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第8話 温かく見守ってくださいね
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「レイナは何だか不思議な娘ですね、イーサン様」
イーサンに男が話しかける。
「ああ、そうだな」
イーサンは側近であるラウルに答えた。
ラウルは幼少よりイーサンに仕えていて、護衛としてのエリート教育を施されている。
主であるイーサンの盾となり剣となり数々の相手を屠り守ってきた。
イーサンに何かあれば自分も生きてはいないだろうと周りには豪語している。
剣も魔法も出来る優秀な側近だ。
そんなラウルにイーサンも絶大な信頼をおいているし、立場は違うけれど年齢も近い事もあり、友として砕けた話をしたりもする間柄だ。
「育ちは良さそうだけど、たまに町娘のような振る舞いや言動もみられる」
「はい。私もその様な印象を受けました」
貴族の娘であればあのぐらいの年齢の娘ならもっと洗練されていてもいいはず。
リーネであれば問題ないのだろうけど、『神木れいな』としての部分がイーサンとラウルの評価を狂わせている。
『神木れいな』としてはその様な教育をされてきた訳ではないので、仕方がないと言えば仕方がないことだ。
「【鑑定】はしたのだろう?」
「はい。【ヒール】と【鑑定】が使えるぐらいで特に怪しいスキルはありませんでした」
「そうか。だが、毒を中和していたな?」
レイナに刺さった矢に毒が塗られていたのは間違いない。
イーサンもその事は確認している。
解毒剤やスキルを使わずに回復したレイナをイーサン達は不思議に思っていた。
「はい。彼女のスキルだと考えられますが、毒に関するスキルも見つかりませんでした」
「まあ、【鑑定】では確認出来ないスキルがあるらしいからな。たぶん毒に関する特別なスキルを持っているのだろうな」
「ええ、そう考えるのが妥当かと……」
あながち二人の予想は間違ってはいない。
しかし後にレイナの使う能力が根本的に違う事が解り、またその異常さに気付く事となる。
ラウルはレイナがイーサンに危害を加える人間ではないとは思っているが、護衛としては一応警戒しないといけないと考えている。
しかし身を挺して毒矢からイーサンを守ったレイナに嫌な印象は持ってはいない。
自分が守るべき対象を救ってくれた人間に恩義を感じるのは当然の事なのだろう。
「あの娘を本国に連れて行かれるのですか?」
「ああ、何だか放っておけなくてな。メイド長に預けたいと思う」
「分かりました。手配しておきます」
「頼む」
イーサンが女性に関して自分の我を通すのは珍しい。
そんなイーサンの変化にラウルは少し嬉しくなる。
「今後あのネックレスは使用されるのですか?」
「ああ、本人はそう言っていたな。目立つのが嫌なのと兄から貰ったものだから身に付けたいようだ」
「確かにあの容姿では目立ってしまいますからね」
銀髪で赤い瞳はこの世界では珍しい存在だ。
まったくいないという訳ではないが、イーサンとラウルは見たことがない。
どんな手を使っても希少な存在を手に入れようとする者は必ず出てくる。
「あれだけの美貌だし一人旅をする様な無鉄砲な娘だからな、それとなく注意して見ておいてやってくれ」
「承知いたしました」
この世界では女性の一人旅は珍しい。
腕に覚えのある者なら未だしも、武芸の心得も無い娘が一人旅など盗賊や魔物の格好の餌食だ。
レイナは日本人であった為、女性が一人旅をするのは普通の事だと考えてしまうのは当然であり疑問すら持たなかった。
リーネには知識はあったけれど、それ程外出の機会もなく危機感がなかった。
さらに婚約破棄と追放という現実を突きつけられ、記憶の混同もしていた状態でレイナも混乱していたのは否めない。
逃げる様に家を飛び出したのは仕方がない事だろう。
そんなレイナをイーサン達が無鉄砲だと感じるのは当然であり、レイナにその自覚がない事に不思議さを感じるのも当然の事だ。
イーサンの複雑な表情と若干の優しい笑みを見た時ラウルは、珍しさを感じるが顔には出さない。
レイナの動向を探る者を、または守れる者を誰にしようかと頭を回転させるラウルだった。
イーサンに男が話しかける。
「ああ、そうだな」
イーサンは側近であるラウルに答えた。
ラウルは幼少よりイーサンに仕えていて、護衛としてのエリート教育を施されている。
主であるイーサンの盾となり剣となり数々の相手を屠り守ってきた。
イーサンに何かあれば自分も生きてはいないだろうと周りには豪語している。
剣も魔法も出来る優秀な側近だ。
そんなラウルにイーサンも絶大な信頼をおいているし、立場は違うけれど年齢も近い事もあり、友として砕けた話をしたりもする間柄だ。
「育ちは良さそうだけど、たまに町娘のような振る舞いや言動もみられる」
「はい。私もその様な印象を受けました」
貴族の娘であればあのぐらいの年齢の娘ならもっと洗練されていてもいいはず。
リーネであれば問題ないのだろうけど、『神木れいな』としての部分がイーサンとラウルの評価を狂わせている。
『神木れいな』としてはその様な教育をされてきた訳ではないので、仕方がないと言えば仕方がないことだ。
「【鑑定】はしたのだろう?」
「はい。【ヒール】と【鑑定】が使えるぐらいで特に怪しいスキルはありませんでした」
「そうか。だが、毒を中和していたな?」
レイナに刺さった矢に毒が塗られていたのは間違いない。
イーサンもその事は確認している。
解毒剤やスキルを使わずに回復したレイナをイーサン達は不思議に思っていた。
「はい。彼女のスキルだと考えられますが、毒に関するスキルも見つかりませんでした」
「まあ、【鑑定】では確認出来ないスキルがあるらしいからな。たぶん毒に関する特別なスキルを持っているのだろうな」
「ええ、そう考えるのが妥当かと……」
あながち二人の予想は間違ってはいない。
しかし後にレイナの使う能力が根本的に違う事が解り、またその異常さに気付く事となる。
ラウルはレイナがイーサンに危害を加える人間ではないとは思っているが、護衛としては一応警戒しないといけないと考えている。
しかし身を挺して毒矢からイーサンを守ったレイナに嫌な印象は持ってはいない。
自分が守るべき対象を救ってくれた人間に恩義を感じるのは当然の事なのだろう。
「あの娘を本国に連れて行かれるのですか?」
「ああ、何だか放っておけなくてな。メイド長に預けたいと思う」
「分かりました。手配しておきます」
「頼む」
イーサンが女性に関して自分の我を通すのは珍しい。
そんなイーサンの変化にラウルは少し嬉しくなる。
「今後あのネックレスは使用されるのですか?」
「ああ、本人はそう言っていたな。目立つのが嫌なのと兄から貰ったものだから身に付けたいようだ」
「確かにあの容姿では目立ってしまいますからね」
銀髪で赤い瞳はこの世界では珍しい存在だ。
まったくいないという訳ではないが、イーサンとラウルは見たことがない。
どんな手を使っても希少な存在を手に入れようとする者は必ず出てくる。
「あれだけの美貌だし一人旅をする様な無鉄砲な娘だからな、それとなく注意して見ておいてやってくれ」
「承知いたしました」
この世界では女性の一人旅は珍しい。
腕に覚えのある者なら未だしも、武芸の心得も無い娘が一人旅など盗賊や魔物の格好の餌食だ。
レイナは日本人であった為、女性が一人旅をするのは普通の事だと考えてしまうのは当然であり疑問すら持たなかった。
リーネには知識はあったけれど、それ程外出の機会もなく危機感がなかった。
さらに婚約破棄と追放という現実を突きつけられ、記憶の混同もしていた状態でレイナも混乱していたのは否めない。
逃げる様に家を飛び出したのは仕方がない事だろう。
そんなレイナをイーサン達が無鉄砲だと感じるのは当然であり、レイナにその自覚がない事に不思議さを感じるのも当然の事だ。
イーサンの複雑な表情と若干の優しい笑みを見た時ラウルは、珍しさを感じるが顔には出さない。
レイナの動向を探る者を、または守れる者を誰にしようかと頭を回転させるラウルだった。
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