僕は誰？(藤木俊編)

父の友人

「おはよう！」今日もあかりは元気だ。養子だったと知っても何の変わりもなく過ごせている自分に感心する。思いきって父の事、養子の事を母に聞いてみようと試みたができなかった。「今日、真一おじさんが来るんだって！」あかりが嬉しそうにはしゃいでいる。宗方真一、父の友人だ。アメリカに住んでいて、年に数回帰国した時は必ず会いに来てくれる。研究員だた父と同じ職場だった。そうだ、真一おじさんに聞いてみようか、父の事について何かしっているはずだ。「僕が迎えに行くよ。」空港まで車を走らせた。今回は１年ぶりの帰国だ、僕を見つけた真一おじさんは相変わらずの人当たりのいい笑顔で近づいてきた。研究員らしさがなくユーモアのセンスも抜群の人だ。しばらくは久しぶりの再会の会話で弾んでいたが、どう切り出そうか考えていると、「どうした？悩みごとか？」と聞いてきた。「僕の父さん、生きてるよね？」直球を投げた。真一おじさんは「うん。」とあっさり答えた。拍子抜けした僕はその後、何と言葉を発したらいいかわからなくなった。