人魚すくい

片喰 一歌

文字の大きさ
48 / 49
第3章 おかしな町のおかしな住人

第18話 独立国家のような場所

しおりを挟む

「他は? 知りたいことないの? たぶんまだ話してないこといっぱいあると思うんだけどな~。何話したかは半分以上忘れてるけど、だからこそ逆に何訊かれても楽しく話せそう!」

 マリカは落下した紙飛行機には目もくれず、遠くに広がる景色を眺めていた。
 
「現在はもう自分への投票は禁止されているのだったわよね。では、もしそれをした場合、罰則は……?」
 
「ないね! でも、無効になるから意味ないし大体の人はおとなしく他のカップルに投票してるよ」
 
「次の投票はいつなの? きちんと通知は来る?」
 
「次回の投票日時のお知らせは、準備が済み次第、各家庭のポストに配達されるよ~。前回が――ええっと、いつだったっけな? たぶん次の投票ももうすぐだと思うんだけど、お知らせはまだ来てないなあ」 

「何ヶ月ごととか何月の第何週の何曜日と言う風に決まっているわけではないのね」 
 
「ん~……。大体定期的にはなってると思うけど、きっかり何ヶ月ごとって感じじゃないし、通知なくても予想出来るほどの規則性はないかなあ」

「なんだか私の知っている投票とは全然違うみたい。にこんな独立国家のような場所があるなんて」

「………………」
 
 案理が所感を述べると、マリカの饒舌は鳴りを潜めてしまった。

「マ…………マリカさん? 私、何かおかしなことを言ってしまったかしら……。ごめんなさい。生まれてこの方一度も引っ越しをしたことも選挙に行ったこともない私が知った風な口を聞いて……。きっと選挙って自治体によって別の国なのではと思ってしまうくらい違うのよね」

「ううん! アンリちゃんはなんにも変なことなんて言ってないよ? 暑くて頭回んなくてさ。無視したみたいになっちゃってごめんね!」

 マリカは大丈夫だと強調するが、彼女はただでさえ肌が白く、おまけに線も細いため、案理には少し目を離した隙に倒れてしまいそうに思えた。――案理も似たり寄ったりなのだが、本人にその自覚はなかった。

「そ、そう……。なら、いいのだけれど…………あ、いいというわけはないわね。日射病が心配だもの。ここからお家まで少し距離があるし――。せめて続きは日陰のある場所でお話ししましょう? ……あそこのベンチなんてよさそうだわ。私、そこの自動販売機でお水を買って来るから、マリカさんは先に掛けていてくださる?」

 幸いにも二人が話し込んでいた場所は公園のすぐ近くだった。公園の中には自動販売機もある。案理はてきぱきと指示を出し、マリカに背を向けた。

「あ、でも……一人で歩いていけるかしら……。肩を貸したほうが?」

 しかし、案理は数歩行ったところでマリカの元に戻ってきた。

「ありがと、アンリちゃん。気遣わせちゃって悪いね。一人で大丈夫だけど、お水はいらないからそのままベンチ行こ!」

「そう? でも、少しでも気分が悪くなったら言って頂戴ね? 私、こう見えて足は速いほうなのよ。すぐに行って買って来るわ!」

「あははっ!! 頼もしいな~、アンリちゃん」

 マリカはベンチに向かって歩き出す。案理が歩調を合わせて歩き出すと同時に、マリカは再び口を開いた。

「…………こんな優しい人だもん。気持ちもわかるな~……」

「え? 今、何か?」

「ううん、なんでもないよ! えーっと……ああ、そうだそうだ。投票についての話の途中だったよね」  
 
「……え、ええ。そうね」 

 案理は砂を踏む足音で掻き消されてしまったマリカの言葉に首を傾げつつ、慎重に肯定した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ
ホラー
 変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?  突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。  ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。  七竃が消えれば、呪いは消えるのか?  何故、急に七竃が切られることになったのか。  市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。  学園ホラー&ミステリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

まばたき怪談

坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...