ひかる、きらきら

和紗かをる

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少女襲来 ふたたび

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 この私の姿を過去の私が見れば、青春してるじゃん私って言ってるだろうな。
 そんな思いを少しだけ笑みに表し、シューズを履き変え、戦闘準備を整える。
 今日の練習メニューは明日の交流戦に備えて、試合メインだ。
 私とコウメは組んでダブルス練習。サチはトモ先輩に合流して、これも試合形式の練習だ。
 今日の私たちの相手は個人戦Aに登録している高瀬、カリナペアだ。今時の言い方ならタカカリペアとか言うのかな。
「今日負けてたら、全然届かないよね、初心者から駆け上がるんだから」
「うん、そうね、コウメ、こだわって行こう、いつもの様にね」
 その日の試合は一勝一敗、私たちが個人戦Aのペアに勝つのは快挙だけど、二戦目はボロ負けだった。地力が違うのかな。些細な所で息が合わずミスがミスを呼び建て直しも出来ずに敗北。
 これは考えなきゃいけない。交流試合であって勝っても県大会、全国大会って進めるわけじゃないけれど、数少ない試合のチャンスだ。
 相手が個人戦Aランクなんだから負けても仕方ない。明日は個人戦Bランクなんだから、しっかりと練習の成果を出せれば良いところまでいける。そんな声も心の中にある。
 でもそれじゃあ嫌だって思っちゃう自分がいる。
 いつから私はこんな強欲になったんだろう?
 青春を感じたいと思っただけなのに。
「二人で動くときにね、なんか動きが重なるときがあるんだよね、シャトルは一つなのに二人が動いちゃったらがら空きになる場所が出来るのがよくないと思うの」
 早めに終わった部活の後に、二人でミーティング。
 今日は我が家でお泊りして。一緒に大会のある高校まで向かう予定だ。お互いの家には言った事あるけどお泊まりは初めてだ。
 妹のカナタは今日はおかあさんの部屋に移動してもらってる。カナタがいたら五月蝿くてミーティングどころじゃなくなっちゃう。
「それは分かるよ、でもさシャトル来たら考えるより先に体動いちゃうよね、考えて動くなんてそんな器用な動き出来ないよぉ」
 考えて動けるほど試合の速度は遅くない。何回も何回も反復練習して身についた動きが勝手に出ちゃうのが試合だ。考えるのはサーブの時位で、後は体が勝手に動いている。
「だよねぇ、特にひかるは本能型っぽいし、考えるの苦手だよねぇ」
「うんうん、苦手」
「うちはどちらかで言えば思考型なんだけど、それでもフォロー出来る実力まだない」
 どん詰まりだ。素人二人で頭を突き合わせても答えが出るものじゃないって事か。
「やっぱりここは経験者の意見が必要なのかも、ヒカガミ先輩とか」
 合宿限定のコーチだったヒカガミ先輩だったけど、あれから忙しい時間をやりくりして二週に一回は来て鬼コーチをしてくれる予定になっている。次に来るのは交流試合が終わった後、秋大会の選手選考の時だ。
「連絡先知らない・・・。」
「私も・・・。」
 ヒカガミ先輩の連絡先は上級生なら知っているかもしれないけど、上級生に聞くのは気が引ける。こっそりミーティングしていたりお泊り会してるっての言っていない。
やっぱり、詰まっちゃう。
「ひかる姉ちゃ~ん、お客様ですよ~」
 下からカナタの声がする。
 こんな時間に来るなんて誰だろう?近くに住んでいる知り合いと言えばユッコだけど、彼女はあの一件以来夏休み期間中夜の外出禁止になったそうな。ヒカガミ先輩の嘘がばれたというわけでもないらしいけど、うっすら何かを感じた両親にいわれた外出禁止令に素直にユッコは従っているみたい。だからこんな時間に来るのはユッコじゃない。
「とりあえず、ちょっと行ってくるね」
 トントントン
 私生活でも爪先立ちを心がけている。ふくらはぎが辛いけど、効果は出てるから止めるつもりは無い。今は鍛えられる時には鍛えたい。
「誰~?こんな時間に珍しい」
 階段を降りた先にある玄関に人が一杯いる。開いたドアの向こうにも数人。
「なに、なになになに?どうしたの、なんなの?」
 訪問者はどう考えても、私たちとはかけ離れた黒いスーツの年齢のおじ様達。
 我が家に夜訪問してくるには、非常識すぎる人たちだ。
「ちょっと待って、なんかこのシチュエーションに覚えがあるような」
 突然現れるスーツ姿の大人の人達。ってそんなのあの合宿の日と同じじゃん。
「そういう事は、タフィちゃん!」
「はぁい♪」
 大人スーツ軍団の谷間からひょこっと手を上げるタフィちゃん。別れてから数日だけど、なんか涙が出るくらいに懐かしい。
「ひっさしぶり~、元気だった?あっそういえば足足、足は大丈夫?病院行ったって聞いたけど、もう痛くないの?完治した?」
「ちょっと落ち着いてひかる、もう大丈夫だよ、ほらっ」
 ぴょんとその場で飛び上がるタフィちゃん、直立からの軽いジャンプなのに、カナタの肩くらいまで飛ぶ。相変わらずの跳躍力は健在で、足の怪我なんか微塵も感じさせない。
「あっそうだ、コウメ!コウメも今いるんだよ、コウメ~!」
 私のご近所迷惑考えない大声にびっくりした顔で、警戒心マックスバージョンのコウメが降りてくる。
「えっえっ、本当?本当に、わ~」
 途中から勢いをつけてタフィちゃんに近寄るコウメ。目の端に涙が浮かんでいるのはたぶん見間違いじゃない。もしかしたら私の目も潤んでいるかも。
「こんばんはコウメ」
「???」
 普通に挨拶するタフィちゃんに、コウメの顔が?でいっぱいになる。
 あっ
「タフィちゃんタフィちゃん、英語英語」
 そういえばタフィちゃんコウメの前では英語しか分からない謎ガール演出してたんだ。普通に日本語で挨拶されて戸惑ったにちがいない。
「姉のタフィから話は聞いています、日本で大変お世話になったそうで、私は妹のソフィです」
 ペぺこりとお辞儀するタフィちゃん改め、ソフィちゃん。下げた頭が上がった時には悪戯笑顔だったのですぐに嘘だと分かった。
「えっごめんなさい、うちてっきりお姉さんかと思ってて」
 とさらに混乱するコウメを見て二人で爆笑した。
「え?え?え~?」
 ちょっと笑いすぎたかも
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