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第3章 おかしな町のおかしな住人
第18話 独立国家のような場所
しおりを挟む「他は? 知りたいことないの? たぶんまだ話してないこといっぱいあると思うんだけどな~。何話したかは半分以上忘れてるけど、だからこそ逆に何訊かれても楽しく話せそう!」
マリカは落下した紙飛行機には目もくれず、遠くに広がる景色を眺めていた。
「現在はもう自分への投票は禁止されているのだったわよね。では、もしそれをした場合、罰則は……?」
「ないね! でも、無効になるから意味ないし大体の人はおとなしく他のカップルに投票してるよ」
「次の投票はいつなの? きちんと通知は来る?」
「次回の投票日時のお知らせは、準備が済み次第、各家庭のポストに配達されるよ~。前回が――ええっと、いつだったっけな? たぶん次の投票ももうすぐだと思うんだけど、お知らせはまだ来てないなあ」
「何ヶ月ごととか何月の第何週の何曜日と言う風に決まっているわけではないのね」
「ん~……。大体定期的にはなってると思うけど、きっかり何ヶ月ごとって感じじゃないし、通知なくても予想出来るほどの規則性はないかなあ」
「なんだか私の知っている投票とは全然違うみたい。日本の中にこんな独立国家のような場所があるなんて」
「………………」
案理が所感を述べると、マリカの饒舌は鳴りを潜めてしまった。
「マ…………マリカさん? 私、何かおかしなことを言ってしまったかしら……。ごめんなさい。生まれてこの方一度も引っ越しをしたことも選挙に行ったこともない私が知った風な口を聞いて……。きっと選挙って自治体によって別の国なのではと思ってしまうくらい違うのよね」
「ううん! アンリちゃんはなんにも変なことなんて言ってないよ? 暑くて頭回んなくてさ。無視したみたいになっちゃってごめんね!」
マリカは大丈夫だと強調するが、彼女はただでさえ肌が白く、おまけに線も細いため、案理には少し目を離した隙に倒れてしまいそうに思えた。――案理も似たり寄ったりなのだが、本人にその自覚はなかった。
「そ、そう……。なら、いいのだけれど…………あ、いいというわけはないわね。日射病が心配だもの。ここからお家まで少し距離があるし――。せめて続きは日陰のある場所でお話ししましょう? ……あそこのベンチなんてよさそうだわ。私、そこの自動販売機でお水を買って来るから、マリカさんは先に掛けていてくださる?」
幸いにも二人が話し込んでいた場所は公園のすぐ近くだった。公園の中には自動販売機もある。案理はてきぱきと指示を出し、マリカに背を向けた。
「あ、でも……一人で歩いていけるかしら……。肩を貸したほうが?」
しかし、案理は数歩行ったところでマリカの元に戻ってきた。
「ありがと、アンリちゃん。気遣わせちゃって悪いね。一人で大丈夫だけど、お水はいらないからそのままベンチ行こ!」
「そう? でも、少しでも気分が悪くなったら言って頂戴ね? 私、こう見えて足は速いほうなのよ。すぐに行って買って来るわ!」
「あははっ!! 頼もしいな~、アンリちゃん」
マリカはベンチに向かって歩き出す。案理が歩調を合わせて歩き出すと同時に、マリカは再び口を開いた。
「…………こんな優しい人だもん。連れて来たくなっちゃう気持ちもわかるな~……」
「え? 今、何か?」
「ううん、なんでもないよ! えーっと……ああ、そうだそうだ。投票についての話の途中だったよね」
「……え、ええ。そうね」
案理は砂を踏む足音で掻き消されてしまったマリカの言葉に首を傾げつつ、慎重に肯定した。
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