上 下
25 / 25
第7章 エンディング?いやいやハッピーエンドは遠すぎる

7-1

しおりを挟む
さて、とりあえず俺は死の世界を歩くことも無く、一応無事に今日も生きている。
 あの時俺を助けてくれたサテルスは、老練な将軍の一撃を盾で受け止めたのだが、その衝撃に耐えられず、両腕を骨折・・・。瀕死の状態だったのになんて威力だ。
 そのせいでサテルスは結果的に無傷状態だった俺とは違い、まだ治療中となっている。命に別状はないけれど、両腕がまともに動かせないせいで食事も一人ではできない哀れな姿かと思いきや、治療小屋の治療師見習いの下級悪魔娘とねんごろになったらしい。下級悪魔同士せいぜい仲良くなればいいさ・・・。最後の最後まであがいた結果なんだから少しは報われるのも有りだろう。
 あの後どうなったかと言うと、裏切りを画策していた老練な将軍が死んだせいで、搦め手門は守られ、残った者たちは姉お嬢様悪魔と一緒になって最後の抵抗を試みるのか?みたいなシチュエーションになったらしいのだけれど、悲壮な決意で敵を待っている間に、どっかの偉い悪魔が軍を率いて敵を蹴散らしたのだそうだ。
 俺はその時、俺を守ったサテルスが倒れてきたせいで地面に頭を激突させ、意識を失っていたせいで見てはいない。
 どうもやってきた偉い悪魔はこの辺り一帯を治める国主?的な立場の悪魔で、領主たちの諍いを止める為に現れたんだとか。俺からしたらふ~ん、だったらもっと早く来いよってなもんだけど、偉い悪魔には偉い悪魔の考えとかもあったんだろうし、どうでもいい。
 姉お嬢様悪魔は親である領主の跡を継いで、女性領主となって半減した領地に配属された。残りの半分と敵対していた領主の全部の土地は最後にやってきた偉い国主様に持っていかれたそうなんだが、そっちもどうでもいい。
妹お嬢様悪魔、たしか名前はリアス様とか言うらしいが、彼女は偉い国主様に連れていかれて、形ばかりは側室とかになったとか、実は上級悪魔だけど奴隷みたいな生活になったとか言う噂だ。
 そんなのがあの後の周囲の状況。
 んで、俺だ。
 俺がどうなったかと言うと、農奴に戻ることも無く小さな村を預かる小領主になったあの本陣に居た中級悪魔の下について、この村のインプ達のまとめ役になった。出世と言えば出世なんだろうけど、俺の下にいるのは俺と同じやっぱりインプ。
 だらけるは、言う事は効かないは、面倒な事この上ない。
 因みに一緒にいたインプも俺の補佐役として、今でも一緒にいる。
 サテルスも完治したらこの村に行流するそうだから、なんか砦の中にいた顔見知りが集まった感じがある。なんかの思惑があるのか?
「お頭、今日の予定はどうするんだ?」
 いつも一緒にいたインプ。本来インプには名前が無いのだが、俺たちの内部でだけは面倒なので名通称で呼び合う事にした。俺はお頭で、こいつは小頭という勝手な役職をでっちあげての命名だ。いずれサテルスみたいな名前を考えよとは思っているけど、壊滅的にネーミングセンスがなかったので、仮にと言う前提でこれにした。
「んだよ、人がちょっと思い出に浸っているってのに間の悪い奴だ、今日の予定は前から言っているだろ、農奴隊と建築隊に分かれて、お前は農奴、俺は建築のインプを率いるってよ」
 この村は小さいながらも、北から南下してくるまた別の悪魔の国主を抑える重要な役割の村なんだとか・・・。なんでそんな重要な村に、敗残兵みたいな俺たちが集められたのか?想像するに、北から南下を画策している国主にたいして俺たちを救ってくれた国主は実は敵対したくなくて、最前線だけど弱小のインプばかりだから気にしないでね?と言いたいのだろうな。
 中級や上級の悪魔ばかりを配置すると、敵対準備ととられるかもだから・・・。
 なんか悪魔って人を騙して魂を奪ったり、悪魔同士で天地を揺るがす魔法術式を打ち合って世紀末しているイメージだったけど、実はこんなみみっちいやり方もしているみたいだ、今までは農奴として、また雇われ農兵として目の前の事しか見えてなかったけれど、これからは一つの村と言う拠点を足場にしていくからには少しは周りを見ないといけないかもしれない、
 あの時、黒猫に約束させられた言葉。人種族に現れる勇者を人からも悪魔からも、天使や神からも守って守って、守りぬけという約束を守るためには、地力が絶対的に必要になるんだからな。
 あ。そうそう、ファル先生はどうなったかと言うと、なんと彼女は俺が割り当てられた小屋に同居している。これって同棲?とか一瞬ドギマギしたけど、結局羽虫サイズと同居しても、色恋はありえない。
 いっぱい敵を倒して、せめてインプである俺と同じくらいのサイズになってもらえば、その先は、うん、あるかも?はは・・・。
 とりあえず今は悪魔の中で少しは力をつけていかなきゃな。
 まずは仕事をこなして、出世だ。出世して上級悪魔とも渡り合えるように下級、中級と上がっていかなきゃ。
 そんな悠長な事を考えていた俺だったが、そんな甘い考えはすぐに打ち砕かれることになる。
 村に飛び込んできた斥候役として配置していた四つ足の悪魔が、北の国主の同行を伝えたからだ。
「北の国主、出陣!」
と。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...