1 / 34
序章
さいしょのこと
しおりを挟む
学校からの帰り道。
突然、すごく一杯の水に包まれたかとおもったら、すぐに足元が地面から離れて、そこからくるくる、くるくると宙返りの様な状態。
気持ち悪くて、もう無理なんだけど・・・と、喉元をせりあがってくる何かを必死に耐えていたら、これまた突然宙返り状態が終った。
水に包まれたから、当然体中は水浸しでおばあちゃんに買ってもらった新しい制服もびっちょり。このまま歩いて帰るのはシンドイなぁとか考えながら、目を開けると・・・。
「はぇっ?」
なんか、いつもよりも少し高くて幼児臭い声が出たけど、今は気にしていられない。
目を開けて見えた先には、アスファルトも、海沿いにあったテトラポットもなくなっていた。学校からの帰り路で、いつも見えていたタワーマンションとか、どっかの会社の自社ビルさん、やたらデカくて新しいショッピングモールなんかの姿も無い。
見えるのは、山の緑と木の葉の緑と、草の緑とか、つまり緑色ばかり。
見慣れたコンクリートがどこにもないっ・・・。
「夢って展開はありなのかしら?」
最新型のなんとか言う頭にセットするゲーム機でも、再現不可能と思えるくらいに自然な自然・・・。冗談でもなんでもなく、私の周囲にはそんな世界が広がっていた。
古典的な方法として、軽く頬を叩いてみるが、しっかりと痛い。
「えっと、こんな時の対処法ってなんかあるのかしら・・・」
どっかの馬鹿がこんな状況に憧れるとか、ほざいていた気がする。
あれは確か、同じクラスになったばかりの坂口だ。二~三人の集団になって、何やら卑猥な、胸が異常にデカくて、顔が小さい露出狂的な服装の女性キャラが大きく書かれている本を見せながら、なんだっけ、なんか言ってたな。
「あ~異世界転生!俺もしたいなぁ~」
だったかな?
「って、異世界?ここ異世界って奴なの?本とかアニメで流行していたのは知っているけど、実際に異世界とかあるの?ドッキリじゃなく?」
私程度に、こんな大掛かりなセットを組んでドッキリをしかける利点は全くない。私は売れてるアイドルとかではないし、もちろん有名人のかけらも持って生まれていない。
ただただ、教室の隅で静かにしている自称文系キャラだ。
友人の登美子には、眼鏡があったらアンタ絶対に図書館に入り浸ってそうなタイプに見えるとか、失礼な事も言われる私だ。
そんな私が、どんな抽選に当たって、異世界に来ちゃったのよ~。
それに異世界に転生するとかだと、ほらっ、呼んだ相手とか、天上の神様だとかが現れて何か有用なアドバイスとか、世界一になれるスキルとかくれるんじゃないの?
それを有効活用して、俺様すげぇって自慢して、敵対する貴族とかにざまぁとか笑いかけて、そんでそれから様々な種族の女性を侍らせて、いちゃいちゃハーレムするもんでしょう?なのに、誰もいない。
見渡す限り、動いているのは雲だけってどういうこと!
「もしかして私が女だから・・・?坂口みたいな馬鹿な男だったら、そんな王道展開とかもあったのかもしれないの?」
ちょっと、思考が混乱していると自覚する。
落ち着こう・・・。
右手を心臓の位置にあてて、深呼吸する。
「あれ?」
感触が変だ。
卸し立ての新しい制服を着ていた筈なのに、手のひらに感じる感触はザラザラで、ちくちく。それに・・・。
「ない・・・、なんにも無い、つるぺったん・・・」
一応ね、同学年の中で、平均以上はあった筈なのよ?
もちろん凄い大きい娘とかもいたけど、それは特別。私には私らしい、普通の、ううん、普通よりも少しだけ大きな胸があったはずなのよ・・・。
「それが、なんで・・・」
ペタペタ・・・。
右手で確認して、左手で確認して、やっぱり。
ペタペタ・・・。
「さようなら、異世界、もう私はやっていけません、どこの誰が私をこんな場所に放り込んだのか知らないけど、さようなら、もう二度と異世界なんかに会いたくありません」
目を閉じて、瞳をぎゅぅぅっと瞑ってみて、そこではっと気づく。
どうやったら、ここから出れるのかしら?
自殺するしかない?
でもなぁ、痛いのは嫌だし、なんかお腹も減ってきた。
ペタペタでも、まぁこれから成長もするだろうし。
とにかく、今はお腹減ったし喉も乾いてきた、だから少し歩いてみようかしら。
そうして、私は異世界の一歩を歩み出したのだった。
突然、すごく一杯の水に包まれたかとおもったら、すぐに足元が地面から離れて、そこからくるくる、くるくると宙返りの様な状態。
気持ち悪くて、もう無理なんだけど・・・と、喉元をせりあがってくる何かを必死に耐えていたら、これまた突然宙返り状態が終った。
水に包まれたから、当然体中は水浸しでおばあちゃんに買ってもらった新しい制服もびっちょり。このまま歩いて帰るのはシンドイなぁとか考えながら、目を開けると・・・。
「はぇっ?」
なんか、いつもよりも少し高くて幼児臭い声が出たけど、今は気にしていられない。
目を開けて見えた先には、アスファルトも、海沿いにあったテトラポットもなくなっていた。学校からの帰り路で、いつも見えていたタワーマンションとか、どっかの会社の自社ビルさん、やたらデカくて新しいショッピングモールなんかの姿も無い。
見えるのは、山の緑と木の葉の緑と、草の緑とか、つまり緑色ばかり。
見慣れたコンクリートがどこにもないっ・・・。
「夢って展開はありなのかしら?」
最新型のなんとか言う頭にセットするゲーム機でも、再現不可能と思えるくらいに自然な自然・・・。冗談でもなんでもなく、私の周囲にはそんな世界が広がっていた。
古典的な方法として、軽く頬を叩いてみるが、しっかりと痛い。
「えっと、こんな時の対処法ってなんかあるのかしら・・・」
どっかの馬鹿がこんな状況に憧れるとか、ほざいていた気がする。
あれは確か、同じクラスになったばかりの坂口だ。二~三人の集団になって、何やら卑猥な、胸が異常にデカくて、顔が小さい露出狂的な服装の女性キャラが大きく書かれている本を見せながら、なんだっけ、なんか言ってたな。
「あ~異世界転生!俺もしたいなぁ~」
だったかな?
「って、異世界?ここ異世界って奴なの?本とかアニメで流行していたのは知っているけど、実際に異世界とかあるの?ドッキリじゃなく?」
私程度に、こんな大掛かりなセットを組んでドッキリをしかける利点は全くない。私は売れてるアイドルとかではないし、もちろん有名人のかけらも持って生まれていない。
ただただ、教室の隅で静かにしている自称文系キャラだ。
友人の登美子には、眼鏡があったらアンタ絶対に図書館に入り浸ってそうなタイプに見えるとか、失礼な事も言われる私だ。
そんな私が、どんな抽選に当たって、異世界に来ちゃったのよ~。
それに異世界に転生するとかだと、ほらっ、呼んだ相手とか、天上の神様だとかが現れて何か有用なアドバイスとか、世界一になれるスキルとかくれるんじゃないの?
それを有効活用して、俺様すげぇって自慢して、敵対する貴族とかにざまぁとか笑いかけて、そんでそれから様々な種族の女性を侍らせて、いちゃいちゃハーレムするもんでしょう?なのに、誰もいない。
見渡す限り、動いているのは雲だけってどういうこと!
「もしかして私が女だから・・・?坂口みたいな馬鹿な男だったら、そんな王道展開とかもあったのかもしれないの?」
ちょっと、思考が混乱していると自覚する。
落ち着こう・・・。
右手を心臓の位置にあてて、深呼吸する。
「あれ?」
感触が変だ。
卸し立ての新しい制服を着ていた筈なのに、手のひらに感じる感触はザラザラで、ちくちく。それに・・・。
「ない・・・、なんにも無い、つるぺったん・・・」
一応ね、同学年の中で、平均以上はあった筈なのよ?
もちろん凄い大きい娘とかもいたけど、それは特別。私には私らしい、普通の、ううん、普通よりも少しだけ大きな胸があったはずなのよ・・・。
「それが、なんで・・・」
ペタペタ・・・。
右手で確認して、左手で確認して、やっぱり。
ペタペタ・・・。
「さようなら、異世界、もう私はやっていけません、どこの誰が私をこんな場所に放り込んだのか知らないけど、さようなら、もう二度と異世界なんかに会いたくありません」
目を閉じて、瞳をぎゅぅぅっと瞑ってみて、そこではっと気づく。
どうやったら、ここから出れるのかしら?
自殺するしかない?
でもなぁ、痛いのは嫌だし、なんかお腹も減ってきた。
ペタペタでも、まぁこれから成長もするだろうし。
とにかく、今はお腹減ったし喉も乾いてきた、だから少し歩いてみようかしら。
そうして、私は異世界の一歩を歩み出したのだった。
1
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる