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祖母の言葉
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とても晴れた日だった。病院から祖母の危篤の知らせが入った。「お兄ちゃん、急いで!!」妹のあかりに急き立てられながら病院へと車を走らせた。
僕は藤木仁、大学生になり、初めての夏休み初日を迎えた朝の事だった。車を走らせながら祖母の顔を思い浮かべていた。独り暮らしだった祖母は認知症を患い入院していたが、とても優しい笑顔で僕の事を「俊ちゃん」と亡くなった父の名前で呼んでいた。父は早くに亡くなり、顔は覚えていないが僕はとても父に似ているらしい。子供の頃からずっと「俊ちゃん」と父の名前で呼ばれ腹が立った僕は、一度祖母に「どうして僕の名前で呼んでくれないの?」と訊いたことがあった。祖母は困った顔をして「ごめんねぇ、俊ちゃん。」と答えた。子供ながらにも祖母はその頃から認知症を発症していたのだろうと、諦めた覚えがあった。
病院に着くと母が泣きはらした目で僕を確認すると、祖母の側へ寄せた。祖母は弱々しい声で何か言っている、聞き取ろうと顔を近づけると「右の引き出しに入ってるからね。」とだけ言い、僕を見て安心したように穏やかな笑顔になり、そのまま静かに眠った。
僕は藤木仁、大学生になり、初めての夏休み初日を迎えた朝の事だった。車を走らせながら祖母の顔を思い浮かべていた。独り暮らしだった祖母は認知症を患い入院していたが、とても優しい笑顔で僕の事を「俊ちゃん」と亡くなった父の名前で呼んでいた。父は早くに亡くなり、顔は覚えていないが僕はとても父に似ているらしい。子供の頃からずっと「俊ちゃん」と父の名前で呼ばれ腹が立った僕は、一度祖母に「どうして僕の名前で呼んでくれないの?」と訊いたことがあった。祖母は困った顔をして「ごめんねぇ、俊ちゃん。」と答えた。子供ながらにも祖母はその頃から認知症を発症していたのだろうと、諦めた覚えがあった。
病院に着くと母が泣きはらした目で僕を確認すると、祖母の側へ寄せた。祖母は弱々しい声で何か言っている、聞き取ろうと顔を近づけると「右の引き出しに入ってるからね。」とだけ言い、僕を見て安心したように穏やかな笑顔になり、そのまま静かに眠った。
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