上 下
20 / 33

予想外の提案

しおりを挟む
玄関を破壊してエントランスホールに入ってきた男に両親は警戒心を露わにしていた。

「随分なご挨拶だな。私達が見えていないのか? 」

お父様がそう言うと何を思ったのかパチンと指を鳴らすとさっきの光景が嘘の様に元に戻った。


「お初にお目にかかります。ルーマン侯爵並びに公爵夫人。私はジャック・ハーネスト、2週間前に魔法伯爵の位をいただいた者です。」

彼の名前を聞くとふむと口に手を当てた。

「あぁ、君の事は知っているよ。魔法伯爵の位なんて数十年は貰ったなんて記録にないからね。……しかし、君と私達は本当に初めましてかね? 」

お父様が言いたいのは10年前の事だろう。やっぱり魔獣討伐に参加していたんだ。
お父様にそう言葉をかけられてジャックは目を丸くしていた。


「……会ったことございましたか? 」

(う、うわー! これはややこしくなる予感しかしない!! )


すると、バキンっ!と音がしたのでそちらの方を振り向くとお母様の持っていた扇子が真っ二つに折れていた。


「10年も前、覚えて無いのは仕方がありませんわ。では何故リリアナに向かって娘とおっしゃったのかしら? 」

「それは俺……じゃなくて、私の魔力が彼女に流れている魔力と同じだからです。」

この世界の魔法は9割が親から子供へ受け継がれる。同じ魔力であることは父親であるジャックも感じるし、さっきのジャックが使った魔法でリリアナも感じ取っている筈だ。

(あぁ……、皆がリリアナの実父に気が付いてしまった……)


今はそれどころではないというのになぜ今なんだ。

悪い事は立て続けに起こるっていうけど実際に経験するとたまったものじゃない。さっきまで心臓が痛かったのに今度は頭が痛くなってきた。


「では、リリアナの事は今まで気づかなかったとでも? 娘と今になって分かったなんて言わないですわよね? 」


お母様の言葉を要約すると『娘がいる事は分かってたけど放置してたって事よね? 此処に来たのは伯爵になったから後継者としてリリアナが欲しいってことだよね? 』という事になるけど逆にそれ以外でこの男が来ることってあるのかしら……?

「侯爵夫人のお考えで間違いはないですけど、一つだけ訂正をさせて下さい。私は4年前から娘を探しておりました。」


「え、そんなに早くから!?」

思わず声が出てしまい慌てて口を閉じたが、気づいてしまったジャックがこちらを向いた。

「あれ? シュリーじゃないかどうしてこんなことろに居るの……って聞くのは野暮か。君って死んだことになってるアシュリー侯爵令嬢だったんだね。」


そう言った時彼の横を凄い速度で光が飛んで行った。こんなことが出来るのなんて家には一人しかいない。


「さっきから何なの? 実の娘とか何か言っているけど、今それどころじゃないの。相手している暇ないから帰ってよ。」


後、お母様を大事にしない人の所には行かないからと言い切ったリリアナに胸がきゅっとなった。

(こんなに思ってくれているなんて……どうしよう泣きそう……)


私が感無量になっていると、リリアナの言葉にジャックはうーんと考え出した。個人的にはリリアナの言う通りジャックを相手にしている暇はないので考えるなら家で考えてほしいなと思っている時にシュリーとジャックに声をかけられた。

「何でしょう? 」

「俺と結婚してほしい!! 」



---この男なんて言った?


ジャックの言葉に今日一の冷たい空気が屋敷を包んだのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話

七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。 離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...