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Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【11】
しおりを挟む「こんなに褒められると思ってなくて正直びっくりしてるけど、みんなありがとね」
元気は出たけど違う意味で泣きそう。歳食うと涙腺が……ってそこまで老いてないわ。こちとらピチピチの二十代じゃ!
ピチピチは死語? そうだね、言われてみればリアルでは使った事ない。でも、インターネット老人会に所属(?)してると稀によくある事なんだよ。実生活では使用しない言葉に昔から慣れ親しんじゃって、新旧の判断がつかなくなるケースってのも。
また違う意味で泣きそう。涙腺がアカンすぎる。いっそのこと我慢してないで泣いちゃったほうがスッキリするかもしれない。逆に。
「……うふふ。カリン、お菓子は持ってるの?」
なんて考えていたちょうどそのとき、出かけた涙はチルの質問によって全部引っ込んだ。
「まさかハロウィンにお菓子なしで出歩くような不用心な人ではありませんよね? 私の相方ともあろう御方が」
いまの段階でリマインドしてくれたおかげで命拾いしたかもしれない。チルさんナイス~! そしてパックは笑顔で圧をかけながら相方設定をここぞとばかりに擦るな。
他人の家に招かれた際に手土産が必要になるのは当然として、それとは別にハロウィンにはお菓子が必要だということを失念していた。さもなくば、トリック一択じゃないか。
「あー……どうだったかなぁ。小腹がすいたとき用のチョコが残ってればいいんだけど、全員分はな……あ!」
鞄の中身を必死に思い出そうとしたところでまたひとつ肝心な事に気付く。
出発前、駅のロッカーに寄ってもいいか聞いたはいいけど、『手ぶらで大丈夫だよぉ』ってチルが言うもんだから、ちょっと面倒になってきてた事もあってその通りにしたんだった。
「カリンちゃん? どうかした?」
つまり、貴重品全部ロッカーに預けたまま。まんまとやられたぜ……。恐るべし、悪魔の甘言。いや、チルは『お土産はいらないよ』的な意味で言ってくれたんだと思うし、完全に私が悪い。
「いや、大丈夫。なんでもないよ」
しかし参ったな。手土産とお菓子どっちも持ってないって事になるじゃん。
チョコが貴重品といえるかどうかは審議が必要だし、ここに鞄があったとしても十分な量のお菓子はなかったわけだし、どっちみち詰んでたけど。ひとつでも持ってるのとひとつもないのとじゃ雲泥の差なんだよ。
途中でコンビニに駆け込んでもいいかな。通った事ない道だけど、このへん繁華街だもん。道中に一件くらいはあるよね?
できればローソンがいいな。まだ食べてない期間限定のからあげクン食べたい。五個ならみんなでシェアできるし。あー、お腹すいた。
「大丈夫ですよ。確認しただけで、非常食を根こそぎ巻き上げようなんて大人げない事は考えてませんから」
「でもさ、『せっかく招待してもらったにもかかわらず、手土産のひとつもないのはどうなのか』みたいな話になってこない? 気が気じゃないんだわ、さっきから」
確かに許可も得ずに呼び捨てしちゃった前科があるし、非常識な奴だと思われてても弁解のしようがないけど、マナーとか常識とか以前に一方的になにかしてもらうだけってもぞもぞするから、そういう意味でもなにかしら用意したいんだけど。同じ感覚を持ってる人はこの中にはおらんのか?
「前もって招待してなかった僕たちが悪いんだ。気にしないでくれ」
さっき会ったばっかなのに『前もって招待』もなにもなくない? と思ったけど、まぁいいか。誰かと勘違いしてるだけだよね、たぶん。
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