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交流試合前日
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色々あり過ぎた夏合宿が終わり、私たちは交流試合に向けて動き出した。
あの日以来ストイックにバドミントンに打ち込むコウメは、Bチーム団体のシングルスの代表になり、私は個人戦Bのダブルスでコウメと組んで出場することになった。サチは一年初心者組として唯一トモ先輩と組んでの個人戦Aに出場登録している。誰でも合わせる事ができるサチは経験者組よりも組みやすいのだそうだ。
「ん~今日も暑いなぁ~」
体育館入り口から中の温度は劇的に変わる。たぶん外より十五度は高い。中からの風は汗を引かせるどころか、更に汗を誘う熱風だ。
熱風に混じって色々なにおいもする。シューズのゴムの匂いや、制汗用スプレーや、筋肉痛を抑えるシップの特徴的な匂い。
臭いって言うのとはちがって、部活動をしていなければ嗅ぐ事も無かっただろう匂いだ。
なんか不思議。
変な匂いばっかりなのに、なんかこれがもう普通の匂いに思えちゃう。
部活に入って四ヶ月が過ぎ、その間休みはゼロ。もうここが私の高校生活の中心と言っても過言ではない。その間に試験が二回あったはずなんだけど、記憶の中ではほぼ残っていない。赤点じゃなければ今は部活一直線だ。
「そんな所で突っ立てると邪魔だよ、ひかる」
高瀬さんを筆頭に経験者組が中に入っていく。経験者組は合宿中に怪我をしてそのまま退部した人が居て人数が減り、さらにカリナちゃんが選手じゃなくマネージャーに転向になって、少し数が減った。
初心者組は残っているのは私、コウメ、サチの三人で変わりが無い。本当は希望している人は居たらしいけど、こっそり私たち初心者組の練習を覗き見て、恐れをなして辞退していったらしい。
もしその人たちが全員入部していれば、人数的に経験者組と張り合えたかも?とか思うけど、せっかく真剣に取り組もうって時に、練習がきつそうだからって辞退した人に足を引っ張られたくない。
自分で言うのもあれだけど、人間楽な方法があれば、自然とそっちに取り込まれてしまうものだから。
「おっ早いねひかる、今日の準備は万端かな?」
相変わらずのサチ。
地獄の合宿でも落ち前のキャラはぶれず、そのせいで大抜擢されたスーパールーキーだ。これで高瀬さんより評価高いとか不思議すぎる。
「どうしたのひかる、練習まだ?」
サチの後ろからコウメが現れる。着ているのは試合用のユニフォームにも使えそうな涼しげな半袖の襟付きポロシャツだ。合宿後すぐに通販で買ったって言っていた。お揃いでシューズも買って気合十分。タフィちゃんと別れて数日は落ち込んで心ここにあらずだったのに、こっちらから何かするより前に一人で立ち直ってた。
ただ立ち直っただけじゃなくて、前から真面目だったけど、それに磨きがかかり、練習では真面目すぎて怖い時もある。
少し、張り詰めすぎてないか心配。
あんな試合を見せ付けられれば、しかたないかもだけど。
タフィちゃんといえば、私には大変な借りがある。精神的にも物理的にもだ。タフィちゃんのアドバイスに従ってみたら見る見るシャトルの扱いが上手くなり、ちゃんとバドミントンが出来る様になった。
物理的にはラケット。
あの時に借りたラケットを返す事が出来ずにタフィちゃんと会えなくなってしまった為、どうしようかと悩んでいたところ、学校宛に大人スーツ集団を通じてメッセージが届いたのだ。
次会う時まで借しておくよ、ちゃんと使ってうまくなっておくように、と。
大変な約束を押し付けられた。
あのレベルに至るまで、どれだけの時間が必要なんだろう?
ただ観戦にするだけじゃない、同じステージに立てる様になるまでには。
と、そんな事を思えば、私もコウメに負けず劣らず燃えている。
今はサチやカリナちゃん、高瀬さんより低い実力と評価だけど、立ち止まらずに走らなきゃバドミントンしている間に届かない。
「よしっ頑張ろうね二人とも」
「うん、せっかく試合出れるんだし、何か残せる結果を出したいよね」
「うちも頑張る、明日も明後日も頑張ろう!」
三人で並んで独特の匂いが充満する体育館に入る
あの日以来ストイックにバドミントンに打ち込むコウメは、Bチーム団体のシングルスの代表になり、私は個人戦Bのダブルスでコウメと組んで出場することになった。サチは一年初心者組として唯一トモ先輩と組んでの個人戦Aに出場登録している。誰でも合わせる事ができるサチは経験者組よりも組みやすいのだそうだ。
「ん~今日も暑いなぁ~」
体育館入り口から中の温度は劇的に変わる。たぶん外より十五度は高い。中からの風は汗を引かせるどころか、更に汗を誘う熱風だ。
熱風に混じって色々なにおいもする。シューズのゴムの匂いや、制汗用スプレーや、筋肉痛を抑えるシップの特徴的な匂い。
臭いって言うのとはちがって、部活動をしていなければ嗅ぐ事も無かっただろう匂いだ。
なんか不思議。
変な匂いばっかりなのに、なんかこれがもう普通の匂いに思えちゃう。
部活に入って四ヶ月が過ぎ、その間休みはゼロ。もうここが私の高校生活の中心と言っても過言ではない。その間に試験が二回あったはずなんだけど、記憶の中ではほぼ残っていない。赤点じゃなければ今は部活一直線だ。
「そんな所で突っ立てると邪魔だよ、ひかる」
高瀬さんを筆頭に経験者組が中に入っていく。経験者組は合宿中に怪我をしてそのまま退部した人が居て人数が減り、さらにカリナちゃんが選手じゃなくマネージャーに転向になって、少し数が減った。
初心者組は残っているのは私、コウメ、サチの三人で変わりが無い。本当は希望している人は居たらしいけど、こっそり私たち初心者組の練習を覗き見て、恐れをなして辞退していったらしい。
もしその人たちが全員入部していれば、人数的に経験者組と張り合えたかも?とか思うけど、せっかく真剣に取り組もうって時に、練習がきつそうだからって辞退した人に足を引っ張られたくない。
自分で言うのもあれだけど、人間楽な方法があれば、自然とそっちに取り込まれてしまうものだから。
「おっ早いねひかる、今日の準備は万端かな?」
相変わらずのサチ。
地獄の合宿でも落ち前のキャラはぶれず、そのせいで大抜擢されたスーパールーキーだ。これで高瀬さんより評価高いとか不思議すぎる。
「どうしたのひかる、練習まだ?」
サチの後ろからコウメが現れる。着ているのは試合用のユニフォームにも使えそうな涼しげな半袖の襟付きポロシャツだ。合宿後すぐに通販で買ったって言っていた。お揃いでシューズも買って気合十分。タフィちゃんと別れて数日は落ち込んで心ここにあらずだったのに、こっちらから何かするより前に一人で立ち直ってた。
ただ立ち直っただけじゃなくて、前から真面目だったけど、それに磨きがかかり、練習では真面目すぎて怖い時もある。
少し、張り詰めすぎてないか心配。
あんな試合を見せ付けられれば、しかたないかもだけど。
タフィちゃんといえば、私には大変な借りがある。精神的にも物理的にもだ。タフィちゃんのアドバイスに従ってみたら見る見るシャトルの扱いが上手くなり、ちゃんとバドミントンが出来る様になった。
物理的にはラケット。
あの時に借りたラケットを返す事が出来ずにタフィちゃんと会えなくなってしまった為、どうしようかと悩んでいたところ、学校宛に大人スーツ集団を通じてメッセージが届いたのだ。
次会う時まで借しておくよ、ちゃんと使ってうまくなっておくように、と。
大変な約束を押し付けられた。
あのレベルに至るまで、どれだけの時間が必要なんだろう?
ただ観戦にするだけじゃない、同じステージに立てる様になるまでには。
と、そんな事を思えば、私もコウメに負けず劣らず燃えている。
今はサチやカリナちゃん、高瀬さんより低い実力と評価だけど、立ち止まらずに走らなきゃバドミントンしている間に届かない。
「よしっ頑張ろうね二人とも」
「うん、せっかく試合出れるんだし、何か残せる結果を出したいよね」
「うちも頑張る、明日も明後日も頑張ろう!」
三人で並んで独特の匂いが充満する体育館に入る
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