“Boo”t!full Nightmare

片喰 一歌

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Have a spooktacular night!

Have a spooktacular night!【10】

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「はいはい。仕方ないから解散までは付き合うよ」

「不束者ですが」

「……プロポーズまではしてないからね?」

 堂々としているパックのペースに呑まれ、自信なさげにそう言うのがやっとだった。まさに前途多難。結成直後なのにすでに後悔してるんだけど。私一人で捌ききれるのかな、パックのおてんばすぎるボケ。
 
「それはそうと嬉しいね。やっと俺たちのハロウィンが始まるよ~」

 前を歩くヴィニーが大きく伸びをした。その姿が繁忙期明けの友達の一人と重なって、思わずにやりとする。

「そんなにハロウィンが大好きなら、こんなボランティア参加してないで誰かの家でハロパしてればよかったのに。あんたたちもお人好しだよね」
 
「カリンこそ、どこぞの馬の骨が散らかしたゴミを拾い集めてなんかいないで、真っ直ぐ家に帰って体を休めるなり、彼氏や友と遊ぶなりしていればよかったんじゃないか?」

 後ろからスーが答えた。ちなみにスーの隣にはチルがいる。なにかあったときのためにこういう布陣にしてくれたらしい。そこまで警戒する必要があるかどうかはおいといて、その厚意は素直に嬉しい。私なんて行きずりの人間なのに。

「どこぞの馬の骨って……いやでもその通りだわ。私、なにが悲しくて毎年毎年他人の尻拭いしてんだろ……」

 軽い気持ちでの質問がド正論で返されて、急激に虚しくなってきた。徳を積むのも楽じゃないってこった。

「毎年出てるの? うふふふ、すごいねぇ。えらいねぇ」

 いまこの瞬間報われたから、毎年参加しててよかったと思う事にしよう。

「いやー、それほどでも」

「またまたご謙遜を」
 
「……謙遜だったらかっこよかったんだけどね~。ただの事実だよ」

「事実、というのは?」

 不意に真顔になったパックが聞いてきた。出来れば流してほしかったんだけど。
 
「私、残念な事に彼氏もいないし、友達もそんなにいなくてさ。その数少ない友達ってのがまたすぐに会える距離にもいないし、こういうイベントではしゃぐようなタイプでもないしで……。ぶっちゃけゴミ拾いに参加してるのも暇つぶしみたいなもんだから、褒められる要素皆無なんだよね」

 声の調子だけでも落とさないように踏ん張ったけど、乾いた笑いしか出てこなかった。

「やー、そうとも言い切れないよ? 理由がどうあれ、『やらない偽善よりやる偽善』って言うし。俺はその人がなにを言ってるかよりもなにをやってるかで判断したいな~」

 と言い出したのはヴィニー。まぁ前にいるんだし、聞くつもりなくても聞こえるよね。

「……私一人なんてほとんど戦力ならないとしても?」

「もちろん。ていうか、カリンちゃんはかなり手際いいほうだよ。他の参加者の倍は働いてたと思うし、十分戦力になってたって!」

「倍は流石になくない? でも、ありがと。ちょっとは人の役に立ててたらいいな……」

「確実に立っているだろう。『暇つぶし』だとしても、多くの者は余暇をボランティアに充てようとはしないはずだ」

「そうですよ。なのに、他人の捨てていったゴミを片付けるために時間を割ける貴女は胸を張ってもいいくらいです」

 前半部分に禿同。『当たり前の事ができてない人が多いせいで普通の人がめちゃくちゃいい人に思えてくる現象』、あると思います。それにしてもやけに力入った言い方だったな。
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