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第74話 解任ですね
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「呼び出して悪かったねレイナ」
「えっ、あの、イーサン?」
何故か部屋の壁とイーサンに挟まれた状態でそんな事を言われたら、レイナで無くても戸惑うのは仕方がない事だろう。
「ああ、すまない。レイナの顔を近くで見たくてね」
「う、うん」
最近のイーサンの積極性に戸惑い気味のレイナ。
もう少し達観している印象を持っていたのだが。
しかしレイナとしては好意を寄せて貰えるのは嬉しいとは感じてはいる。
「レイナ、君にはニコラのメイドを辞めて貰う」
「えっ! クビって事!?」
甘い雰囲気からの突然のクビ宣言。
ニコラには、たまに暴言とか言っていたかもしれないが、基本的には真面目にメイドとして取り組んできた自負がレイナにはある。
それがいきなりの解雇通告。
納得がいくはずもなくこれまでの色々な行いをレイナは頭の中で思い起こして何が問題だったか考える。
心の中が暴走して青ざめているレイナを心配したイーサンが声を掛ける。
「クビって訳では無いよ。新たにやって貰いたい事があるんだ」
「えっ! やって貰いたい事?」
「勿論、断って貰っても構わない。その場合は今まで通りメイドの仕事を続けてもいい」
「何をするの?」
「ある人物を隣国まで送り届けて貰いたいんだ。護衛と身の回りの世話って感じかな」
「護衛!? 私が?」
メイドとしてやって来たレイナなら身の回りの世話と言うなら分かるが、護衛と言う部分にレイナは疑問を感じた。
「そうだ。勿論護衛は君一人ではない。チームを組んで護衛して貰う」
「……」
「レイナ、君の実力はニコラから聞いている。十分護衛としてやれると判断した」
「ニコラ様の課題はその為の試験だったって事?」
「ああ、それも兼ねていた。でもレイナにも今の自分の実力を知って貰いたかったと言うのもある」
盗賊退治はイーサンとニコラが考えたものだったとレイナは知る。
「誰を護衛するのですか?」
「妹なんだが学園まで送り届けて欲しい」
「妹さんなのね」
「まあ表向きは回復要因として参加して貰いたいんだ」
「ああなるほど。護衛と言うと戦うイメージが強くて」
「最悪の時にはあり得るが、基本的には彼女の近くにいて貰いたい。だから同性である君が選ばれた」
「そうなんだ」
「レイナにもメリットがある。君には違う世界を見て欲しいと思ってね。君はこの国に来てから王宮にしかいないだろう。外の世界を見に行っても良い時期だと思ってね」
「……ありがとうイーサン」
いつも色々と考えてくれているんだなとレイナはイーサンの優しさに感謝する。
「本来ならずっと側にいて欲しいぐらいなのだが、そうもいかないだろ?」
「……」
それを強引にでも出来る立場のイーサンなのだがレイナの意思を尊重するのは惚れた弱みなのか。
甘やかされているだけなのかもしれない。
だがレイナとしても外の世界には行ってみたい気持ちはある。
レイナはイーサンの提案を了承する事にした。
「えっ、あの、イーサン?」
何故か部屋の壁とイーサンに挟まれた状態でそんな事を言われたら、レイナで無くても戸惑うのは仕方がない事だろう。
「ああ、すまない。レイナの顔を近くで見たくてね」
「う、うん」
最近のイーサンの積極性に戸惑い気味のレイナ。
もう少し達観している印象を持っていたのだが。
しかしレイナとしては好意を寄せて貰えるのは嬉しいとは感じてはいる。
「レイナ、君にはニコラのメイドを辞めて貰う」
「えっ! クビって事!?」
甘い雰囲気からの突然のクビ宣言。
ニコラには、たまに暴言とか言っていたかもしれないが、基本的には真面目にメイドとして取り組んできた自負がレイナにはある。
それがいきなりの解雇通告。
納得がいくはずもなくこれまでの色々な行いをレイナは頭の中で思い起こして何が問題だったか考える。
心の中が暴走して青ざめているレイナを心配したイーサンが声を掛ける。
「クビって訳では無いよ。新たにやって貰いたい事があるんだ」
「えっ! やって貰いたい事?」
「勿論、断って貰っても構わない。その場合は今まで通りメイドの仕事を続けてもいい」
「何をするの?」
「ある人物を隣国まで送り届けて貰いたいんだ。護衛と身の回りの世話って感じかな」
「護衛!? 私が?」
メイドとしてやって来たレイナなら身の回りの世話と言うなら分かるが、護衛と言う部分にレイナは疑問を感じた。
「そうだ。勿論護衛は君一人ではない。チームを組んで護衛して貰う」
「……」
「レイナ、君の実力はニコラから聞いている。十分護衛としてやれると判断した」
「ニコラ様の課題はその為の試験だったって事?」
「ああ、それも兼ねていた。でもレイナにも今の自分の実力を知って貰いたかったと言うのもある」
盗賊退治はイーサンとニコラが考えたものだったとレイナは知る。
「誰を護衛するのですか?」
「妹なんだが学園まで送り届けて欲しい」
「妹さんなのね」
「まあ表向きは回復要因として参加して貰いたいんだ」
「ああなるほど。護衛と言うと戦うイメージが強くて」
「最悪の時にはあり得るが、基本的には彼女の近くにいて貰いたい。だから同性である君が選ばれた」
「そうなんだ」
「レイナにもメリットがある。君には違う世界を見て欲しいと思ってね。君はこの国に来てから王宮にしかいないだろう。外の世界を見に行っても良い時期だと思ってね」
「……ありがとうイーサン」
いつも色々と考えてくれているんだなとレイナはイーサンの優しさに感謝する。
「本来ならずっと側にいて欲しいぐらいなのだが、そうもいかないだろ?」
「……」
それを強引にでも出来る立場のイーサンなのだがレイナの意思を尊重するのは惚れた弱みなのか。
甘やかされているだけなのかもしれない。
だがレイナとしても外の世界には行ってみたい気持ちはある。
レイナはイーサンの提案を了承する事にした。
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