28 / 119
Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【10】
しおりを挟む「はいはい。仕方ないから解散までは付き合うよ」
「不束者ですが」
「……プロポーズまではしてないからね?」
堂々としているパックのペースに呑まれ、自信なさげにそう言うのがやっとだった。まさに前途多難。結成直後なのにすでに後悔してるんだけど。私一人で捌ききれるのかな、パックのおてんばすぎるボケ。
「それはそうと嬉しいね。やっと俺たちのハロウィンが始まるよ~」
前を歩くヴィニーが大きく伸びをした。その姿が繁忙期明けの友達の一人と重なって、思わずにやりとする。
「そんなにハロウィンが大好きなら、こんなボランティア参加してないで誰かの家でハロパしてればよかったのに。あんたたちもお人好しだよね」
「カリンこそ、どこぞの馬の骨が散らかしたゴミを拾い集めてなんかいないで、真っ直ぐ家に帰って体を休めるなり、彼氏や友と遊ぶなりしていればよかったんじゃないか?」
後ろからスーが答えた。ちなみにスーの隣にはチルがいる。なにかあったときのためにこういう布陣にしてくれたらしい。そこまで警戒する必要があるかどうかはおいといて、その厚意は素直に嬉しい。私なんて行きずりの人間なのに。
「どこぞの馬の骨って……いやでもその通りだわ。私、なにが悲しくて毎年毎年他人の尻拭いしてんだろ……」
軽い気持ちでの質問がド正論で返されて、急激に虚しくなってきた。徳を積むのも楽じゃないってこった。
「毎年出てるの? うふふふ、すごいねぇ。えらいねぇ」
いまこの瞬間報われたから、毎年参加しててよかったと思う事にしよう。
「いやー、それほどでも」
「またまたご謙遜を」
「……謙遜だったらかっこよかったんだけどね~。ただの事実だよ」
「事実、というのは?」
不意に真顔になったパックが聞いてきた。出来れば流してほしかったんだけど。
「私、残念な事に彼氏もいないし、友達もそんなにいなくてさ。その数少ない友達ってのがまたすぐに会える距離にもいないし、こういうイベントではしゃぐようなタイプでもないしで……。ぶっちゃけゴミ拾いに参加してるのも暇つぶしみたいなもんだから、褒められる要素皆無なんだよね」
声の調子だけでも落とさないように踏ん張ったけど、乾いた笑いしか出てこなかった。
「やー、そうとも言い切れないよ? 理由がどうあれ、『やらない偽善よりやる偽善』って言うし。俺はその人がなにを言ってるかよりもなにをやってるかで判断したいな~」
と言い出したのはヴィニー。まぁ前にいるんだし、聞くつもりなくても聞こえるよね。
「……私一人なんてほとんど戦力ならないとしても?」
「もちろん。ていうか、カリンちゃんはかなり手際いいほうだよ。他の参加者の倍は働いてたと思うし、十分戦力になってたって!」
「倍は流石になくない? でも、ありがと。ちょっとは人の役に立ててたらいいな……」
「確実に立っているだろう。『暇つぶし』だとしても、多くの者は余暇をボランティアに充てようとはしないはずだ」
「そうですよ。ポイ捨てをしないだけでも十分なのに、他人の捨てていったゴミを片付けるために時間を割ける貴女は胸を張ってもいいくらいです」
前半部分に禿同。『当たり前の事ができてない人が多いせいで普通の人がめちゃくちゃいい人に思えてくる現象』、あると思います。それにしてもやけに力入った言い方だったな。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる