銀色の精霊族と鬼の騎士団長

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出会い編 オビングの小さな家

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 スイはエリトのベッドで一緒に眠るようになった。エリトの使っているベッドは夫婦仕様の大きいものなので、ふたりで使っても十分広い。

 ある夜、エリトはスイをベッドに押し倒した。スイは深いキスをされながら敏感なところに触れられ、気持ちよさに体をぴくぴくと震わせた。

「ん、んっ……ふ、ぁ」

 エリトはスイの服をすべてはぎとって体中くまなく愛撫した。胸の飾りを舌で転がされながら長い指を後ろに突っこまれ、感じるところを同時に責められてスイは腰を弓なりに反らせた。

「んああっ! あ、やっ、そこ……っ」
「……ここが感じんの?」
「あ、あっあっ、だ、めっ……!」

 エリトは指を曲げてひっかくようにしてスイの弱いところを押した。スイは気持ちよさのあまり目の前が真っ白になり、思わずエリトの腕をつかんだ。

「ああっ! やだ、なんか変っ」
「気持ちいいだろ? イけよ」
「んっ、あ、あぁ……むり、イけな……っ」

 スイは達しそうなのに達せられず、苦しくなって首をぶんぶんと振った。エリトは指を動かすのをやめてスイの顔を見下ろした。スイの瞳は涙に濡れて快楽に染まった真っ赤な顔をしている。

「そんな感じてる面してるくせにイけないのか? ここもこんなになってるのに」

 エリトはスイの熱を持った中心をするりとなでる。それだけでもスイはぴくりと反応してしまう。

「ひあ」
「ほら、感度抜群じゃねえか」
「でもっ……気持ちいいのばっかりで……ぞわぞわするっ……」
「……どういうことだよ?」
「だって……」

 スイはふわふわする頭で今までのセックスを思い返した。ディリオムはしょっちゅうスイをたたいたし、首をしめてスイが苦しそうにするのを眺めながら突っこむのが好きだった。スイにとって快楽は苦痛を我慢したあとにもらえるご褒美だった。だから苦痛もなしに快楽だけを与えられるとなんだか物足りない気がする。

 エリトはなにかに気づいてはっとした。

「まさかお前……ひどくされないとイけないとか言わないよな? 何も知りませんみたいな顔しといてそんな、嘘だろ?」
「そ、そんなこと……ううん、どうだろ……確かに今まではそうだったかな……」
「なんてこった……」

 エリトは苦い顔でスイをぎゅっと抱きしめた。スイはエリトを不快にさせてしまったと思って焦り始めた。エリトの期待に応えられない自分が悔しくてふにゃりと顔をゆがませる。

「ごめんエリト……おれ、汚くて……」
「……汚くなんかねえよ。ただ、あの野郎をぶっ殺さなかったことを後悔してるだけ」
「そ、そう……?」

 スイは悲しくなって涙がにじんだ。せっかく恋人になれたのに、自分ではエリトを満足させることができないのだ。せめてエリトに奉仕すれば、これからもそばに置いてもらえるだろうか。

 そんなことを考えていると、エリトは急にスイを抱き起こして自分の膝の上に座らせた。スイはきょとんとしてエリトを見る。

 エリトは指でスイの目元をこすって涙を拭い、にやりと笑った。月明かりの差しこむ暗い部屋の中で笑うエリトは壮絶な色香を放っている。欲のにじんだ鋭い目にじっと見つめられ、スイは腹の底があわだつのを感じた。

「上等だ。そんな暴力野郎より俺のほうがずっとお前をよくしてやれるってことをわからせてやる」

 エリトはそう言うとぺろりと牙をなめた。

「な、なにするの……?」
「忘れたのか? 俺は鬼族だぞ。鬼族は人の血を飲んで力を得るんだよ」
「……おれの血が欲しいってこと!?」

 エリトはスイの質問に答えず、逃げようとするスイの腕をつかんで強引に引き寄せた。

「ひっ」

 エリトはスイの首筋に舌をはわせて血管を探り、狙いを定めてがぶりとかみついた。

「あ……!!」

 スイは首筋に鋭い痛みを感じた。エリトの牙はスイの柔い肌をやすやすとつらぬいた。エリトはあふれる血を吸い上げ、喉を鳴らして飲み下していく。スイはエリトに両腕をつかまれて押さえつけられ、逃げたくても逃げられない。

「っふ……」

 噛まれたところがじくじくと痛む。エリトはまだスイの血をすすっている。このまま全身の血を吸われて死んでしまうのではないかと怖くなった。

 だが、恐怖はすぐに消えていった。エリトが血を吸うたびに頭の中がしびれていき、不思議なことに恐怖も不安も消えていく。スイは急な自分の変化に戸惑った。

「え……? な、にこれ……」

 頭がぼうっとする。心臓が早鐘のように鼓動を始める。思考がまとまらなくなり、得体の知れない快楽に包まれていく。エリトに噛まれることが気持ちよくてたまらない。もっともっとと体がエリトを欲しがっている。ほかになにも考えられない。

「えりと……」

 スイはうわごとのように呟いてエリトのシャツをきゅっと握った。エリトはスイの首から顔を上げた。スイの目はとろりと溶けていて焦点が合っておらず、口は半開きになって誘うように舌がのぞいている。手足は弛緩していて逃げようなどという意志はもう欠片もない。

 獲物が堕ちたのを見て、エリトはにんまりと笑った。

「……気持ちいいだろ?」
「ん……きもちい……」
「どうしてほしい?」
「……もっと、して……」
「なにを?」
「もっと……ぜんぶ、たべて……」
「……いいよ」

 エリトは血のついた唇をぺろりとなめた。その性的な仕草にスイは打ち震えた。今すぐ頭からばりばりと食べ尽くしてほしい。自分の中をエリトで満たしてほしい。

 スイの願いはすぐに叶えられた。エリトはスイをベッドに組み敷いて猛ったもので秘部を貫いた。狭い中をこじ開けられて奥をがつんと突かれる。

「ああぁあ……っ!」

 体格のいいエリトは自身も大きく、まるで凶器だった。スイは感じる部分をまるごとこすられて甘い悲鳴を上げた。

「あぁっ、あっ、そこっ、きもちっ……」
「ここ?」
「んあ……っ! あ、あっ、だめ、でちゃ……っ!」

 スイはあっけなく自分の腹を白濁で汚した。

「ちゃんとイけるじゃねえか」

 エリトが笑う。噛まれた快楽に加えて達した余韻も混じり、スイはもうわけがわからなかった。エリトはとろとろになって乱れるスイにうっとりとしながら腰を振り立てた。

「ひゃ、ああぁっ……エ、リトぉっ……」
「は……、たまんね……」
「んあ! あ、あ、も、すこし……ゆっ、くり……っ、んあっ!」
「いや無理だろ……っ」

 エリトはスイの右足をつかんで大きく開かせ、最奥を突きまくった。スイはおかしくなりそうなほどの悦楽をぶちこまれて再び白濁をはき出した。

「っはあ、あっ、も、へんになるぅ……っあぁ!?」
「ごめん、もうちょい」
「あーっ! あ、も、だめえっ……」

 スイがまた達してもエリトは止まらなかった。スイは過ぎる快楽に泣き叫んだ。

 やっとのことでエリトが中で出すと、スイは四肢を投げ出してぐったりとベッドに横たわった。もう指一本も動かせない。中からエリトのものが引き抜かれ、どろりと温かいものがあふれ出た。洗いたてのシーツは汗とふたりが出したものでどろどろだ。

「こ……こんなの、きいてない……」

 はあはあと荒い息をはきながら枯れた声で言う。エリトは自分だけ身だしなみを整えると、スイの上にかがみこんで額にキスを落とした。

「な? よかっただろ?」

 スイはなにも言わなかった。確かに死にそうなほど気持ちよかったが、こんなものが日常になったら壊れてしまう。

「あとは俺がやっとくから寝ろよ。おやすみ」
「ん……おやすみ……」

 スイは目を閉じるとそのまま泥のように眠った。
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