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第12章 1件落着とはいかないどんでん返し?それが醍醐味だったら醍醐味なんか俺は遠慮したい。
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「いや~壮観だなこりゃ」
門の前まで迫っていた王国軍の精鋭部隊を蹴散らしたら、奴らは少し距離を空けた。別に退却すると言うわけではなく、何かを待って一気に攻めかかるための間合いを計っているような感じか。
その後ろでは門の前なんか目じゃない戦闘が開始していた。
王国戦士の手引きでひっそりと近づいていた魔族軍が、目の前の戦闘に集中していた教皇庁の軍に奇襲をかけたんだ。
隠蔽の術式とか遮音n術式とか多用してひっそりと近づいた魔族軍は教皇庁の軍に横合いから突っかけて一気に教皇庁の軍を分断しようとした。それに呼応して門を攻めていない王国軍ももっさりとした動きで、分断後の教皇庁の軍を包囲殲滅できるように動く。
しかし、奇襲を喰らい、しかも味方である筈の王国軍が一向に救援してくれないにも関わらず、教皇庁の軍は粘った。
当初はすぐに分断されて各個撃破されるかに見えた教皇庁軍だったが、魔王軍の背後から忍び寄っていた青の村選抜部隊と、勇者の助言?を怪しんだシイタケ男の直轄部隊が協力して反撃に出て、辛うじて戦線を維持している。
そうなると王国軍は勝った方と手を組みたいがために、どちらにも攻撃が出来ない優柔不断な状態へと落ちこんでいた。
つまり王国軍のみ、戦場の中にあって戦闘を行っていない真空の隙間と化していた。戦士の数はまだまだ多く、戦力としたら十分なのだが、一度戦う気がそがれてしまうと、戦闘の疲労も重なり、人の心理としては戦いが面倒になる。はっきりとそう思っている人間は少ないだろうが、実際は体の動きだしが遅くなったり、生死を分ける瞬時の判断などが出来なくなる。
一息ついた~状態なわけだ。
「よっし行くぞ聖騎士ちゃん!」
「ちょっと待ってくださいまし、私をおいていくつもりなのですか」
そう言って追いすがろうとする姉姫様をその場に置いて俺と聖騎士ちゃん、その腰にしがみついて離れない魔法少女を連れて、王国戦士の元へ短距離転移を実施した。
この短距離転移は見えた場所までしか移動できないし、間に障害物があったらそこで術式はキャンセルされてしまう。
だからこの時を待っていた。
ほっと一瞬だけ気を抜いてしまい、隊列とか軍紀とかを忘れてしまう一瞬を。目線の先に敵の本陣で狼狽えるあいつが、俺の瞳に写る瞬間をよ。
「ってことで一気に参上だぜ王国戦士よぉ!」
転移した場所は、王国戦士の正面やや頭上に近い場所。背後から唐竹割に一刀両断しても良かったが、スキルの能力制限で背後に回り込むことは出来なかった。
しかし正面から斬りかかったのに、奇襲は成功だった。
以前の王国戦士だったら、いかに短距離転移で迫ったとしても、実際に転移が終了するまでのわずかなタイムラグを隙と見て攻撃してきた筈だ。
今回は王国戦士も王国軍を指揮せねばならず、一対一の訓練ではない為、意表を突けば傷を負わせる位、何とかなるかとの読みだ。傷を与えれば、俺より物理攻撃が得意そうな聖騎士がいる。
だがしかし、そんな俺の読みは外れた。
「えっマジ?」
俺が両手にそれぞれ持って振り下ろしたナイフは、肩口から鎧の隙間を通って、両腕を斬り落としてしまった。即座に回復系術式の上級な奴か、エリクサー並みに回復力のある高価なポーションでもあれば回復するだろう。王国の支配者にのし上がったと言うなら、それらの回復系アイテムも持っているはずだろう?
「ぐっあぁぁぁ」
しかし、王国戦士は両腕を斬られた傷口から大量の血を噴出させ、直ぐに治療が必要な状態であるのに、周囲の誰も助けようとしない中、自分が死んでいく意味とか状況とかに思いをはせる事無く、あっけなく死んでいった。
王国戦士の亡骸を前にして、俺と聖騎士は無言で市街を見つめる。
「えっえ?終わりです?これで終了なんです?王国戦士さん、死んじゃいました?」
今まで喋らなかった癖に、なんかしんみりした空気感を爆速で吹き飛ばしたのは魔法少女だ。例の素なんだか良く判らない妙に子供じみた甘ったるい喋り方で言わずもがなの事を言ってくれる。
そうだ、王国戦士は死んだ。ここ数年間で一番この勇者様に迷惑をかけ続けていた男があっさりと出血多量で死んだ。こいつに侍っていた護衛の騎士とか、看護兵とは名ばかりのナイスバディの女性騎士も王国戦士が斬られたと判った瞬間に蜘蛛の子よりも早く逃げ散っていった。
あの看護兵がキチンと自分の職種に合わせて回復術式を構築していれば、こんな事にはならなかったか?いいや、遅かれ早かれ和解して昔の様に馬鹿馬鹿しい冒険旅行なんてできなかった。
「だけど、なんかそのぽわぽわ声ムカツクな」
シュバッ
ちょっと威力を抑えた拳骨を魔法少女の脳天に食らわしてやろうとしたが、聖騎士が止める。いや正確には自分の腰にへばりついている魔法少女の体をずらして、俺の拳から逃がしている。
「くっ、くそっ」
「ふっ、幼気な女子にっ、暴力はっ、いけないよっ、勇者」
数度のやり取りに後、一瞬諦めたふりして、もう一度拳を本気の速度で動かす。
聖騎士も俺の諦めが擬態だと即座に見破り、魔法少女を掴んでいる手だけでなく、もう片方の手を使い防御に出る。
「はっはっはっ、死んだと思っただろう~残念、こいつの中身は既に吾輩の・・」
「うるさいっ」
「うるせぇ」
「お呼びじゃないです~」
元勇者パーティーに参加していた、勇者の拳、槍の聖騎士の手刀、魔法少女の隠し技ポイズンニードル術式が、白っぽい何かがすべての謎を喋りきる前にぶっ飛ばし、四肢の骨を砕き、魔物でも数秒で殺す致死毒で、倒された。
門の前まで迫っていた王国軍の精鋭部隊を蹴散らしたら、奴らは少し距離を空けた。別に退却すると言うわけではなく、何かを待って一気に攻めかかるための間合いを計っているような感じか。
その後ろでは門の前なんか目じゃない戦闘が開始していた。
王国戦士の手引きでひっそりと近づいていた魔族軍が、目の前の戦闘に集中していた教皇庁の軍に奇襲をかけたんだ。
隠蔽の術式とか遮音n術式とか多用してひっそりと近づいた魔族軍は教皇庁の軍に横合いから突っかけて一気に教皇庁の軍を分断しようとした。それに呼応して門を攻めていない王国軍ももっさりとした動きで、分断後の教皇庁の軍を包囲殲滅できるように動く。
しかし、奇襲を喰らい、しかも味方である筈の王国軍が一向に救援してくれないにも関わらず、教皇庁の軍は粘った。
当初はすぐに分断されて各個撃破されるかに見えた教皇庁軍だったが、魔王軍の背後から忍び寄っていた青の村選抜部隊と、勇者の助言?を怪しんだシイタケ男の直轄部隊が協力して反撃に出て、辛うじて戦線を維持している。
そうなると王国軍は勝った方と手を組みたいがために、どちらにも攻撃が出来ない優柔不断な状態へと落ちこんでいた。
つまり王国軍のみ、戦場の中にあって戦闘を行っていない真空の隙間と化していた。戦士の数はまだまだ多く、戦力としたら十分なのだが、一度戦う気がそがれてしまうと、戦闘の疲労も重なり、人の心理としては戦いが面倒になる。はっきりとそう思っている人間は少ないだろうが、実際は体の動きだしが遅くなったり、生死を分ける瞬時の判断などが出来なくなる。
一息ついた~状態なわけだ。
「よっし行くぞ聖騎士ちゃん!」
「ちょっと待ってくださいまし、私をおいていくつもりなのですか」
そう言って追いすがろうとする姉姫様をその場に置いて俺と聖騎士ちゃん、その腰にしがみついて離れない魔法少女を連れて、王国戦士の元へ短距離転移を実施した。
この短距離転移は見えた場所までしか移動できないし、間に障害物があったらそこで術式はキャンセルされてしまう。
だからこの時を待っていた。
ほっと一瞬だけ気を抜いてしまい、隊列とか軍紀とかを忘れてしまう一瞬を。目線の先に敵の本陣で狼狽えるあいつが、俺の瞳に写る瞬間をよ。
「ってことで一気に参上だぜ王国戦士よぉ!」
転移した場所は、王国戦士の正面やや頭上に近い場所。背後から唐竹割に一刀両断しても良かったが、スキルの能力制限で背後に回り込むことは出来なかった。
しかし正面から斬りかかったのに、奇襲は成功だった。
以前の王国戦士だったら、いかに短距離転移で迫ったとしても、実際に転移が終了するまでのわずかなタイムラグを隙と見て攻撃してきた筈だ。
今回は王国戦士も王国軍を指揮せねばならず、一対一の訓練ではない為、意表を突けば傷を負わせる位、何とかなるかとの読みだ。傷を与えれば、俺より物理攻撃が得意そうな聖騎士がいる。
だがしかし、そんな俺の読みは外れた。
「えっマジ?」
俺が両手にそれぞれ持って振り下ろしたナイフは、肩口から鎧の隙間を通って、両腕を斬り落としてしまった。即座に回復系術式の上級な奴か、エリクサー並みに回復力のある高価なポーションでもあれば回復するだろう。王国の支配者にのし上がったと言うなら、それらの回復系アイテムも持っているはずだろう?
「ぐっあぁぁぁ」
しかし、王国戦士は両腕を斬られた傷口から大量の血を噴出させ、直ぐに治療が必要な状態であるのに、周囲の誰も助けようとしない中、自分が死んでいく意味とか状況とかに思いをはせる事無く、あっけなく死んでいった。
王国戦士の亡骸を前にして、俺と聖騎士は無言で市街を見つめる。
「えっえ?終わりです?これで終了なんです?王国戦士さん、死んじゃいました?」
今まで喋らなかった癖に、なんかしんみりした空気感を爆速で吹き飛ばしたのは魔法少女だ。例の素なんだか良く判らない妙に子供じみた甘ったるい喋り方で言わずもがなの事を言ってくれる。
そうだ、王国戦士は死んだ。ここ数年間で一番この勇者様に迷惑をかけ続けていた男があっさりと出血多量で死んだ。こいつに侍っていた護衛の騎士とか、看護兵とは名ばかりのナイスバディの女性騎士も王国戦士が斬られたと判った瞬間に蜘蛛の子よりも早く逃げ散っていった。
あの看護兵がキチンと自分の職種に合わせて回復術式を構築していれば、こんな事にはならなかったか?いいや、遅かれ早かれ和解して昔の様に馬鹿馬鹿しい冒険旅行なんてできなかった。
「だけど、なんかそのぽわぽわ声ムカツクな」
シュバッ
ちょっと威力を抑えた拳骨を魔法少女の脳天に食らわしてやろうとしたが、聖騎士が止める。いや正確には自分の腰にへばりついている魔法少女の体をずらして、俺の拳から逃がしている。
「くっ、くそっ」
「ふっ、幼気な女子にっ、暴力はっ、いけないよっ、勇者」
数度のやり取りに後、一瞬諦めたふりして、もう一度拳を本気の速度で動かす。
聖騎士も俺の諦めが擬態だと即座に見破り、魔法少女を掴んでいる手だけでなく、もう片方の手を使い防御に出る。
「はっはっはっ、死んだと思っただろう~残念、こいつの中身は既に吾輩の・・」
「うるさいっ」
「うるせぇ」
「お呼びじゃないです~」
元勇者パーティーに参加していた、勇者の拳、槍の聖騎士の手刀、魔法少女の隠し技ポイズンニードル術式が、白っぽい何かがすべての謎を喋りきる前にぶっ飛ばし、四肢の骨を砕き、魔物でも数秒で殺す致死毒で、倒された。
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