銀色の精霊族と鬼の騎士団長

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八章 安全で快適な暮らし

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「俺があの人とこういうことしてると思ってたんだろ?」
「別にそこまで想像してたわけじゃ……あっ」

 エリトの手がするりと前に伸びてスイの自身を包みこんだ。そのままゆっくりとしごかれる。

「あ、う……っ」
「ちょっと勃ってる。やっぱりしっぽ触られると気持ちいいんだ?」
「ち、ちが……んっ、ふ」
「じゃ期待してたんだ?」
「ちが……っ!」

 先走りがあふれてくちゅくちゅと水音を立てる。スイはシーツをにぎりしめてエリトの手で与えられる快楽に耐えた。

「はっ、あ」
「声出せって」

 エリトはスイに覆い被さって震えている猫耳にかみついた。

「うにゃっ! あ、ああ……っ!」

 手の速度が速くなっていき、スイは気持ちよさに負けて背筋をのけぞらせた。

「ああっ、や、だめっ……」

 だが達しそうになったところで手がスッと離れていった。熱がこもったままのもどかしさに思わず後ろを振り向くと、エリトは先ほどとは打って変わって非常に機嫌がよさそうに笑った。

「ごめんごめん、お前は前より後ろでイくほうが好きだよな」
「か、勝手なことばっかり……わっ」

 エリトはスイをうつ伏せのまま膝を曲げて腰だけを高く上げさせた。足を開かされて大事なところがエリトから丸見えになり、スイは羞恥に真っ赤になった。

「ちょっ、やだ! これやだっ」

 眉尻を下げて涙ながらに訴えたがエリトは取り合ってくれなかった。しっぽでエリトの顔をぴしっとたたくとお返しとばかりにしっぽを引っ張られた。

「いっ」
「猫になりたいんだろ? ならおとなしく鳴いてろよ」

 エリトはスイの肩をベッドに押さえつけて動けないようにすると、先走りで濡れた指を後ろにずぷりと一気に突っこんだ。

「あうっ!」
「一回イっとくか」

 腹側のしこりを押しつぶされ、スイは耳をぺたりと垂らして声を上げた。すぐに指が二本に増やされてぐりぐりと強くこすられる。

「あ、ひっ! ああ、だ、めっ……っあ!」
「イけよ、ほら」
「あああぁ……っ」

 スイは体を痙攣させて達した。その直後に指が抜かれてもっと太いものを突っこまれた。

「んあああっ! や、今はっ……」
「は……まだイってる? 中すごいきつい」
「イってぅ……から、う、ごかないでっ……!」

 しかしエリトは無視してスイの細い腰をつかんで激しく揺さぶった。

「あーっ、あっやっむりぃっ」

 大きなベッドがきしむほどの勢いにたちまち再び追い上げられていく。

「ああっ! く、うあぁ……っ」

 良すぎて早々と二度目の絶頂を味わわされた。そのあいだに感じるところを内側からごりっとこすられ、目の前が白く弾ける。

「や、ああぁっ! やめ、ああっ!」

 だがエリトは構わず動き続けた。普段はもう少しスイの体をいたわってくれるのに今日はまったくそれがない。

「ああっ、ちょ、まっ、あっ」

 ぱんぱんと肌のぶつかる音が寝室に響く。そのまま何度もイかされて意識が持って行かれそうになった。

 中に熱いものが注がれると、スイはようやく解放されてベッドに倒れこんだ。エリトはスイの汗ばんだ体を指でなでた。

「……満足したか?」
「……ばか……やろ……」
「もう変なもの飲むなよ?」
「……のみません……」

 くすぐるように頬をなでられ、スイはゆっくりと目を閉じた。



「スイ」

 エリトの声だ。顔を上げるとそこにはエリトが立っていた。

「俺、今日からあっちの家に住むことにしたから」
「えっ?」
「この部屋は今まで通り使っていいから、好きにしろよ」
「ちょっと待てって、急になんだよ? あっちの家ってどこ?」
「お前には関係ない」

 エリトはそう言うと部屋を出て行った。慌てて後を追おうとしたが扉には鍵がかかっている。急いで窓から外を見下ろすと、家の門の前に豪華な馬車が停まっているのが見えた。馬車の扉が開いてあの三角耳の青年が姿を現す。

「…………!」

 エリトはまっすぐ彼のところに歩いていき、一緒に馬車に乗りこんだ。そしてそのまま馬車は去っていってしまった。スイをひとり残して。

 スイは小さくなっていく馬車に向かって震える手を伸ばした。

「まって……」

 エリトを呼び止めようとして、スイは自分の声で目を覚ました。心臓が早鐘のように鳴っている。

 スイは暗い寝室のベッドに横たわっていた。そっと後ろを振り返ると、エリトがスイの体に手を回して抱きこむようにして眠っている。エリトがいることを確認してスイは深々と息をはいた。

 今しがた見た夢の内容ははっきりと覚えている。エリトが自分を置いて別の人のところに行ってしまうのを見て、世界が壊れてしまったかのような衝撃を覚えた。スイはぶるりと身震いし、両手をぎゅっと握りしめた。

 もしエリトがいなくなってしまったらと考えるのもいやだった。今のこの生活がなくなってしまうと思うと恐ろしくてたまらない。

「ふ……」

 スイの目から耐えきれなかった涙がこぼれ落ちた。静かに泣いていると、背後で衣擦れの音がした。

「……どうした?」

 エリトが上半身を起こしてスイの顔をのぞきこんできた。

「大丈夫か? どこか痛むのか?」

 スイは首を横に振る。

「じゃあなんで泣いてんだよ。別にもう怒ってねえって」

 エリトの大きな手が頭をなでる。スイはさらにぼろぼろと泣き出した。

「ごめん……」
「だからもういいって」
「違う……。あのとき、勝手に出て行ってごめん……」

 エリトの手がぴたりと止まる。スイは泣きながら必死に謝った。

「もう勝手にいなくなったりしないから……絶対に逃げたりしないから……、だから、離れていかないで。おれを置いていかないで……」
「……置いてなんかいかねえよ。ずっとそばにいるから」

 エリトはスイの涙に濡れる目元にキスを落とした。スイがくるりと向きを変えてエリトに抱きつくと、エリトはぎゅっと抱き返してくれた。

「一緒にいるから。だからそんなに泣くなよ。な」
「……今幸せ?」
「え? まあ、たぶんそうかも?」
「おれといると幸せになれる?」
「なんだよ今度は……ああ、精霊族の噂? うーん……正直お前が精霊族だからって幸せになってる気はしないな。別にお前がなんの種族でも構わないし。しょせん噂は噂だろ」

 スイはちょっとがっかりした。これだけ一緒にいるエリトが幸せになれないのなら、精霊族をそばに置いておく意味はない。

「じゃあおれがきみにしてあげられることはなにもないな……」
「ここにいてくれりゃいいって。また姿をくらまさなきゃそれでいいから」
「そんなこと絶対しないよ!」
「はいはい、わかったよ。わかったからもう寝ろ」

 エリトに促されてスイは再び目を閉じた。エリトと一緒にいられるならほかはどうでもいい。そんな風に思えた。


 ◆


 スイの猫耳としっぽは二日後に消えた。窓もきれいに修繕され、スイは元の生活に戻った。エリトの前ではみっともなく泣いてしまったが、おかげでだいぶ気分がすっきりとしていた。

 屋敷の敷地内だけで過ごし毎日せっせと花壇の手入れをしているせいで、スイはほぼ庭師になりつつある。そしてエリトが帰ってくると出迎えて一緒に夕飯をとり、一緒に眠る日々。

 夜、寝る前にベッドに寝転んでエリトの隣でとりとめのないことを喋りながらうとうとする時間がスイは好きだった。この上なく穏やかで、オビングで暮らしていたころに戻ったかのようだ。デアマルクトに来てからはエリトが来るとヤってそのまま気絶するように眠ることがほとんどだったので、こうして一緒にゆったりとした時間を過ごせるのが新鮮だった。

 一応スイはエリトに軟禁されているのだが、ずっとこのままいられたらいいのにと願わずにはいられなかった。

 ヴェントンとバルトローシュは突然やってきたスイをすぐに家人として受け入れてくれた。スイは二人のことも大好きになった。エリトも含めて四人で一つの家族のような存在だ。

 ヴェントンは住みこみで働き、バルトローシュは毎日自宅からエリト邸に通っている。バルトローシュは元々騎士団員だったが怪我が原因で退団し、それからはエリトの家の管理を任されている。片目が見えず足も悪いが、長時間走れないだけで日常生活に支障はない。剣術の名人なので憲兵隊から依頼を受けてしばしば剣の指導をしに演習場に行っている。

 いつも世話をしてもらってばかりで悪いと思ったスイは、バルトローシュに自分が料理を担当したいと申し出た。

「それは助かるけど……本当に大丈夫か?」

 心配そうなバルトローシュにスイは大きくうなずいてみせた。

「オビングにいたときは毎日エリトにご飯を作ってたよ。ここの台所のことも分かってきたし大丈夫だって。それに前、憲兵隊からの依頼の半分くらいは断ってるけど本当は全部見てやりたいって言ってたじゃないか。そっちの仕事をたくさんやりたいんじゃない?」
「うーん……まあ、そうだけど……」
「じゃあそうしようよ! バルは台所仕事より剣術の指南役のほうがずっと向いてるって!」

 乗り気なスイを見てバルトローシュは苦笑した。

「そこまで言うならわかったよ。きみにお願いするよ。ありがとう」
「決まりだね」
「じゃあさっそく今夜の夕飯の準備を頼むよ。ものの場所を教えるから一緒にやろうか」
「わかった」

 スイはバルトローシュに見守られながら夕食の支度をした。取り寄せたばかりの貝をワインで煮こみ、ミートグラタンを焼く。できあがりをバルトローシュにチェックしてもらい、とてもおいしいと太鼓判を押されてスイはほっとした。
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