僕は誰?(藤木俊編)

pazuru

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祖母の遺品

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   祖母の葬儀もおわり、母は仕事に戻った。今日は妹のあかりと2人で祖母の遺品整理をすることになっていた。そう言えば、祖母の最後の言葉は何だったのだろう、"右の引き出し?"祖母の着物が入った和ダンスには右の引き出しなんてなく、別に深い意味なんてなかったのかもしれないな。「お兄ちゃん!ボーっとしないでちゃんと整理して!!」あかりから怒鳴られた。「はい、はい。」と返事しながら台所の食器棚を見ると、あった!右の引き出し・・・。すぐに開けてみる。そこには僕が大好きなカップ麺がぎっしりと詰まっていた。母は看護士をしていて忙しいのに、子供には手料理を食べさせたい人で、家ではカップ麺なんて買えず、よく祖母の家に来てこっそり食べてたものだ。祖母はこのことを言いたかったのか?何だか泣けてくる。「お兄ちゃん!何してんの?」あかりが台所に入ってきた。慌てて引き出しを閉め、あかりを居間に押し戻す。僕が涙ぐんでいるのを見たのか、何も言わず押されるまま居間に戻った。食器棚を空にし、台所もほぼ片付いた。"あれっ?"カップ麺の入っていた引き出しがおかしい。何かが引っ掛かり最後まで引き出せないのだ。とりあえずカップ麺を全部出し、引き出しを思いっきり引っ張り出してみた。壊れた・・・いや、壊れたんじゃない!2重底だ!引き出しは二重底になっていたのだ。中を確かめると、手紙が一通と写真が1枚入った封筒が入っていた。"後で確かめよう"あかりに気づかれないようにそっとポケットに押し込んだ。
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