計に気が滅入るしさ。ちょっと無理にでも笑ってたほうが気持ちが前向きになるかと思ってそうしてるだけだから、心配しなくて平気だよ」

 それはとても些細な願い。願うだけでは叶わない、万人が抱く気持ち。

 四人は私に『楽しんでほしい』と言い、それぞれが全力で私をもてなしてくれている。その恩に少しでも報いたいと思った。

 『恩返しがしたい』なんてイイ性格してる私らしくないだろうけど、ボランティアで刺激された良心は、みんなの振る舞いを見てますます活性化したみたいで。

 私にこんな大事な事を気付かせてくれたみんなにだって、いまこのときを思いっきり楽しんでほしい。

 私だけが楽しむんじゃなくて、みんなにも楽しいと思ってほしい。私っていう飛び入り参加者イレギュラーと過ごす時間を。

 ダウナーな厭世家らしからぬ前向きな欲求はきっと、大っ嫌いな自分から脱皮するための第一歩になるはずだ。だから、私は私のために全力でみんなをもてなそう。
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