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Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【7】
しおりを挟む「そういえば、俺たち誰も名乗ってないね?」
私にはパックの中でなにが起きているのかわからなかったけど、ヴィニーのひと言で状況を把握できた。
ああ、なんだ。そんな事か。名前を呼ぼうとしたけどわからなくて困ってたんだ。
隠すもんでもないし、言ってくれれば勿体つけずに教えたのに。ていうか、いままでのこの人の感じだとスマートに訊いてきそうなのに意外。
「ええ。こちらの名前は全員分、筒抜けでしょうけどね。何度も呼び合ってますし」
フリーズしていたパックが喋り出した。よかったよかった。
「改めて自己紹介したほうがいいか?」
「ううん、大丈夫。君はスーくんで、もう一人の悪魔がチルくんでしょ」
指差すのは失礼だから、左手を向けて答えていく。いまさら敬称つけるのも変かと思ったけど、まぁ一応。
「そうだよ。うふふ」
「で、そっちのポリスがヴィニーくん。神父はパックくん」
「おお~、全問正解!」
みんなにっこにこしてて可愛い。拍手までしてくれちゃって。攻略対象が多いのはゲームで慣れてるし、この程度の記憶はちょちょいのちょいなんだけど。
だって、歴代推しは合計何人になると思ってるの? ……35億♡
あー、ほんっと私、オタクでよかった~!!
……さすがに盛りすぎだけどね。ありったけの推しをかき集めるまでもなく35人は確定ラインだよ。十分気が多い。ゴメンね、一途じゃなくて。
ついさっき一人増えたばっかりだし、基本惚れっぽくて飽きっぽいって事なんだと思う。世間はそれを浮気性と呼ぶんだぜ。
こうなったら九百九十九人の推しを作って、千人目を待ち構える事にしようかな。さすがの私でも達成する前に御陀仏だわ。
「どんなもんだい!」
「……そろそろそっちの名前を聞いてもいいか?」
ふんぞり返っていると、スーが遠慮がちに切り出した。
「あ、そっか! 私のほうはまだだったわ。自己紹介遅れてごめん」
いやー、うっかりしてたわ。図々しく呼び捨てしておいて、自分は名乗ってなかったとか。
「カリン。呼び捨てでいいよ」
「わかった。よろしくね、カリン」
チルが微笑んで手を差し出してきたので、迷わずその手を握り返す。やっぱり大きくて安心感がすごい。
……でも、どうしてだろう。安心しちゃいけない気がするのは。
「私たちの事も呼び捨てで大丈夫ですよ」
向こうの事はなんて呼べばいいか迷っていたら、尋ねるまでもなくパックが答えてくれた。
「助かる。堅苦しいの苦手でさ。てか、さっきからずっと断りなく呼び捨てしちゃってたよね。ほんとごめん」
「アハハ、そんな感じ! 俺、呼び捨てされる分には構わないんだけど、こっちから呼び捨てするの得意じゃなくて。カリンちゃんって呼んでもいいかな?」
「別にいいよ。よっぽど変なあだ名じゃなきゃ気にしないし」
平静を装って答えたけど、正直勘弁してほしい。私が『女の子を必ずちゃん付けで呼んでくるタイプのチャラチャラしたイケメン』に弱いと知っての事かと疑いたくなる。
結論:第一印象は裏切らない。推しはどうあがいても推し。
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