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Have a spooktacular night!
Have a spooktacular night!【2】
しおりを挟む「なるほど把握した」
私だってこの地域の治安の悪さは身に染みてる。深夜帯に女性が徒歩で移動する危険性についても。だから申し出はありがたく受けるけど、それはそうとしてだ。
「……うーん。誰に頼もう」
シンキングタイムに突入した私を不思議そうに見てるのはスー。
「なにをそんなに迷う必要がある? 簡単な四択だろう」
この子、きょとん顔だとますますチルとそっくりになるんだな。それぞれがつけてる羽と尻尾を取って、口を利かなければ見分けがつかないはず。入れ替わりはロマン。
「いやだってさ、偽とはいえ彼氏でしょ。いちばん私と歩いてて違和感ないの誰かなぁって」
客観的に見て調和が取れてるのって大事じゃん。年の差カップルでも雰囲気が似通ってさえいればパパorママ活に間違われることはまずないだろうし。
「違和感……ですか?」
なにを言っているのかわからないと言いたげなパック。ごめん、私にもうまく説明できそうにない。
ちょっと横道に逸れるけど、ここ十年ほどで急激に増殖した○○活って言い回しが私ははっきり言って嫌いだ。ここまで嫌いなもの多くて、しかもその理由までご丁寧に挙げ連ねていく主人公ってどうなのさ。メメタァ……
わざわざ論じるまでもないけど、○○活ってのは○○活動の略なわけじゃん。で、その○○活っていう画一的な表現には、正当化に対する肯定とか圧力めいたものを感じ取ってしまう。
具体的に言えば、『○○のための活動なんだから、多少の非常識は許してもらおう』みたいな魂胆が透けて見えるようで悍ましいから、好きになれない。
○○に入る人や物が大義名分とか錦の御旗、黄門様の印籠みたい扱われてる気がするっていうか。信仰対象として好き勝手祭り上げるだけじゃ足りないのかな、どこまで都合よく使うつもりなのかな、って思っちゃう。そこにあるのは本当に純粋な好意なのか、って。……こんな感じの説明で伝わってたらいいけど。
「そんなに驚くとこ?」
でも、元あった表現を耳障りのいい言葉に差し替える利点がないわけでもない。
妊活なんかはその代表例じゃない? 子作りっていうと生々しすぎてあんまり大っぴらに話せない気がするけど、妊活ならだいぶシステマティックな響きだから抵抗が和らぐ気がする。先達に相談しやすくなってたり同胞と苦悩を分かち合いやすくなってたりしてたらいいなぁって思うんだけど、どうだろ。そんな事ないのかな。
元はと言えば性的な話題が過度にタブー視されてるせいだと思うけど、そこまで切り込むとただでさえダックスフンドの胴レベルに長い私の話がスリンキー・ドッグの胴レベルにレベルアップしちゃうからね。伸縮自在!
「あぁ、そっかぁ。結婚して長い夫婦とか雰囲気が似てくるって言うもんね。うふふ」
私の言いたかった事それだわ。翻訳ありがとうチルさん。
「うん、そうそう! そういう事!」
そんな感じで、言葉の変遷って面白いよね。前は援助交際って呼ばれてた行為も現在は名前を変えて存在し続けてる。パパ活ママ活って。聞くたびに思うけど、直接的な単語を使ってるくせに主体と責任の所在を曖昧にぼかす不思議な言葉だ。
こんな風に時代が進むにつれて使用される言葉が変わっていく事それ自体はおかしくない。そのままの表現で生き残ってるほうがきっと珍しいんだろう。
でも、その変化の背後にある誰かの意図を見逃さないようにしないといけないんじゃないかなって私は思ってる。あ、先に言っとくけど、別に陰謀論者ってわけじゃないんで、そこんとこも合わせてよろしく。
「なるほど。念には念を……という事ですか」
パックも納得してくれたっぽい。
で、話戻すけど。幸か不幸か生まれてきたからには、誰かの書いた脚本じゃなくて、自分の思うさま生き切ってやりたいじゃん。無理に時代に合わせる必要ないよ。
「理屈はわかったが、数分程度の事だぞ?」
だから、オールドファッションだろうがなんだろうが、好きなんだったら貫けばいい。求められた変化が望まないものなら、拒否したって構わないんだよ。
さっき言った事は『わざわざ誰かにとって都合のいい人材に成り下がる必要なんてない』程度の意味。ノリが古いくせに堂々としてる私が言うと、説得力半端ないでしょ。
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