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第1章 人魚すくいのおかしな屋台
第9話 謎の紙
しおりを挟む「毎度あり。ヒヒ……ッ。替えは必要なかったね」
レインは予備のこよりを静かに仕舞った。
「初めてとは思えない、見事な腕前だったね。おめでとう」
狙ったヨーヨーを一度ですくった案理を、ミコトが拍手を送って祝福する。
「ヨーヨーなら、前にも一度…………いえ、あれは金魚すくいだったわね。……ということは、本当にこれが初めてだったかもしれないわ」
「そうかい。まあ、なんだっていいのさ。この子も、嬢ちゃんにすくわれて幸せだろうからねえ」
「こちらこそ貴重な経験をどうもありがとう。どういう仕掛けなのかはわからなかったけれど、とても楽しかったわ。ただ、この屋台の名前は『人魚すくい』でしょう?」
案理はすくったばかりのヨーヨーを掲げ、レインに尋ねた。
(『金魚すくい』と似ているから、二回目だと勘違いしてしまったのよね……)
指に通すのは子どもっぽいと思って敬遠したわけではない。切実な声を聞いていたため、雑に扱うのが躊躇われ、その結果、両手で持つ形に落ち着いたというだけだ。
「いかにも、『人魚すくい』だねえ」
「でも、これのどこが人魚だというの? どこかに……たとえばおうちの中、窓のあたりからこちらを覗いている人魚が描かれているのかと思ったのだけれど、そういうわけでもなさそうだし…………」
よしんば窓から覗いている者が描かれていたとしても、足元が隠されているため、それが人魚であるとは断言できない。人間かもしれないし、人形だっておかしくはないのだ。
「…………そうだ。レイン。まだひとつ、大事な作業が残ってるんじゃなかったかな?」
「そうだった、そうだった。年寄りになると、忘れっぽくて嫌になるねえ」
ミコトに促され、レインはこよりが収納されている引き出しの下の一段から、二つ折りの紙を一枚取り出した。
「ヒヒヒ……。渡し忘れるといけないからね。先にこれを。なくさないように、鞄にしまっておくといい」
「……『すくった人魚のもどしかた』……? 何なの、これ?」
かさり。渡された紙を両側に開いた案理は、震える声で問いかけた。
「脅すのはおよしよ。……案理? 大丈夫。なくしてもへっちゃらさ。手順は全部、ぼくの頭に入ってるんだから」
頭の横を人差し指でトントン叩いて、ミコトは案理に微笑みかけた。
「本当? もちろん、なくさないように気を付けるけれど…………」
案理はその言葉通り、仕切りのついたクリアファイルの中に受け取ったばかりの紙を滑り込ませた。
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