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第22話 叱られてしまいましたね
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「イーサン、あのね今度……」
レイナは廊下から曲がってくるイーサンが見えたので手を挙げ声を掛けた。
でもそれに続く人間が見えたので言葉を止める。
「貴様! 王族を呼び止めるとは何事だ! しかも敬称無しとは無礼な!」
案の定、周りの人間達に聞こえてしまった様でかなり怒っている様子。
周りにいた青年が剣に手を掛けレイナを咎める。
「いいんだバレン、剣を収めてくれ」
「しかし兄上!」
「いいんだ」
「……分かりました」
バレンと言われた青年はしぶしぶ引き下がる。
しかしレイナを凄い目で睨んでいるところは変わらない。
レイナはメイドの服を着ているので、主を呼び捨てにするなど普通はありえない。
その青年が怒るのも無理はない事だ。
第一王子であるイーサンは、周りの目が常にある人だから気を付けなければいけない、レイナは改めてイーサンの立場を理解する。
「イーサン様、申し訳ありません……」
自分の事はともかくイーサンの評判が悪くなってしまうのは心苦しい。
イーサンがメイドの管理も出来ない主人と笑われてしまう事は、絶対に避けなければならないとレイナは誓う。
「気にするなレイナ。君は私の友人だ。公式な場でない限り今まで通りで構わないよ」
そう言ってはくれるけれど、やはりメイドとしてやっている以上、王宮の中では気を付けなければいけないだろう。
今後王宮では砕けた態度は改めるべきだとレイナは思う。
「いえ、軽率でした。バレン様も不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
レイナは反省の意味を込めて深く頭を下げる。
「分かった。今後気を付けて貰えれば構わない」
「ありがとうございます」
レイナの謝罪を受けバレンは、あっさりと怒りを収めた。
本来の性格がさっぱりしているのだろう。
バレンはイーサンより背が高く筋肉質な体格。
レイナは思わず見上げてしまう。
たしか第二騎士団の団長だったかなと、レイナは思い出す。
「レイナ紹介するよ。弟のバレンだ」
「はい。初めましてバレン様。レイナと申します」
「バレンだ。兄上に女性の友人とは珍しいな」
怒っていたとは思えない程、穏やかにレイナに話しかけるバレン。
「そうなのですか?」
「ああ、兄上に寄ってくる女性は大勢いるが友人は少ない」
「なるほど」
恋人になりたい人間が沢山いるという事だろう。
これだけのイケメンなら女性が放っておかない。
好意を寄せる女性が多いのも頷けるとレイナは納得する。
「私が盗賊に襲われている所を助けていただきました」
「それだけで兄上が王宮に連れて来たのか?」
「あっ、その、メイドとして雇っていただけるという事でしたので、付いてまいりました」
「ほう」
バレンは興味深そうな目でレイナを見る。
「確かに美しい娘だが、二人は恋仲なのか?」
「!?」
バレンはいきなり何を言っているのだろうとレイナは動揺する。
(私がイーサンと?)
レイナはそんな事を考えたことも無かった。
「イーサン様とは、ゆ、友人であり雇用関係です」
何だか顔が熱いし、恥ずかしくて隣にいるイーサンの顔がレイナは見れない。
「ふははは、そうかそういう事にしておこう!」
いえいえ、そういう事なんですとレイナは言いたかったが、バレンの笑い声にかき消される。
バレンは随分と豪快に笑う人だとレイナは思う。
「兄上にも春が来たって事ですかな」
「いえ、ですから勘違いです」
「はっはは。ではレイナ嬢、私は用事があるので失礼する!」
そう言うとバレンは去って行った。
残されたレイナとイーサン。
(あっ!)
後ろに護衛のラウルが控えている事に気付くレイナ。
レイナはバレンが変なこと言うので動揺してしまった様だ。
「バ、バレン様は、豪快な方ですね」
レイナは何とか言葉を捻り出す。
イーサンはどんな顔をしているのだろうと気が気でない。
「じゃあレイナ、また後でな」
「は、はい」
(うわっ、全然普通でした!)
レイナは自分だけが意識してたみたいで恥ずかしさを感じる。
イーサンは普段から周りに女性がいるから、こういう事には慣れているのかもしれないとレイナは考える事にした。
「まったく素直じゃないですね」
去り際にラウルがイーサン言った言葉は、レイナにはそんな風に聞こえた気がしたが本当の事は分からない。
レイナは廊下から曲がってくるイーサンが見えたので手を挙げ声を掛けた。
でもそれに続く人間が見えたので言葉を止める。
「貴様! 王族を呼び止めるとは何事だ! しかも敬称無しとは無礼な!」
案の定、周りの人間達に聞こえてしまった様でかなり怒っている様子。
周りにいた青年が剣に手を掛けレイナを咎める。
「いいんだバレン、剣を収めてくれ」
「しかし兄上!」
「いいんだ」
「……分かりました」
バレンと言われた青年はしぶしぶ引き下がる。
しかしレイナを凄い目で睨んでいるところは変わらない。
レイナはメイドの服を着ているので、主を呼び捨てにするなど普通はありえない。
その青年が怒るのも無理はない事だ。
第一王子であるイーサンは、周りの目が常にある人だから気を付けなければいけない、レイナは改めてイーサンの立場を理解する。
「イーサン様、申し訳ありません……」
自分の事はともかくイーサンの評判が悪くなってしまうのは心苦しい。
イーサンがメイドの管理も出来ない主人と笑われてしまう事は、絶対に避けなければならないとレイナは誓う。
「気にするなレイナ。君は私の友人だ。公式な場でない限り今まで通りで構わないよ」
そう言ってはくれるけれど、やはりメイドとしてやっている以上、王宮の中では気を付けなければいけないだろう。
今後王宮では砕けた態度は改めるべきだとレイナは思う。
「いえ、軽率でした。バレン様も不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
レイナは反省の意味を込めて深く頭を下げる。
「分かった。今後気を付けて貰えれば構わない」
「ありがとうございます」
レイナの謝罪を受けバレンは、あっさりと怒りを収めた。
本来の性格がさっぱりしているのだろう。
バレンはイーサンより背が高く筋肉質な体格。
レイナは思わず見上げてしまう。
たしか第二騎士団の団長だったかなと、レイナは思い出す。
「レイナ紹介するよ。弟のバレンだ」
「はい。初めましてバレン様。レイナと申します」
「バレンだ。兄上に女性の友人とは珍しいな」
怒っていたとは思えない程、穏やかにレイナに話しかけるバレン。
「そうなのですか?」
「ああ、兄上に寄ってくる女性は大勢いるが友人は少ない」
「なるほど」
恋人になりたい人間が沢山いるという事だろう。
これだけのイケメンなら女性が放っておかない。
好意を寄せる女性が多いのも頷けるとレイナは納得する。
「私が盗賊に襲われている所を助けていただきました」
「それだけで兄上が王宮に連れて来たのか?」
「あっ、その、メイドとして雇っていただけるという事でしたので、付いてまいりました」
「ほう」
バレンは興味深そうな目でレイナを見る。
「確かに美しい娘だが、二人は恋仲なのか?」
「!?」
バレンはいきなり何を言っているのだろうとレイナは動揺する。
(私がイーサンと?)
レイナはそんな事を考えたことも無かった。
「イーサン様とは、ゆ、友人であり雇用関係です」
何だか顔が熱いし、恥ずかしくて隣にいるイーサンの顔がレイナは見れない。
「ふははは、そうかそういう事にしておこう!」
いえいえ、そういう事なんですとレイナは言いたかったが、バレンの笑い声にかき消される。
バレンは随分と豪快に笑う人だとレイナは思う。
「兄上にも春が来たって事ですかな」
「いえ、ですから勘違いです」
「はっはは。ではレイナ嬢、私は用事があるので失礼する!」
そう言うとバレンは去って行った。
残されたレイナとイーサン。
(あっ!)
後ろに護衛のラウルが控えている事に気付くレイナ。
レイナはバレンが変なこと言うので動揺してしまった様だ。
「バ、バレン様は、豪快な方ですね」
レイナは何とか言葉を捻り出す。
イーサンはどんな顔をしているのだろうと気が気でない。
「じゃあレイナ、また後でな」
「は、はい」
(うわっ、全然普通でした!)
レイナは自分だけが意識してたみたいで恥ずかしさを感じる。
イーサンは普段から周りに女性がいるから、こういう事には慣れているのかもしれないとレイナは考える事にした。
「まったく素直じゃないですね」
去り際にラウルがイーサン言った言葉は、レイナにはそんな風に聞こえた気がしたが本当の事は分からない。
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