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ヒカガミ地獄と料理奉行
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わずか数時間前にコウメの日傘で登校してきたのが嘘のように、現実が違いすぎる。
自分の下に広がる、人型の水溜り。
私の汗だ。
合宿が始まって三時間、延々と腕立て、腹筋、背筋を続けている。最初の百回までは数えていたけど、その後はもう惰性でしかない。
風が入らないように締め切った体育館は、体感温度で確実に五十度は超えていると思う。想像してみてほしい、サウナの中での全力の筋トレを。延々と終わりが見えない監視つきの苦行を。
先輩の先輩の一人。
ヒカガミ先輩が私たち一年全員の筋トレコーチだ。
ウェーブのかかった茶髪の大学生さんで、大学ではテニスサークルに入ったらしいけど、あまりのだるさに直ぐやめて、どっかの実業団のバドミントン部に間借りしている猛者で、トモ先輩いわく、去年の夏にも来たとっても後輩思いの大先輩みたい。
私としてはこの地獄の状態が、私たち初心者組三人だけじゃなく、いつもは距離を置いてる経験者組も一緒になってる事だけが、耐えられる理由かもしれない。
筋トレや走りこみだけなら、この数ヶ月経験者組に負けないくらいにやってきた。コートの中の動きとか、シャトルの正確性とかは全然だけど、今なら同じ土俵で戦える。
見れば経験者の中でも数人は気持ち悪そうに顔をしかめている。それでも動きを止めていないのは私への対抗心よりも、憧れの先輩の前で醜態をさらしたくないプライドよりも、私と同じく惰性だろう。全員で同じことをして、自分が最初にギブアップを言い出すことが出来ない空気みたいなもの
コウメもサチもがんばっている。
最初、サチはいつもの調子で余裕をもってやっていたみたいだけど、さすがのヒカガミ先輩。そんなサチに気づいて目を離さない。
少しでも気を抜くと、手を叩いてペースアップを促してくる。
そう、この時間と空間は完全にヒカガミ先輩の支配下にあるんだ。
自分のペースを守るとか許されない。
ヒカガミ先輩のリズムを崩したらペースアップする事になる。
誰も気を抜けない。経験者だろうが、初心者だろうがそこは同じだ。
「はいっ、そこまで、全員、十分休憩したら体育館裏に集合」
一瞬弛緩した空気が流れたが、ヒカガミ先輩の一睨みで全員がきりっと動き出す。
その日は夕陽が沈むまで、ダッシュ、筋トレ、ダッシュ、筋トレ、筋トレ、ロングランとヒカガミ地獄が続くのであった。
その地獄が終わったのは、夕食準備の時間。
この合宿は、経費の節約の為に一部の食事は生徒が材料を持ち寄り、自炊をするのが伝統なんだって。
当たり前らしくその役割は自動的に一年生が担う事になる。
OGの諸先輩方々、三年生、二年生の順番で校内のシャワールームを使っている間に、一年生は自炊の準備だ。
とはいえ、どんなに頑張った所で、五十名近くを満足させることができる料理なんて、ひよっこ一年生に出来るわけがない。唯一の経験で言えば林間学校で経験したカレーが近似値だね。
野菜を切ってぶち込み市販のルーを割ってぶち込む。ただそれだけで、だれでもある程度の味になるカレー。本場インドの人は日本のカレーを和食と感じる位に日本化しているみたいだけれど、そんなの関係なく私は言いたい。
ありがとう、カレーよ。
こんな疲れてヘロヘロで、汗も出てくるのを辞退している状態での料理なんて、普通の神経で耐えられるはずがない。
お手軽カレーよ万歳だ。
このカレーに文句を言うやつが居たら、三回まわってヨガフレイムでも吐いていれば良い。ヨガフレイムが何かは知らないけど、さっきからサチがカレールーに描かれた炎を吐くキャラクターにマジ受けして、ヨガフレイムと連呼しているせいで、ついつい心の中で思い浮かべてしまった。
疲れてるな私。ってか今この調理実習室にいて疲れていない一年生はいない筈。見た目的にサチだけは元気にはしゃいでいるけど。
とにかく、料理料理。
戦力にならないサチは放っておいて、私は野菜の皮むきに取り掛かる。
家族分を手伝った経験から考えると量が半端ない。
カレー料理屋さんの下働きになったつもりで、ニンジンの皮むきを延々と行う。
五十本位あるんじゃないだろうか?オレンジの色に頭がくらくらして来るが、終わらないニンジンも無いと唱えて、黙々と手を動かす。
半分くらい終わった時にふと視線を感じて顔を上げると、すぐ傍でジャガイモの皮むきをしている少女と目があった。
ニンジンと違ってジャガイモは丸だから、結構面倒くさい。そんな面倒くさい野菜をその少女は器用にすばやく皮を剥いていく。
手際いいな~
にっこりと笑顔を向けてくる少女。
経験者組の誰かだとは思うんだけど、名前が出てこない。そもそも私が経験者組で覚えている名前は対戦した事がある高瀬さんくらいだ。
「ひかるって、料理はよくするの」
初心者組はわずか三人だから、向こうは私の名前を知っていた。ってか経験者組みだけでなく、部員全員と仲良しなサチが私の名前を部活中もよく出してるから、知らない人のが少ないのかも。
「料理ね~好きではやらないけど、家では無理やり手伝わされてるかも」
「だからか~なんか慣れて見えた、こっちは半分以上戦力外」
また、にっこり。
彼女の背後では、仏頂面で野菜をにらみ付けている高瀬さん等数名。
あ~、これはまずい。
この量を捌くのに、戦力外が多すぎる。
「まずいよね、これで先輩達が食べるのに間に合わなかったら酷いことになりそう」
「うん、そうかも・・・食べ物の恨みは恐ろしいってね」
餓鬼の様に飢えた先輩方に囲まれ、泣きながら料理する自分が想像できる。
「これは、ちょっとチームワーク出さないと無理かも?」
左右を見て、戦力と戦力外を見極める。
高瀬さん等、挑戦しても出来ないグループ。
サチみたいに最初から真面目に参加していないグループ。
手は遅いけど着実に作業しているコウメみたいなグループに分けられる。
どうやら料理できそうな感じなのは、私と彼女だけみたいだ。
「仕切る?」
一応聞いてみた。
なんとなく初心者組は経験者組をたてる、みたいな雰囲気があったから。
「いいよ~ここはひかるが仕切って、サチに言うこと聞かせられるのはひかるだけし」
サチめ。
けっこう広く浅く迷惑をかけてるのかな?こんな所でも私に迷惑をかけくる。
「はぁ~しょうがないよね、じゃあ皆ちょっと聞いてね」
数人で班を作り、それぞれに役割を振り分ける。野菜を切る人。ご飯を炊く人。カレールーを溶け易いように細かく刻む人。とにかく残り時間から考えて最適な人を配置する。
ちなみに結局戦力外だったサチは、先輩方を足止めする役目として派遣された。
適材適所だ。サチならなんとかして時間を稼ぐだろう。
「よっし、なんとかなるかも?」
それぞれの力量に合わせて作業を分担する。限られた時間でなんとか形にするにはこの方法しかない。
普段は私の言う事なんて聞いてもいないだろうし、存在自体も抹消状態だろうに、今だけは素直に作業にかかる経験者組の面々。コウメもルーの入った大鍋を魔女みたいにかき混ぜている。
「うん、良い匂い」
先ほど話していた彼女が、コウメの背後からルーを確認すると幸せそうににっこり。うん笑顔のきれいな子だ。名前は知らないけど・・・。
「じゃあ、台車に乗せて運ぼうか、残った班はお皿と食器をお願いいたします」
私に言われる事にちょっと不満そうな顔をしながらも皆が動く。
ぎりぎりだ。本当にぎりぎりだった。
サチの時間稼ぎのお陰で全員がそろう時間にはカレーが食膳に並んだ。
「よかったね、ひかるは今後、料理奉行だね」
「え~、なんか嫌だ~」
「うふふ、明日からもよろしくね、あっあたしの事はカリナって名前で呼んでね、料理奉行」
綺麗な笑顔を残してカリナはシャワールームへと去っていった。なんか、経験者組で毛嫌いしてたけど、やっぱり同じ一年。仲良くできるよね。
「ん?」
背後を振り返ると、シャツの裾をコウメが握っていた。
「どしたのコウメ」
「うちも料理がんばったんだけど、ひかるだけ役職つき?」
「いや、ほしかったわけじゃないし」
なんか、寂しがりの子供が嫉妬してるみたいで可愛い。
思わずナデナデしたくなる。
「ちょっとひかる~」
思った時にはつい手が出てしまった。
シャワー浴びてないからちょっろごわごわしている。仕方ないよね、朝から汗まみれだったから。気になって私も自分の髪の毛を触ってみると、コウメ以上にごわごわしていた。
「ど~ん、早くお風呂いこうよ~」
擬音つきでサチが体当たりしてくる。
本当にサチが元気だなぁ。
この体力はどこから来るのだろう。
私より華奢でスタイルいいのに。
「はいはいサチは着替え持ってきてるの?」
おかんコウメ再登場だ。
「あ、忘れた、まっいっか」
「よくないよ、着替えなしで教室までマッパで帰る気?」
「え?だめ、どうせ女子だけだし、問題ないっしょ」
「あるに決まってるっ」
おかんコウメと、私の声がハモる。
サチなら本気でやりかねん。
真っ暗な夜の学校。
耳が痛くなるくらいの静寂の中、ポツリポツリと水音がしたかと思うと、背後には全裸で現れるサチ。
新しい伝説をつくっちゃいそうだ。
「それで風邪引いたらどうするの?明日も練習きついんだよ、学校ってコンクリートの塊だから意外に夜は寒く感じるって言うし」
おかんコウメ~気にするのはそこか~?
かくして私たちは一度寝室扱いになっている教室に戻り、コウメの着替えを確保してシャワールームに向かうこととなった。
ちなみに寝室扱いの教室には机をくっつけた上にレンタル布団を重ねた簡易ベッドが並ぶ最低限仕様だ。寝れるなら何でもよいの精神だ。
自分の下に広がる、人型の水溜り。
私の汗だ。
合宿が始まって三時間、延々と腕立て、腹筋、背筋を続けている。最初の百回までは数えていたけど、その後はもう惰性でしかない。
風が入らないように締め切った体育館は、体感温度で確実に五十度は超えていると思う。想像してみてほしい、サウナの中での全力の筋トレを。延々と終わりが見えない監視つきの苦行を。
先輩の先輩の一人。
ヒカガミ先輩が私たち一年全員の筋トレコーチだ。
ウェーブのかかった茶髪の大学生さんで、大学ではテニスサークルに入ったらしいけど、あまりのだるさに直ぐやめて、どっかの実業団のバドミントン部に間借りしている猛者で、トモ先輩いわく、去年の夏にも来たとっても後輩思いの大先輩みたい。
私としてはこの地獄の状態が、私たち初心者組三人だけじゃなく、いつもは距離を置いてる経験者組も一緒になってる事だけが、耐えられる理由かもしれない。
筋トレや走りこみだけなら、この数ヶ月経験者組に負けないくらいにやってきた。コートの中の動きとか、シャトルの正確性とかは全然だけど、今なら同じ土俵で戦える。
見れば経験者の中でも数人は気持ち悪そうに顔をしかめている。それでも動きを止めていないのは私への対抗心よりも、憧れの先輩の前で醜態をさらしたくないプライドよりも、私と同じく惰性だろう。全員で同じことをして、自分が最初にギブアップを言い出すことが出来ない空気みたいなもの
コウメもサチもがんばっている。
最初、サチはいつもの調子で余裕をもってやっていたみたいだけど、さすがのヒカガミ先輩。そんなサチに気づいて目を離さない。
少しでも気を抜くと、手を叩いてペースアップを促してくる。
そう、この時間と空間は完全にヒカガミ先輩の支配下にあるんだ。
自分のペースを守るとか許されない。
ヒカガミ先輩のリズムを崩したらペースアップする事になる。
誰も気を抜けない。経験者だろうが、初心者だろうがそこは同じだ。
「はいっ、そこまで、全員、十分休憩したら体育館裏に集合」
一瞬弛緩した空気が流れたが、ヒカガミ先輩の一睨みで全員がきりっと動き出す。
その日は夕陽が沈むまで、ダッシュ、筋トレ、ダッシュ、筋トレ、筋トレ、ロングランとヒカガミ地獄が続くのであった。
その地獄が終わったのは、夕食準備の時間。
この合宿は、経費の節約の為に一部の食事は生徒が材料を持ち寄り、自炊をするのが伝統なんだって。
当たり前らしくその役割は自動的に一年生が担う事になる。
OGの諸先輩方々、三年生、二年生の順番で校内のシャワールームを使っている間に、一年生は自炊の準備だ。
とはいえ、どんなに頑張った所で、五十名近くを満足させることができる料理なんて、ひよっこ一年生に出来るわけがない。唯一の経験で言えば林間学校で経験したカレーが近似値だね。
野菜を切ってぶち込み市販のルーを割ってぶち込む。ただそれだけで、だれでもある程度の味になるカレー。本場インドの人は日本のカレーを和食と感じる位に日本化しているみたいだけれど、そんなの関係なく私は言いたい。
ありがとう、カレーよ。
こんな疲れてヘロヘロで、汗も出てくるのを辞退している状態での料理なんて、普通の神経で耐えられるはずがない。
お手軽カレーよ万歳だ。
このカレーに文句を言うやつが居たら、三回まわってヨガフレイムでも吐いていれば良い。ヨガフレイムが何かは知らないけど、さっきからサチがカレールーに描かれた炎を吐くキャラクターにマジ受けして、ヨガフレイムと連呼しているせいで、ついつい心の中で思い浮かべてしまった。
疲れてるな私。ってか今この調理実習室にいて疲れていない一年生はいない筈。見た目的にサチだけは元気にはしゃいでいるけど。
とにかく、料理料理。
戦力にならないサチは放っておいて、私は野菜の皮むきに取り掛かる。
家族分を手伝った経験から考えると量が半端ない。
カレー料理屋さんの下働きになったつもりで、ニンジンの皮むきを延々と行う。
五十本位あるんじゃないだろうか?オレンジの色に頭がくらくらして来るが、終わらないニンジンも無いと唱えて、黙々と手を動かす。
半分くらい終わった時にふと視線を感じて顔を上げると、すぐ傍でジャガイモの皮むきをしている少女と目があった。
ニンジンと違ってジャガイモは丸だから、結構面倒くさい。そんな面倒くさい野菜をその少女は器用にすばやく皮を剥いていく。
手際いいな~
にっこりと笑顔を向けてくる少女。
経験者組の誰かだとは思うんだけど、名前が出てこない。そもそも私が経験者組で覚えている名前は対戦した事がある高瀬さんくらいだ。
「ひかるって、料理はよくするの」
初心者組はわずか三人だから、向こうは私の名前を知っていた。ってか経験者組みだけでなく、部員全員と仲良しなサチが私の名前を部活中もよく出してるから、知らない人のが少ないのかも。
「料理ね~好きではやらないけど、家では無理やり手伝わされてるかも」
「だからか~なんか慣れて見えた、こっちは半分以上戦力外」
また、にっこり。
彼女の背後では、仏頂面で野菜をにらみ付けている高瀬さん等数名。
あ~、これはまずい。
この量を捌くのに、戦力外が多すぎる。
「まずいよね、これで先輩達が食べるのに間に合わなかったら酷いことになりそう」
「うん、そうかも・・・食べ物の恨みは恐ろしいってね」
餓鬼の様に飢えた先輩方に囲まれ、泣きながら料理する自分が想像できる。
「これは、ちょっとチームワーク出さないと無理かも?」
左右を見て、戦力と戦力外を見極める。
高瀬さん等、挑戦しても出来ないグループ。
サチみたいに最初から真面目に参加していないグループ。
手は遅いけど着実に作業しているコウメみたいなグループに分けられる。
どうやら料理できそうな感じなのは、私と彼女だけみたいだ。
「仕切る?」
一応聞いてみた。
なんとなく初心者組は経験者組をたてる、みたいな雰囲気があったから。
「いいよ~ここはひかるが仕切って、サチに言うこと聞かせられるのはひかるだけし」
サチめ。
けっこう広く浅く迷惑をかけてるのかな?こんな所でも私に迷惑をかけくる。
「はぁ~しょうがないよね、じゃあ皆ちょっと聞いてね」
数人で班を作り、それぞれに役割を振り分ける。野菜を切る人。ご飯を炊く人。カレールーを溶け易いように細かく刻む人。とにかく残り時間から考えて最適な人を配置する。
ちなみに結局戦力外だったサチは、先輩方を足止めする役目として派遣された。
適材適所だ。サチならなんとかして時間を稼ぐだろう。
「よっし、なんとかなるかも?」
それぞれの力量に合わせて作業を分担する。限られた時間でなんとか形にするにはこの方法しかない。
普段は私の言う事なんて聞いてもいないだろうし、存在自体も抹消状態だろうに、今だけは素直に作業にかかる経験者組の面々。コウメもルーの入った大鍋を魔女みたいにかき混ぜている。
「うん、良い匂い」
先ほど話していた彼女が、コウメの背後からルーを確認すると幸せそうににっこり。うん笑顔のきれいな子だ。名前は知らないけど・・・。
「じゃあ、台車に乗せて運ぼうか、残った班はお皿と食器をお願いいたします」
私に言われる事にちょっと不満そうな顔をしながらも皆が動く。
ぎりぎりだ。本当にぎりぎりだった。
サチの時間稼ぎのお陰で全員がそろう時間にはカレーが食膳に並んだ。
「よかったね、ひかるは今後、料理奉行だね」
「え~、なんか嫌だ~」
「うふふ、明日からもよろしくね、あっあたしの事はカリナって名前で呼んでね、料理奉行」
綺麗な笑顔を残してカリナはシャワールームへと去っていった。なんか、経験者組で毛嫌いしてたけど、やっぱり同じ一年。仲良くできるよね。
「ん?」
背後を振り返ると、シャツの裾をコウメが握っていた。
「どしたのコウメ」
「うちも料理がんばったんだけど、ひかるだけ役職つき?」
「いや、ほしかったわけじゃないし」
なんか、寂しがりの子供が嫉妬してるみたいで可愛い。
思わずナデナデしたくなる。
「ちょっとひかる~」
思った時にはつい手が出てしまった。
シャワー浴びてないからちょっろごわごわしている。仕方ないよね、朝から汗まみれだったから。気になって私も自分の髪の毛を触ってみると、コウメ以上にごわごわしていた。
「ど~ん、早くお風呂いこうよ~」
擬音つきでサチが体当たりしてくる。
本当にサチが元気だなぁ。
この体力はどこから来るのだろう。
私より華奢でスタイルいいのに。
「はいはいサチは着替え持ってきてるの?」
おかんコウメ再登場だ。
「あ、忘れた、まっいっか」
「よくないよ、着替えなしで教室までマッパで帰る気?」
「え?だめ、どうせ女子だけだし、問題ないっしょ」
「あるに決まってるっ」
おかんコウメと、私の声がハモる。
サチなら本気でやりかねん。
真っ暗な夜の学校。
耳が痛くなるくらいの静寂の中、ポツリポツリと水音がしたかと思うと、背後には全裸で現れるサチ。
新しい伝説をつくっちゃいそうだ。
「それで風邪引いたらどうするの?明日も練習きついんだよ、学校ってコンクリートの塊だから意外に夜は寒く感じるって言うし」
おかんコウメ~気にするのはそこか~?
かくして私たちは一度寝室扱いになっている教室に戻り、コウメの着替えを確保してシャワールームに向かうこととなった。
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