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第7章「アドルフと7月の奇跡」
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熱狂した十万以上の民衆は、ウンターデンリンデンの菩提樹に囲まれた、石畳の大通りから、白亜の大理石で出来た大統領府のエオザイダ門までの道を突き進んでいた。
その熱い民衆が作る流れから、アドルフとリッヒは次の計画の為、抜け出そうとしていた。
十万以上に達した群衆は、もう誰が先導しなくても、大統領府へつめかけ、自分たちの意思を大統領に向かって要求するだろう。その要求を大統領だろうが、軍の代表だろうが、参謀本部総長だろうが拒否することは出来ない。
すでに目的は果たした。
ポーランドから侵攻してきた部隊の内、中央、タンネンベルグ高原を侵攻していた部隊に対しての砲撃は、何故か現場に居た狼牙の塔の面々からゴーサインが来なかったため、実施されていない。だが、他の侵攻部隊に対しては、きっちり砲弾をそれぞれ一発ずつお見舞いし、併せて数百名の死傷者を出させていた。
それと同時に使者を派遣、交渉の結果、概ねポーランド合衆国軍は後退して今はタンネンベルグ高原以外の部隊は国境線で警戒線を張っている。
こちらの砲撃がもし八百ミリ列車砲だった場合、そこまで下がらないと砲撃範囲である事をポーランド合衆国軍は知っているのだ。みすみす巨砲の砲弾で死にたくはないだろう。
それに彼らは、平和的にドイツ連邦を併合しに来たと言う建前が有る以上、砲弾を避ける為に全力疾走で突き進むと言うのは、体裁がよくないのもあるのだろう。
そこまで分かっていてリッヒは、列車砲の開発に協力を申し出ていた、と一緒に歩くオットー兵曹は確信している。
「しかしお前らもやるもんだなぁ、こんなに簡単に計画がうまくいくなんて俺なんか全然思ってなかったぞ?」
「そうですかオットー兵曹、僕達はこうなるべくして動いたので、こうならなければ逆に困ります、予想外のこともあったし」
「リッヒ、リッヒ、ハインリッヒ♪それは誰も想像できなかったんだから仕方がないよ?まさかピエトロさんと旧知の間柄な女性が向こうに居るなんて、想像できないじゃない?」
民衆に囲まれて歩く小柄な少女。彼女を見て、誰が先ほど行列の先頭で皆を圧倒させる演説をした少女と同一人物と思うだろうか?
演説をした時の彼女は黒に銀色のラインが入った黒の家旅団の礼服で、今はちょっと良い所のお嬢さんが着るようなクリーム色のセーターに、スコットランド中央集権国家で流行していると言うギンガムチェックの乗馬パンツを履いている。頭にはその豪奢な金髪を隠すように、フランス大帝国とイスパニア列強国の間、バスク地方で生産している藍色のベレー帽をちょこんと乗せている。
自慢の金髪に埋もれるオレンジな三角耳は、誰にも見られない様に帽子の中だが、アドルフはそれが不満らしく、ちょこちょことベレー帽の位置を変え変え、くるくるしながら歩いている。
リッヒ曰く、今後は彼女が狙われる可能性が増えてくるだろうから、こうやって民衆に溶け込む事も大事なんだそうだ。
「それに予想外ならもう一つ、その彼女がさっ、この間のお姉さんの娘さん♪これはもぉ~運命だよねっ」
世の中に運命とか、偶然とかは無いと断言しているピエトロ本人が聞いたら、なんと答えるだろうか?もしかしたら主義を曲げるかも?
そんな事を考えながら、オットー兵曹はアドルフの楽しそうな歩みに、自分の動きを合わせる。
リッヒと自分で彼女の左右を守り、前後には目立たないように元武装憲兵隊の要人警護経験者を配置してある。
そしてその警護とアドルフの間には雑多な人が居るように見せて、実は黒の家旅団の子供たちと、狼牙の塔の傭兵たちだった。
アドルフは単純に、このドイツの首都、ベルリンを仲間たちと一緒になって歩くことが楽しいらしい。
だが、楽しいだけでは終わらない事を、アドルフを含めて皆が覚悟している。
それは最年少のギリアム・スペンサー少年も同じだった。
誰も彼もが、その年齢に似合わず、彼女を、アドルフを守ると悲壮な決意をして、この行進に参加している。
そしてその事を誰よりも理解していながら、アドルフは屈託ない笑顔を皆に向けて振りまいている。
「大したもんだよ、全く」
オットー兵曹は本当にこいつらはすごいと思う。
孤児院育ちのミュンヘンのガキ共が、何がどうなったのか良く分からないが、国を動かした。それもオットー兵曹が思う限りは良い方向へ。
これでドイツは他の国へお情けを頂戴しなければならない国ではなくなるだろう。例えどんなに苦しくても、これからはしっかりと自分たちで自分たちの国を見据えて、決めていくことだろう。
それは当たり前のことかも知れないが、その当たり前を誰もが見失ってた。
この小柄な少女と、その周囲のガキ共だけがそれを正しい方向に戻したんだ。
「さてと、誰か偉い人が言ったんでしょうけど、権利には義務が生じるってね、そろそろ行く?」
「約束の場所と時間を逆算するとそろそろ動かないといけないな、アドルフ、準備は大丈夫か?」
「やだなぁリッヒ、君はいつもみたいに高飛車じゃなきゃボクが調子狂っちゃうよ、この行進は楽しかったし、もしかしたらこんな事出来るのはこれが最後かもしれないけど、でも良かった、皆と一緒にベルリンを歩けて」
「ああ、ってお前ら、まるでこれが最後みたいに言うなよ?都市伝説じゃないけど、最後の言葉になっちまうぞ?」
「やだなぁオットー兵曹、都市伝説なんて信じているの?意外と迷信深いんだね、ふふ」
「いいだろうが、別に、もう、とっとと行けよ、あっちでリッティやハンス中佐も待ってるしな、こっちは任せとけ」
「うん、任せたよオットー兵曹、ありがとね」
本当に普通に、ただ夕飯を食べに黒の家に帰る時の様に、アドルフは手を振って、こっそりとリッヒと数人の黒の家旅団の面々と共に行進から抜け出した。
その熱い民衆が作る流れから、アドルフとリッヒは次の計画の為、抜け出そうとしていた。
十万以上に達した群衆は、もう誰が先導しなくても、大統領府へつめかけ、自分たちの意思を大統領に向かって要求するだろう。その要求を大統領だろうが、軍の代表だろうが、参謀本部総長だろうが拒否することは出来ない。
すでに目的は果たした。
ポーランドから侵攻してきた部隊の内、中央、タンネンベルグ高原を侵攻していた部隊に対しての砲撃は、何故か現場に居た狼牙の塔の面々からゴーサインが来なかったため、実施されていない。だが、他の侵攻部隊に対しては、きっちり砲弾をそれぞれ一発ずつお見舞いし、併せて数百名の死傷者を出させていた。
それと同時に使者を派遣、交渉の結果、概ねポーランド合衆国軍は後退して今はタンネンベルグ高原以外の部隊は国境線で警戒線を張っている。
こちらの砲撃がもし八百ミリ列車砲だった場合、そこまで下がらないと砲撃範囲である事をポーランド合衆国軍は知っているのだ。みすみす巨砲の砲弾で死にたくはないだろう。
それに彼らは、平和的にドイツ連邦を併合しに来たと言う建前が有る以上、砲弾を避ける為に全力疾走で突き進むと言うのは、体裁がよくないのもあるのだろう。
そこまで分かっていてリッヒは、列車砲の開発に協力を申し出ていた、と一緒に歩くオットー兵曹は確信している。
「しかしお前らもやるもんだなぁ、こんなに簡単に計画がうまくいくなんて俺なんか全然思ってなかったぞ?」
「そうですかオットー兵曹、僕達はこうなるべくして動いたので、こうならなければ逆に困ります、予想外のこともあったし」
「リッヒ、リッヒ、ハインリッヒ♪それは誰も想像できなかったんだから仕方がないよ?まさかピエトロさんと旧知の間柄な女性が向こうに居るなんて、想像できないじゃない?」
民衆に囲まれて歩く小柄な少女。彼女を見て、誰が先ほど行列の先頭で皆を圧倒させる演説をした少女と同一人物と思うだろうか?
演説をした時の彼女は黒に銀色のラインが入った黒の家旅団の礼服で、今はちょっと良い所のお嬢さんが着るようなクリーム色のセーターに、スコットランド中央集権国家で流行していると言うギンガムチェックの乗馬パンツを履いている。頭にはその豪奢な金髪を隠すように、フランス大帝国とイスパニア列強国の間、バスク地方で生産している藍色のベレー帽をちょこんと乗せている。
自慢の金髪に埋もれるオレンジな三角耳は、誰にも見られない様に帽子の中だが、アドルフはそれが不満らしく、ちょこちょことベレー帽の位置を変え変え、くるくるしながら歩いている。
リッヒ曰く、今後は彼女が狙われる可能性が増えてくるだろうから、こうやって民衆に溶け込む事も大事なんだそうだ。
「それに予想外ならもう一つ、その彼女がさっ、この間のお姉さんの娘さん♪これはもぉ~運命だよねっ」
世の中に運命とか、偶然とかは無いと断言しているピエトロ本人が聞いたら、なんと答えるだろうか?もしかしたら主義を曲げるかも?
そんな事を考えながら、オットー兵曹はアドルフの楽しそうな歩みに、自分の動きを合わせる。
リッヒと自分で彼女の左右を守り、前後には目立たないように元武装憲兵隊の要人警護経験者を配置してある。
そしてその警護とアドルフの間には雑多な人が居るように見せて、実は黒の家旅団の子供たちと、狼牙の塔の傭兵たちだった。
アドルフは単純に、このドイツの首都、ベルリンを仲間たちと一緒になって歩くことが楽しいらしい。
だが、楽しいだけでは終わらない事を、アドルフを含めて皆が覚悟している。
それは最年少のギリアム・スペンサー少年も同じだった。
誰も彼もが、その年齢に似合わず、彼女を、アドルフを守ると悲壮な決意をして、この行進に参加している。
そしてその事を誰よりも理解していながら、アドルフは屈託ない笑顔を皆に向けて振りまいている。
「大したもんだよ、全く」
オットー兵曹は本当にこいつらはすごいと思う。
孤児院育ちのミュンヘンのガキ共が、何がどうなったのか良く分からないが、国を動かした。それもオットー兵曹が思う限りは良い方向へ。
これでドイツは他の国へお情けを頂戴しなければならない国ではなくなるだろう。例えどんなに苦しくても、これからはしっかりと自分たちで自分たちの国を見据えて、決めていくことだろう。
それは当たり前のことかも知れないが、その当たり前を誰もが見失ってた。
この小柄な少女と、その周囲のガキ共だけがそれを正しい方向に戻したんだ。
「さてと、誰か偉い人が言ったんでしょうけど、権利には義務が生じるってね、そろそろ行く?」
「約束の場所と時間を逆算するとそろそろ動かないといけないな、アドルフ、準備は大丈夫か?」
「やだなぁリッヒ、君はいつもみたいに高飛車じゃなきゃボクが調子狂っちゃうよ、この行進は楽しかったし、もしかしたらこんな事出来るのはこれが最後かもしれないけど、でも良かった、皆と一緒にベルリンを歩けて」
「ああ、ってお前ら、まるでこれが最後みたいに言うなよ?都市伝説じゃないけど、最後の言葉になっちまうぞ?」
「やだなぁオットー兵曹、都市伝説なんて信じているの?意外と迷信深いんだね、ふふ」
「いいだろうが、別に、もう、とっとと行けよ、あっちでリッティやハンス中佐も待ってるしな、こっちは任せとけ」
「うん、任せたよオットー兵曹、ありがとね」
本当に普通に、ただ夕飯を食べに黒の家に帰る時の様に、アドルフは手を振って、こっそりとリッヒと数人の黒の家旅団の面々と共に行進から抜け出した。
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