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第5章 救出作戦で魔王プレイとかちょっとだけ快感♪ 代償は勿論あったけど・・・

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救出作戦から数日。行く宛もなく仕方なく砦に戻った俺たちは、相も変わらず搦め手門の脇にある柵を守っている。あの日以来敵は、大手門側にも搦め手門側にも近づいてもいないようで、戦は膠着状態を継続している。
 本陣に詰めているあの中級悪魔から聞いた話だと、姉のお嬢様悪魔が砦の守将と今後の事を語り合っているとか。最初はその場にいた妹お嬢様は話についていけなくなったのか、それとも暇で仕方がないので目についたインプを片っ端からいびってやろうと思っているのかは知らないが、砦の中をふらふらと歩き廻っているらしい。今はまだ搦め手門側には来ていないが、ずっと来ない事を祈る。
 どうせ向こうはこっちを思い出すことも無いだろうが、こっちは見ただけでムカつくし、何か言われてまた命の危険なんかは味わいたくもない。
 さて、そんな事よりも俺たちの事だが、俺が5つ目の魔石を粉末にした物を飲み切った所で、体に変化が現れた。背中に翼が生え始めたのだ。まだ小さな手のひらサイズの物で、それで空を自在に飛べるって感じではないが、それでも変化は変化だ。将来に期待が持てる。その変化が嬉しかった俺はついつい、いつものインプにも魔石の粉末を渡してやった。こいつは既に自分で取ってきた魔石の粉末を飲み終わっていたけど、俺が余分に持っている魔石については、今まで粉末を渡さなかったんだ。俺より強くなったら嫌だからと言う理由で。だけど、俺の体には、はっきりとインプとは違う悪魔に変わる前兆が現れた。俺が変わるならいつも一緒にいるインプが強くなってもいい。いや一緒にいるなら普通のインプ以上の、グレーターインプ?とかになるのも有りだろう。頼りになる仲間は欲しいところだ。
「さて、そうなるとあの下級悪魔にも魔石の事を伝えるかどうかだけど・・・」
 あの下級悪魔、サテルスなんて大層な名前があったのをこの間初めて知った。因みにインプには名前なんてない。使い捨ての道具は総じてインプで構わないと言った考えからだ。俺だって消しゴムやボールペンに独自の名前なんか付けていなかったから、それと同じような感覚なんだろうな。
 昔読んだライトノベルの中では、名前があるとそれだけで強くなる的な話があったけれど、この世界ではどうなんだろう?固有の名前を持たないのは、下級以下の悪魔で下級から上は全員名前ありって事なら、単に階級を表す称号みたいなものだろうか?
 今まで名前なんか気にしていなかったけど、これからは少し気にするとしよう。
 俺もインプから脱出して下級とか中級になったら、なんて名前を名乗ろうか?前の世界での名前はちょっと好きじゃなかったし。だから今度は自分で好きな名前になってやる。
「ん?なんか周りがざわついているんだが?」
 色々と野望に満ちた想像に頭を使っていたせいで、周りの変化に気づかなかった。なんか絡め手門に配備されている悪魔達が騒めいている。群衆の中に、いきなりトップアイドルが現れて笑顔を振りまいた時に様な熱気と騒めきが感じられる。
 俺が前世で好きだったアイドルは、所謂落ち目のアイドルで、所属グループがオリコンチャートの上位をかっさらった半年後に、未成年飲酒疑惑とやらで週刊誌に叩かれ、グループを離脱。このまま消えるかと思いきや、動画配信で復活の狼煙を上げた不屈のアイドルだった。そんな彼女は俺が前の世界にいる間には3次元でイベントを開催する事が無かった。
 うん、懐かしい・・・。未練。そんな物なかったと思っていたのに、あのアイドルの姉さんがあの先どうなったかは少し気になる。
 見事に返り咲いて、自分を叩いていたアンチの脳天にショックを与えてれば面白いな。
「おいおい、あれが上級悪魔のお嬢様かよ?噂では我儘で領主様も手を焼いた程のはねっ返り娘って話だったけど、全然そんな話じゃないじゃないか?見ろよ真っ白な肌に細っい手足。あれで本当に俺たちと同じ悪魔なんかねぇ、伝説で聞いた神様なんじゃねぇか?」
 柵の近くに来た他の部署の悪魔が、悪魔らしからぬ状態、目をキラッキラ輝かせて、顔周りの鱗を震わせて呟いている。なんか魅了されてない?あの姉も大概、魅了の使い手だったけど、妹もそうなのか・・・。姉妹揃って恐ろしい話だ。
 魅了はゲーム上では相手を混乱させる程度の効果しかなかったけど、この世界では違う。魅了が通じる相手であれば、戦いはそもそも起こらないし、魅了が効果を発揮しているなら、敵が敵で居続ける方が難しい。周りは全て自分奴隷となるのだから。
 だが俺は妹お嬢様悪魔には絶対に魅了されない。命を奪おうとした相手に、そう簡単にに魅了されてたまるかってんだ。
「お~いサテルス~!どこに居る~」
 だから俺は隣のインプの首根っこを押さえつつ、我らが隊長である下級悪魔サテルスを探す。一応この砦に入る前、同じ農場出身者として些かの縁がある気がする下級悪魔サテルス。奴は農場でお嬢様熊の扇動で殺しにかかってくる中級悪魔の御者と対峙して以来、俺と隣のインプに対してだけは、朋輩であるかのような態度を取る時がある。他の中級や上級悪魔の前ではしないが、それは対面を考えての事で俺たちの事をただのインプとは思ってない様な節がある。目には目をじゃないけど、良い縁には誠意を返せってどっかのラノベの御師匠様も言ってたしな。けど、ラノベって主人公も中学生~高校生当たりがメインで、書いているのは元中学生~高校生で現在はおっさんだったりするんだろうか?
 おっさんがいい歳をして中学生主人公を生み出しているのかと思うと、同じ様に中身だけは中学生の俺からしたら引くわ~。
「っと、あいつも殺されそうになったくせに、ちゃっかり魅了されちまってる、恐るべし上級悪魔って事か・・・」
 サテルスも俺と同じようにお嬢様悪魔から殺されそうになった筈なんだが、その時の恐怖は消え失せたか、ポンヤリとした表情で周囲の悪魔達同様に妹お嬢様悪魔を見つめている。
 周囲の本来搦め手門を守る悪魔達も同じようにポンヤリとした顔で彼女に視線を集めている。まさかと思ってこの搦め手門の将軍である上級悪魔を見るが、流石に老練の将軍だ。 いかに上級悪魔の魅了であろうと、たかが小娘の魅力には動じていない。
 ただ、流石に無視も出来ないのか、搦め手門を見渡せる指揮所の様な櫓の上から軽く手を挙げて、妹お嬢様悪魔を歓迎するようなそぶりを見せている。
 それに気づいた妹お嬢様悪魔が軽く将軍を見上げて笑顔を見せた。なんと言うか、虫の様にインプを殺させたお嬢様悪魔でも笑えば可愛げあるじゃないか・・・、とか長閑な事を考えてしまったせいで、理解するのが遅れた。
 搦め手門を守る将軍が掲げていた手の平の先に術式が構築されているのを。
 その術式がかなり複雑で、破壊力も魔力も搦め手門自体を粉微塵にしても充分な威力がある事を・・・。
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