上 下
43 / 92

第42話 擦り合わせですね

しおりを挟む
「私の能力は【拒絶と吸収】と言います」

 レイナはイーサンに能力の事を話始める。
 この能力を他人に話すのは初めての事だ。

「この能力で毒矢の毒を吸収したと思われます」
「やはりそうか。我々の見解でもそうであろうと予想していた。思われたと言うことは能力を意識して使った訳ではなかったんだな?」
「はい。あの時は無意識でした。偶々毒を吸収出来たみたいです」

 レイナは【インベントリ】から毒塊(吸収)を取り出してイーサンに見せる。

「これは?」
「これはその時に吸収した毒です。気がついたら【インベントリ】に勝手に入っていました」
「毒の源って事か」
「はい。毒矢が肩に刺さった時は私は無意識に能力を使ったと思います。その時に吸収したのがこの毒の塊です」
「つまり毒を拒絶してレイナの体から抜き取り吸収したって事か?」
「はい。私はそう考えています」

 拒絶だけなら毒を中和するとか体から取り出すだけでいい。
 しかし手元に毒の塊が残ったと言う事は吸収の能力も同時に発動したとレイナは考えた。
 これは偶然だったのだが、毒から助かるためには拒絶だけでも十分だったと考えられる。

「それは凄い能力だな……」
 
 強力な毒から身を守り取り込んてしまう様な、能力の同時発動はありえないと普通は考えられている。
 それをレイナはあっさりと実現させているのだから、イーサンが驚くのも無理はないのかもしれない。

「では薬草に与えていた物もその能力で作った物なのか?」

 イーサンは栄養塊の事も知っていた。
 ただ能力の全容を知らないイーサンはそれが何かまで分からなかった様だ。
 畑に何かを埋め込んだ事は影により知っていただけだ。

「はい。吸収の能力を使って森から栄養素を吸収して作物に与えました」
「作物が巨大化したという報告も受けているが、それはどう言う事なんだ?」
「それは栄養の塊をそのまま与えてしまったからだと思います」
「濃すぎたと言う事か」
「はい。だから最近は調整して薄めて使っています」
「吸収したものは効果が上がると言うのか?」
「不思議な事ですがそうみたいです」

 吸収やコピーしたものが元より効果が上がるなど普通は考えにくい。
 むしろ下がると考えるのが普通であり、二人が困惑するのも無理がない事だ。

「聞けば聞くほど凄い能力だな。しかしそんな能力ならシールズを治すことが可能かもしれいな」

 未知なる能力である【拒絶と吸収】それならばと期待してしまうイーサン。
 しかしレイナとしてもこの能力について全てを把握している訳ではない。
 
「やれるだけやってみます」

 現状ではそれだけしか言えない自分がレイナは歯がゆい。 
 そんなレイナの不安をイーサンは察したのか軽い口調でレイナに話しかける。

「レイナ、話し方が外行きになっているな」
「うん、そうね。イーサンも真面目な雰囲気だったし、しっかりと答えなきゃと思って」
「そうだな。俺も緊張していたみたいだ」

 お互いに真剣な話をするのは初めてなのかもしれない。
 口調が固くなってしまったのも仕方がない事だろう。

「レイナ、シールズを頼む」
「うん、やれるだけやってみる」

 何時もの二人に戻っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。 だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。 その後、自分の異常な体質に気づき...!?

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜

黄舞
ファンタジー
 侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。  一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。  配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。  一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

処理中です...