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屈辱かも? もう疲れたよ
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それからの約一ヶ月は、筋肉痛と休みたい気持ちとの、せめぎあいだった。
根性は・・・私にはあんまりなかったみたい。
それでも休んだのは、部活三日目の酷い筋肉痛から熱が三十八度超えを記録し、お母さんに学校を休まされた時だけで、それ以外は何とかコウメやサチの絶え間ない、脅しにも似た激励のおかげで部活に出て来れてる。
私が所属している部活、バドミントン部は公式な休みは大会の次の日と、お正月の三が日だけ。それ以外は夏休みとか秋休みとか関係なく毎日が活動日だ。
夏には、合宿もあるらしい。
入学前なら、合宿と言う言葉に、なんか甘酸っぱいような香りを感じていたんだけど、今となっては合宿が恐怖でしかない。
普段は四時間くらいの部活が、十二時間位に増えるし、しかも場所は高原のペンションとか貸し別荘ではなく、夏休みの誰もいない学校に布団を持ち込んでのお手軽コースだ。
最低限のお金しかかからないのは良いけど、はぁ夢がない。
夢がないのは、部活の内容もそうだ。
バトミントンのイメージと言えば、真っ白いシャトルを追ってラケットを振るイメージなんだけど。一ヶ月の間で私はまだシャトルを打った事がない。
ラケットも部に合った古い、やたらフレームの重い奴を先輩の号令と共に振るだけだ。
それでも最初に握り方を教わったり、素振りを教えてもらった時には、少しだけバイブス上がった。
ラケットが空気を切る、シュッと言う音も、力の入れ方、手首の返し方で様々な音になるのを初めて知った。
この上、先輩たちがコートの中でシャトルを打つようなバシュっと言う音が出せたら、もっと楽しくなるのかもしれない。
だけど、まだその時は来ていない。
入ってから知ったんだけど、私たちの入ったバトミントン部は県内では中堅かやや上位の実力がある部で、去年は個人戦で関東大会、ダブルスでは全国まで行ったみたい。団体はちょっと振るわなくって県大会どまり。
それも中心選手が全国大会後の疲れから、半数が一年生だったからという話だ。
すごいな~、今の私からしたら天まで届きそうな話。
シャトルを打った事も無い私に、試合とか全然だ。ルールもまだ把握できてないし。
その点は今のところコウメもサチも一緒だった。
二人とも私より体力もあって練習にもついて行ってるけど、シャトルを打ってないのは一緒だ。
私たち三人は初心者組って分け方で、ずっと基礎練習をさせられている。初心者がいれば経験者もいるわけで、一年生で八人の経験者がいる。初心者三人、経験者八人の計十一人の一年生がいるって事。
経験者組と初心者組は練習が別なので、私は経験者組とは話したことが無い。なんか初心者って事で引け目もあるし、同じ初心者組にコウメとサチと一緒にいて楽しいし。
「一年集まれ~」
二年生のトモ先輩がラケットを振って、体育館の隅で素振りをしている初心者組と、コートを使ってステップ確認をしていた経験者組を集める。
トモ先輩は後輩の教育係りを任されている二年生だ。レギュラーではなく、去年の団体戦県大会敗退の当事者らしい。
優しい物腰なんだけど、吐く言葉の内容は辛辣だったりして、天然ドライと私はひっそりと命名している。
「今日で一月ちょっと、そろそろ一年生の実力を見とけって先輩方が言うからね、一年だけでちびっと軽く試合やって欲しいんだ」
はっ試合ですと?何言ってるんですかこの先輩。
「トモちゃんせんぱ~い、経験者の子たちは良いけど、あたしたちもですか?」
結構きつい基礎練習で私は息が上がっているが、相変わらずサチはそれを感じさせない。明るく元気な声だ。
「だよね~、でも一年の実力を見るなら全員って先輩が言うからまぁ混合でやるしないよね、初心者はダブルス限定で経験者はサポートもふくめてシングルスもダブルスも両方で」
なんという、無茶な事を言う先輩方だ。
これってパワハラっぽくない?
コウメやサチはまだしも、私は相手にもならないだろう。めためた、ボロボロに負けるのが判りきっている。
そこまでまぁ考えて、私は気づいてしまう。
あ、これってリストラ的な首切りって奴かも?
経験者と初心者の絶望的な差を実感させて、努力は無駄って思い知らせ、自主的に辞めさせる為に。そうして残った経験者にもっと時間をかけて育てる的な。
なんだよ、それ。
「ひかる?」
「ごめんコウメ、なんか言った?」
「あのね、一年生って十一人でしょ、そしたら一人あまるじゃない」
嫌な予感がする。
いやいや嫌な予感しかしない。
「う、うん」
「それでね、いろいろ話し合ったみたいだけど、ひかるだけ一人になっちゃったの」
私がぼんやりしていたのはそんなに長い時間じゃない、つまりいろいろ話し合ったって言うのは、コウメの優しい嘘だ。
即決で私は一人になったに違いない。もう嫌だ。
きっつい練習になんとかついていけるようになったのに、ここで晒し者の様になるなんて。まぁコウメやサチは同じ初心者と言っても私とは違う。
私はどん臭いし、お荷物って自覚も無くは無い。でもさ、ちょっと酷くないかな
「もう決まった事なんでしょ、試合の順番もすぐじゃないよね、私ちょっとトイレ言ってくるから」
心配そうにしているコウメ、既にダブルスを組み経験者と仲よさそうに話しているサチを残してトイレに向かう。
根性は・・・私にはあんまりなかったみたい。
それでも休んだのは、部活三日目の酷い筋肉痛から熱が三十八度超えを記録し、お母さんに学校を休まされた時だけで、それ以外は何とかコウメやサチの絶え間ない、脅しにも似た激励のおかげで部活に出て来れてる。
私が所属している部活、バドミントン部は公式な休みは大会の次の日と、お正月の三が日だけ。それ以外は夏休みとか秋休みとか関係なく毎日が活動日だ。
夏には、合宿もあるらしい。
入学前なら、合宿と言う言葉に、なんか甘酸っぱいような香りを感じていたんだけど、今となっては合宿が恐怖でしかない。
普段は四時間くらいの部活が、十二時間位に増えるし、しかも場所は高原のペンションとか貸し別荘ではなく、夏休みの誰もいない学校に布団を持ち込んでのお手軽コースだ。
最低限のお金しかかからないのは良いけど、はぁ夢がない。
夢がないのは、部活の内容もそうだ。
バトミントンのイメージと言えば、真っ白いシャトルを追ってラケットを振るイメージなんだけど。一ヶ月の間で私はまだシャトルを打った事がない。
ラケットも部に合った古い、やたらフレームの重い奴を先輩の号令と共に振るだけだ。
それでも最初に握り方を教わったり、素振りを教えてもらった時には、少しだけバイブス上がった。
ラケットが空気を切る、シュッと言う音も、力の入れ方、手首の返し方で様々な音になるのを初めて知った。
この上、先輩たちがコートの中でシャトルを打つようなバシュっと言う音が出せたら、もっと楽しくなるのかもしれない。
だけど、まだその時は来ていない。
入ってから知ったんだけど、私たちの入ったバトミントン部は県内では中堅かやや上位の実力がある部で、去年は個人戦で関東大会、ダブルスでは全国まで行ったみたい。団体はちょっと振るわなくって県大会どまり。
それも中心選手が全国大会後の疲れから、半数が一年生だったからという話だ。
すごいな~、今の私からしたら天まで届きそうな話。
シャトルを打った事も無い私に、試合とか全然だ。ルールもまだ把握できてないし。
その点は今のところコウメもサチも一緒だった。
二人とも私より体力もあって練習にもついて行ってるけど、シャトルを打ってないのは一緒だ。
私たち三人は初心者組って分け方で、ずっと基礎練習をさせられている。初心者がいれば経験者もいるわけで、一年生で八人の経験者がいる。初心者三人、経験者八人の計十一人の一年生がいるって事。
経験者組と初心者組は練習が別なので、私は経験者組とは話したことが無い。なんか初心者って事で引け目もあるし、同じ初心者組にコウメとサチと一緒にいて楽しいし。
「一年集まれ~」
二年生のトモ先輩がラケットを振って、体育館の隅で素振りをしている初心者組と、コートを使ってステップ確認をしていた経験者組を集める。
トモ先輩は後輩の教育係りを任されている二年生だ。レギュラーではなく、去年の団体戦県大会敗退の当事者らしい。
優しい物腰なんだけど、吐く言葉の内容は辛辣だったりして、天然ドライと私はひっそりと命名している。
「今日で一月ちょっと、そろそろ一年生の実力を見とけって先輩方が言うからね、一年だけでちびっと軽く試合やって欲しいんだ」
はっ試合ですと?何言ってるんですかこの先輩。
「トモちゃんせんぱ~い、経験者の子たちは良いけど、あたしたちもですか?」
結構きつい基礎練習で私は息が上がっているが、相変わらずサチはそれを感じさせない。明るく元気な声だ。
「だよね~、でも一年の実力を見るなら全員って先輩が言うからまぁ混合でやるしないよね、初心者はダブルス限定で経験者はサポートもふくめてシングルスもダブルスも両方で」
なんという、無茶な事を言う先輩方だ。
これってパワハラっぽくない?
コウメやサチはまだしも、私は相手にもならないだろう。めためた、ボロボロに負けるのが判りきっている。
そこまでまぁ考えて、私は気づいてしまう。
あ、これってリストラ的な首切りって奴かも?
経験者と初心者の絶望的な差を実感させて、努力は無駄って思い知らせ、自主的に辞めさせる為に。そうして残った経験者にもっと時間をかけて育てる的な。
なんだよ、それ。
「ひかる?」
「ごめんコウメ、なんか言った?」
「あのね、一年生って十一人でしょ、そしたら一人あまるじゃない」
嫌な予感がする。
いやいや嫌な予感しかしない。
「う、うん」
「それでね、いろいろ話し合ったみたいだけど、ひかるだけ一人になっちゃったの」
私がぼんやりしていたのはそんなに長い時間じゃない、つまりいろいろ話し合ったって言うのは、コウメの優しい嘘だ。
即決で私は一人になったに違いない。もう嫌だ。
きっつい練習になんとかついていけるようになったのに、ここで晒し者の様になるなんて。まぁコウメやサチは同じ初心者と言っても私とは違う。
私はどん臭いし、お荷物って自覚も無くは無い。でもさ、ちょっと酷くないかな
「もう決まった事なんでしょ、試合の順番もすぐじゃないよね、私ちょっとトイレ言ってくるから」
心配そうにしているコウメ、既にダブルスを組み経験者と仲よさそうに話しているサチを残してトイレに向かう。
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