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第84話 希望ですね

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 少し落ち着きを取り戻したエリスにレイナは言う。
 
「魔法を消したのは私の能力で【拒絶と吸収】といいます」
「【拒絶と吸収】? 聞いた事もない能力ね……」

 レイナとしてもこの能力の事は全て知っている訳ではない。
 でも今回エリスを救う事が出来たのだから文句はないし、有り難いとも思っている。
 発動時間も早く、詠唱も必要ない、そして強力。
 今回の任務もそうであるが、今後も上手く使っていかなければとレイナは考えている。

「魔法に関しては破壊して私のインベントリに吸収されました」
「えっ、どう言う事かしら?」
「魔物が放った魔法をインベントリに保存した感じですね」
「保存?」

 今まで吸収して来た魔法もしっかりとインベントリにストックされている。

「はい。取り出して魔法として使用出来ます」
「何それ! 貴女、聖属性よね? あの魔物の魔法は火属性だったから二属性使えるって事かしら?」
「ええっと、吸収したものは使えるので属性は関係ないみたいです」
「はあっ! おかしいでしょそれ!」

 ニコラのオリジナル魔法である【雷撃】もレイナは使用できるので、属性に関係なく吸収したものは全属性使用出来ると言う事だろう。
 レイナが魔法を身に付けた訳ではないので、数に限りがあるが保存されている数は魔法が使える。
 それだけでも異常な事だ。

「じゃあ私の魔力はどうなったのかしら?」

 あの時レイナは暴発しそうなエリスの魔力も分解して吸収した。
 それがどうなっているのかエリスとしても気になるところだろう。
 レイナとしても魔力そのものを【拒絶と吸収】で吸収するのは初めての事であり興味がある。
 レイナが【インベントリ】内を確認すると魔力塊(エリス)とあった。
 地面から栄養塊を吸収した時の様に塊として保存されている様だ。

「魔力の塊として保管されている様ですね」
「……もう何て言っていいのか分からないわ」
「私も使い方は分かりませんが、魔力弾として攻撃で使うとかでしょうか?」
「さあ、貴女が分からないなら私に分かるはずもないわ!」

 それもそうかとレイナは納得せざるを得ない。
 エリスも困惑するだけで解答が出ないのは当然だ。

「まあでも貴女の能力が不思議なのは分かったわ。何にせよ今回その能力に助けられたのだから感謝するわ」
「そうですね。皆さんも無事で良かったです」

 全員生きて怪我も無いのなら護衛任務としては今のところ成功していると言えるだろう。

「でも私の努力も意味が無かったみたいね。他国の学園にも通っても結局魔力制御が出来なかった訳だし……」

 エリスはがっくりと肩を落とす。
 今までの努力が意味が無いと分かればやるせない気持ちだろう。
 落ち込むなと言うのは無理な話だ。

 そんなエリスにレイナは言う。

「それなんですけど、私ならエリス様の魔法制御を治せるかもしれません」
「えっ!」

 エリスの複雑な感情が入り交じった表情はレイナが見た事も無いものだった。
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