27 / 33
5章 宮守と夕花の関係①
しおりを挟む
五章
白夜は本当に何もせず、ただ夕花を抱きしめて眠った。
次の日、朝から白夜は「気になることがある」とだけ告げ、どこかに出かけて行った。
「白夜さん……大丈夫でしょうか」
不安が心を占め、俯く夕花に亘理は微笑んだ。
「ご主人がああいう態度の時は任せておけば大丈夫です!」
「でも……」
「気にせず、気分転換を……と言いたいところですが、夕花様は考え込んでしまう性質ですからね。うーん、そうだ、クイズをしましょう! 夕花様、僕って何歳に見えますか?」
「え?」
思いがけない亘理の言葉に、夕花は目を瞬かせた。
「ほらほら、答えてください!」
せっつかれて、夕花は慌てる。
「え、ええと……十歳くらい、かしら。亘理くん、とても落ち着いてるし、家事も得意だから、もっと上にも感じるけれど、手足がまだ細いから……」
そう答えた夕花に、亘理は両手をクロスさせた。
「外れでーす。僕は十三歳です。今年十四歳になります」
「ええっ!」
夕花の頬が朱に染まる。言動は確かにそれくらいに感じるが、見た目はそう見えない。とはいえ、見た目で判断してしまった自分を恥じた。
「ご、ごめんなさい……」
「いいえ、この身長ですから、よく間違われますし。実は僕、白夜様に助けてもらったんです。長くなるけど、聞いてくれますか?」
亘理は穏やかな顔で話し始めた。
「僕の両親は、父は一般人で母が吸血鬼の、まあ、よくある駆け落ち夫婦だったんです。でも生まれた僕のこともすっごく愛してくれました。初血も多めに飲ませてもらったみたいで、そのおかげか蝙蝠に変身して飛ぶのが得意になりました! でも両親は僕が幼い頃に病気で相次いで亡くなってしまい、僕は孤児になりました。この髪は目立つもので、まあそれなりに虐められたり、排斥されたり。それから体が小さいせいで働く場所も見つからず、まあちょっと悪い人の仲間に入りかけてました。蝙蝠に変身できるのがバレて、強盗の下見役にされそうになったんです。逃げようにも、監禁されてしまって……」
夕花はその話を聞いて絶句した。亘理の明るさはそんな辛いことを一切感じさせないからだ。
「強盗の下見先がこのお屋敷でした。僕は亡き両親に恥じるようなことだけはしたくないって思っていたんです。だから下見に行かされた時に、ご主人にワザと見つかって、僕のことを捕まえてくださいってお願いしたんです。そうしたら、ご主人は僕じゃなく、僕を使おうとした悪い人を一人残らず捕まえちゃいました。そして、そのまま僕を雇ってくれたんです。ね、ご主人はすごいでしょう!」
亘理はえっへんと胸を張る。
「慎さんも似たり寄ったりですよ。慎さんは男手一つで娘さんを育ててます。でも娘さんは幼い頃から肺に病気があって、治療費のために借金をしたそうなんです。その借金が膨れ上がって、どうにもならなくなった時、たまたま縁があったご主人が手を差し伸べたんだそうです。真っ当だけど、きつくてうんと大変な仕事を紹介する代わりに、娘さんを鹿代子様の病院で入院させたそうです。今は娘さんも健康を取り戻したし、借金も返し終わったんですって。それでも今度は娘さんの結婚費用を稼ぐためにって、夕花様の送迎以外にもいっぱい仕事を掛け持ちしてるんですよ」
「そうだったのね」
「ご主人は、困った人にはつい手を差し伸べてしまうお人好しな部分もあります。それ以上に、とっても頼れる人なんです。だから、夕花様の件でも何か気になることがあって、それを調べに行ったんですよ。きっと夕花様のためになるはずです。だから、安心して待っていましょう! 甘いものを食べて、お茶を飲んで、ご主人の帰りを待つのが、今の夕花様の仕事ですからね!」
亘理に力説され、夕花は頷いた。
白夜を信じよう。そう思ったのだった。
夜になってようやく戻ってきた白夜から聞いた話に、夕花は目をぱちくりさせるしかなかった。
「……宮守様が、私のお婆様……ですか?」
まさか、という気持ちでいっぱいだった。母からもそんな話は聞いたことがない。しかし白夜を信じようと思ったばかりだ。
「ああ、間違いない。情報は一般には伏せられていたが、調べたところ現宮守様の苗字は青波。歴史ある家柄で、しばしば青色の幻羽持ちを輩出する一族だ」
幻羽はそのほとんどが白であり、特別な異能の力はない。幻羽を出すこと自体が異能の力とされているくらいだ。
しかしごく稀に色付きの幻羽を持つ人間がいる。色付きの幻羽持ちは、守護、肉体疲労の軽減、精神への癒しといった異能を持つのだという。そして色付きの幻羽持ちは遺伝するのだと教えてくれた。
また、代々の宮守はそんな希少な色付きの幻羽を持つ女性と決められている。都の守護のための結界の礎が宮城の中心部にあり、宮守がそこに力を送ることで、結界を維持しているそうだ。
幻羽族であるのに、そういった事情に詳しくない夕花は、白夜からそう説明をされた。白夜の元婚約者、千鶴の赤坂家も色付きの幻羽を多く輩出する一族だそうだ。
「で、でもお母様の旧姓とは違います。昔聞いたところによると、小早川だったかと……」
「ああ。だが調べたところ、青波様は一度結婚をし、娘を出産している。しかしその後、青の幻羽持ちであることから、宮守に就くことを求められ、離婚をして青波姓に戻ったようだ。結婚相手の姓は小早川。青波様の娘……君のお母さんは、そのまま小早川家で育てられたんだ」
「ほ、本当に……? でも、どうして……」
母は一度もその話をしなかった。
「一度宮守となったら、役目を終えるまで宮城からは出てはならない決まりだそうだ。帝の命を守る重要な役目だからね。役目の間は家族にも会えない。何代も前の宮守の中には命を狙われたり、家族を人質に取られることもあったらしい。それもあって、今は情報を制限している。きっと夕花のお婆様は娘さん、つまり夕花のお母さんを巻き込むようなことを避けたかったのだろう。同様に、君のお母さんも君を守ろうとしていたんだ」
夕花はそれを聞いて不意に思い出したことがあった。
かつて、亡き母から祖母の話を聞いたことがある。とても優しい人なのだと語ってくれた。夕花が会ってみたいと言ったら「それは難しいわね」と悲しそうに微笑んでいた。てっきり、夕花が羽なしだから会わせられないという意味だと思い込んでいたのだが──
「でも、どうして急にそんなことを調べたのですか?」
「昨日の愛菜の様子が気になってね。渡した金を返させる話をしても平気そうだった。それまで手を出さなかった君に、急にちょっかいをかけてきたのも気になる。……つまり、大金が入ってくるあてがあるんじゃないかと思ってね。そこで調べたら宮守を退任する青波様に繋がったというわけだ」
夕花にはどうするつもりかわからないが、宮守という大役を務めていた人であればかなりの財産があるだろう。愛菜はそれを何らかの方法で狙っているのかもしれない。
「夕花、青波様に会ってみたいか?」
「お婆様に会えるのですか!?」
「……実際に会えるかはわからない。ただ、宮守の交代の儀が近々行われる。月森家当主の婚約者としてなら夕花も出席することは可能だ。遠目に見るだけで終わるかもしれないが」
「あ、会いたいです……! 見るだけでも構いません」
「わかった。普段は招待されても、こういう公式行事は欠席するんだが、今回は出席することにしよう」
「白夜さん……ごめんなさい。私、ご迷惑ばかりかけてしまって……」
「何を言うんだ。俺が夕花を喜ばせたいだけなんだから」
白夜は微笑んで夕花の頬を撫でる。
頬だけでなく、胸まで温かな気持ちになった。
白夜は夕花にまた新しい着物やドレスを用意してくれた。
「こ、こんなに……まだ袖を通していない着物もたくさんあるんですよ。ほら、こないだの鹿代子さんの誕生日パーティーのドレスだって……」
「だが交代の儀は正式な式典だ。出席者も昼用の正装になる。こないだのは夜用のドレスだったからね。用途が違うんだよ」
そう説明され、夕花も納得した。
しかし白夜が用意してくれた着物やドレスが大量にあり、眉を寄せた。
「それにしても多すぎます。式典って何日もあるのですか?」
「いや、一日だ」
「で、では、一枚でいいのではないでしょうか」
白夜は真顔で言った。
「……俺が夕花に用意したかったんだ。どれも似合うと考えたら、選べなくなってしまった」
夕花はそれを聞いて頬を染めた。
「ほら、見てごらん。この振袖の花の模様は夕花に似合う。色はこっちの方が似合うと思うが、合わせる帯が難しそうだ。それにドレスもいい。君は華奢だから、膨らんだ袖で、柔らかい生地のドレスが似合うと思って。それから──」
白夜は買った着物やドレスのどこがどう夕花に似合うか、一枚一枚説明を始める。夕花はだんだんこんがらがり、頭を抱えた。当日の着ていく一枚を選ぶのに、とんでもない時間がかかってしまったのだった。
交代の儀、当日。
その日は祝日となり、代書屋だけでなくほとんどの店は営業自粛を求められていた。おかげで夕花は代書屋の仕事を休むことなく、交代の儀に出席できたのだった。
交代の儀が行われる会場は、宮城の敷地内にある洋風の会館である。当然、通常なら絶対に入れない場所だ。夕花も初めて宮城内に足を踏み入れた。白夜の屋敷や、鹿代子の屋敷とも雰囲気がまったく異なる巨大で荘厳な建物は、夕花一人ならば臆してしまい、入ることすら難しかっただろう。
しかも、白夜が懸念していた通り、広い会場の後ろで隅の方の席だった。
招待された立場とはいえ、幻羽族の嫌う吸血鬼であるからなのかもしれない。夕花の周囲は吸血鬼の人に多い色素の薄い人々ばかりだった。
そして、前方の席は幻羽族らしき人々で固められているようだ。
目一杯背伸びをして、ようやく人の頭の隙間から見えた宮守はヴェールを被っていて肝心の顔が見えなかった。
帝も御簾の奥で姿を現さない。
「やっと見えましたが……顔は見えないですね」
「式典でも顔は出さないのか。夕花、せっかく来たのにすまない」
「いえ、こんな立派な式典に参加出来ただけで光栄ですから」
「そう言ってもらえると助かる」
白夜は微笑んで夕花の頭を撫でる。人が多くて緊張していたが、それだけで強張っていた体から力が抜け、ホッとしたのだった。
式典は途中で音楽の演奏や舞の披露、幻羽族の偉い人のスピーチなどが挟まり、夕花は長い式典に疲れてしまった。
「ちょっと休憩をしてもいいでしょうか」
式典の第一部が終わったところで、夕花は白夜に断りをいれて席を立った。
「ああ、途中まで俺も行こう」
ちょうど区切りがついたこともあり、会場ロビーは人々で賑わっていた。白夜と別れてお手洗いに向かう。
用を終えてロビーに出たが、人が多く白夜の姿が見当たらない。キョロキョロしていた夕花の目に、愛菜が綺麗な振袖を着てこちらに向かってくるのが見えた。おそらく父も招待されており、愛菜と一緒に参加しているのだろう。愛菜とはまだ距離があり、夕花には気付いていないようだ。しかし、彼女もお手洗いに向かう途中らしく、このままでは進行方向にいる夕花にいつ気付いてもおかしくない。
夕花は顔を背けたまま、ロビーの端の細い廊下をさっと曲がる。
物理的に視界が遮られ、夕花はホッと息を吐いた。
混雑したロビーとは異なり、この細い廊下には人気がない。先ほどからずっと感じていた疲労感が人酔いのせいもあったのだろう。人の少ない場所でようやく楽になってきた。
「そこの娘、ここは立ち入り禁止だ」
壁に寄りかかり、ゆっくり呼吸していると、突然そんな声をかけられ、夕花は肩を震わせた。
「す、すみません!」
この会場を巡回していた衛士たちの姿に、夕花は反射的に頭を下げた。
「立ち入り禁止の札が見えなかったのか?」
「み、見落としていたようです……」
愛菜から隠れようとするあまり、立ち入り禁止の札に気付かなかったのだ。
衛士は不審げに夕花をジロジロ見てくる。
「本当か? まさか新しい宮守様を探りにきたのではあるまいな」
「あ、あの……ち、違います……」
大柄な衛士二人に睨まれ、夕花は萎縮した。かつて、橋門を抜ける際にこうやって問い詰められたことを思い出してしまったのだ。それが却って怪しい態度に見えてしまったのかもしれない。衛士がジリジリ距離を狭めてくる。
「では何故そんなにも狼狽える? やましいことがあるのではないか?」
「つ、連れと逸れてしまって、探していただけなんです」
「それだけで立ち入り禁止区域に入り込むはずがないだろう! 嘘をつくな!」
怒鳴られて夕花は涙ぐむ。
衛士は夕花に警杖を突き付けた。刃物ではないとはいえ、恐ろしさに震える。
「本当に……そんなつもりは……も、申し訳ありません……どうかお許しを……」
「やはり怪しいな。どこの家の者だ。身分を証明するものは?」
夕花は血の気が引いた。
月森家の名前を出したら白夜に迷惑がかかってしまうかもしれない。言っていいものだろうか。逡巡する夕花を、衛士はまたもや怒鳴りつけた。
「おいっ、出せないのかっ!?」
「まあまあ、そんなに威丈高に言うのはおよしなさい。若いお嬢さんではありませんか」
その時、穏やかな年配の女性の声が割って入ってくれた。
「ですが……我々もこれが職務ですので」
「もちろんわかっていますよ。でも、怒鳴る必要はないでしょう」
「は、はあ……申し訳ございません」
彼女はかなり偉い人なのか、衛士の態度が改まったのを感じた。
と、そこに白夜の声が聞こえた。
「──申し訳ありません。彼女は月森家の縁者です」
白夜は急ぎ足で現れ、夕花を庇ってくれる。おそらく身分を証明するものを見せたのだろう。衛士の態度はすぐに軟化した。
「……行ってよし。立ち入り禁止区域には気をつけなさい」
「は、はい。すみませんでした」
夕花は深々と頭を下げた。
「お連れの方とと会えてよかったわね」
「あ、ありがとうございました……」
顔を上げると、穏やかな雰囲気の老婦人と目があった。優しそうな笑みを浮かべてくれる。
彼女は立ち入り禁止区域の奥に消えていった。
「そろそろ第二部が始まるのに君が戻ってこないから探していたんだ」
「す、すみません。愛菜がいたので見つからないように隠れたら、立ち入り禁止の場所だったみたいで……」
「そうだったのか。ところで今の女性は?」
「私もわからないのです。怒鳴られていたところを庇ってもらいました」
「立ち入り禁止区域に向かっていたし、案外、今の人が夕花の祖母かもしれないな」
白夜のそんな冗談に、夕花は微笑む。
「ふふ、そうだったらいいですね。優しそうな方でしたから」
「それじゃ、会場に戻ろう」
「はい」
白夜は本当に何もせず、ただ夕花を抱きしめて眠った。
次の日、朝から白夜は「気になることがある」とだけ告げ、どこかに出かけて行った。
「白夜さん……大丈夫でしょうか」
不安が心を占め、俯く夕花に亘理は微笑んだ。
「ご主人がああいう態度の時は任せておけば大丈夫です!」
「でも……」
「気にせず、気分転換を……と言いたいところですが、夕花様は考え込んでしまう性質ですからね。うーん、そうだ、クイズをしましょう! 夕花様、僕って何歳に見えますか?」
「え?」
思いがけない亘理の言葉に、夕花は目を瞬かせた。
「ほらほら、答えてください!」
せっつかれて、夕花は慌てる。
「え、ええと……十歳くらい、かしら。亘理くん、とても落ち着いてるし、家事も得意だから、もっと上にも感じるけれど、手足がまだ細いから……」
そう答えた夕花に、亘理は両手をクロスさせた。
「外れでーす。僕は十三歳です。今年十四歳になります」
「ええっ!」
夕花の頬が朱に染まる。言動は確かにそれくらいに感じるが、見た目はそう見えない。とはいえ、見た目で判断してしまった自分を恥じた。
「ご、ごめんなさい……」
「いいえ、この身長ですから、よく間違われますし。実は僕、白夜様に助けてもらったんです。長くなるけど、聞いてくれますか?」
亘理は穏やかな顔で話し始めた。
「僕の両親は、父は一般人で母が吸血鬼の、まあ、よくある駆け落ち夫婦だったんです。でも生まれた僕のこともすっごく愛してくれました。初血も多めに飲ませてもらったみたいで、そのおかげか蝙蝠に変身して飛ぶのが得意になりました! でも両親は僕が幼い頃に病気で相次いで亡くなってしまい、僕は孤児になりました。この髪は目立つもので、まあそれなりに虐められたり、排斥されたり。それから体が小さいせいで働く場所も見つからず、まあちょっと悪い人の仲間に入りかけてました。蝙蝠に変身できるのがバレて、強盗の下見役にされそうになったんです。逃げようにも、監禁されてしまって……」
夕花はその話を聞いて絶句した。亘理の明るさはそんな辛いことを一切感じさせないからだ。
「強盗の下見先がこのお屋敷でした。僕は亡き両親に恥じるようなことだけはしたくないって思っていたんです。だから下見に行かされた時に、ご主人にワザと見つかって、僕のことを捕まえてくださいってお願いしたんです。そうしたら、ご主人は僕じゃなく、僕を使おうとした悪い人を一人残らず捕まえちゃいました。そして、そのまま僕を雇ってくれたんです。ね、ご主人はすごいでしょう!」
亘理はえっへんと胸を張る。
「慎さんも似たり寄ったりですよ。慎さんは男手一つで娘さんを育ててます。でも娘さんは幼い頃から肺に病気があって、治療費のために借金をしたそうなんです。その借金が膨れ上がって、どうにもならなくなった時、たまたま縁があったご主人が手を差し伸べたんだそうです。真っ当だけど、きつくてうんと大変な仕事を紹介する代わりに、娘さんを鹿代子様の病院で入院させたそうです。今は娘さんも健康を取り戻したし、借金も返し終わったんですって。それでも今度は娘さんの結婚費用を稼ぐためにって、夕花様の送迎以外にもいっぱい仕事を掛け持ちしてるんですよ」
「そうだったのね」
「ご主人は、困った人にはつい手を差し伸べてしまうお人好しな部分もあります。それ以上に、とっても頼れる人なんです。だから、夕花様の件でも何か気になることがあって、それを調べに行ったんですよ。きっと夕花様のためになるはずです。だから、安心して待っていましょう! 甘いものを食べて、お茶を飲んで、ご主人の帰りを待つのが、今の夕花様の仕事ですからね!」
亘理に力説され、夕花は頷いた。
白夜を信じよう。そう思ったのだった。
夜になってようやく戻ってきた白夜から聞いた話に、夕花は目をぱちくりさせるしかなかった。
「……宮守様が、私のお婆様……ですか?」
まさか、という気持ちでいっぱいだった。母からもそんな話は聞いたことがない。しかし白夜を信じようと思ったばかりだ。
「ああ、間違いない。情報は一般には伏せられていたが、調べたところ現宮守様の苗字は青波。歴史ある家柄で、しばしば青色の幻羽持ちを輩出する一族だ」
幻羽はそのほとんどが白であり、特別な異能の力はない。幻羽を出すこと自体が異能の力とされているくらいだ。
しかしごく稀に色付きの幻羽を持つ人間がいる。色付きの幻羽持ちは、守護、肉体疲労の軽減、精神への癒しといった異能を持つのだという。そして色付きの幻羽持ちは遺伝するのだと教えてくれた。
また、代々の宮守はそんな希少な色付きの幻羽を持つ女性と決められている。都の守護のための結界の礎が宮城の中心部にあり、宮守がそこに力を送ることで、結界を維持しているそうだ。
幻羽族であるのに、そういった事情に詳しくない夕花は、白夜からそう説明をされた。白夜の元婚約者、千鶴の赤坂家も色付きの幻羽を多く輩出する一族だそうだ。
「で、でもお母様の旧姓とは違います。昔聞いたところによると、小早川だったかと……」
「ああ。だが調べたところ、青波様は一度結婚をし、娘を出産している。しかしその後、青の幻羽持ちであることから、宮守に就くことを求められ、離婚をして青波姓に戻ったようだ。結婚相手の姓は小早川。青波様の娘……君のお母さんは、そのまま小早川家で育てられたんだ」
「ほ、本当に……? でも、どうして……」
母は一度もその話をしなかった。
「一度宮守となったら、役目を終えるまで宮城からは出てはならない決まりだそうだ。帝の命を守る重要な役目だからね。役目の間は家族にも会えない。何代も前の宮守の中には命を狙われたり、家族を人質に取られることもあったらしい。それもあって、今は情報を制限している。きっと夕花のお婆様は娘さん、つまり夕花のお母さんを巻き込むようなことを避けたかったのだろう。同様に、君のお母さんも君を守ろうとしていたんだ」
夕花はそれを聞いて不意に思い出したことがあった。
かつて、亡き母から祖母の話を聞いたことがある。とても優しい人なのだと語ってくれた。夕花が会ってみたいと言ったら「それは難しいわね」と悲しそうに微笑んでいた。てっきり、夕花が羽なしだから会わせられないという意味だと思い込んでいたのだが──
「でも、どうして急にそんなことを調べたのですか?」
「昨日の愛菜の様子が気になってね。渡した金を返させる話をしても平気そうだった。それまで手を出さなかった君に、急にちょっかいをかけてきたのも気になる。……つまり、大金が入ってくるあてがあるんじゃないかと思ってね。そこで調べたら宮守を退任する青波様に繋がったというわけだ」
夕花にはどうするつもりかわからないが、宮守という大役を務めていた人であればかなりの財産があるだろう。愛菜はそれを何らかの方法で狙っているのかもしれない。
「夕花、青波様に会ってみたいか?」
「お婆様に会えるのですか!?」
「……実際に会えるかはわからない。ただ、宮守の交代の儀が近々行われる。月森家当主の婚約者としてなら夕花も出席することは可能だ。遠目に見るだけで終わるかもしれないが」
「あ、会いたいです……! 見るだけでも構いません」
「わかった。普段は招待されても、こういう公式行事は欠席するんだが、今回は出席することにしよう」
「白夜さん……ごめんなさい。私、ご迷惑ばかりかけてしまって……」
「何を言うんだ。俺が夕花を喜ばせたいだけなんだから」
白夜は微笑んで夕花の頬を撫でる。
頬だけでなく、胸まで温かな気持ちになった。
白夜は夕花にまた新しい着物やドレスを用意してくれた。
「こ、こんなに……まだ袖を通していない着物もたくさんあるんですよ。ほら、こないだの鹿代子さんの誕生日パーティーのドレスだって……」
「だが交代の儀は正式な式典だ。出席者も昼用の正装になる。こないだのは夜用のドレスだったからね。用途が違うんだよ」
そう説明され、夕花も納得した。
しかし白夜が用意してくれた着物やドレスが大量にあり、眉を寄せた。
「それにしても多すぎます。式典って何日もあるのですか?」
「いや、一日だ」
「で、では、一枚でいいのではないでしょうか」
白夜は真顔で言った。
「……俺が夕花に用意したかったんだ。どれも似合うと考えたら、選べなくなってしまった」
夕花はそれを聞いて頬を染めた。
「ほら、見てごらん。この振袖の花の模様は夕花に似合う。色はこっちの方が似合うと思うが、合わせる帯が難しそうだ。それにドレスもいい。君は華奢だから、膨らんだ袖で、柔らかい生地のドレスが似合うと思って。それから──」
白夜は買った着物やドレスのどこがどう夕花に似合うか、一枚一枚説明を始める。夕花はだんだんこんがらがり、頭を抱えた。当日の着ていく一枚を選ぶのに、とんでもない時間がかかってしまったのだった。
交代の儀、当日。
その日は祝日となり、代書屋だけでなくほとんどの店は営業自粛を求められていた。おかげで夕花は代書屋の仕事を休むことなく、交代の儀に出席できたのだった。
交代の儀が行われる会場は、宮城の敷地内にある洋風の会館である。当然、通常なら絶対に入れない場所だ。夕花も初めて宮城内に足を踏み入れた。白夜の屋敷や、鹿代子の屋敷とも雰囲気がまったく異なる巨大で荘厳な建物は、夕花一人ならば臆してしまい、入ることすら難しかっただろう。
しかも、白夜が懸念していた通り、広い会場の後ろで隅の方の席だった。
招待された立場とはいえ、幻羽族の嫌う吸血鬼であるからなのかもしれない。夕花の周囲は吸血鬼の人に多い色素の薄い人々ばかりだった。
そして、前方の席は幻羽族らしき人々で固められているようだ。
目一杯背伸びをして、ようやく人の頭の隙間から見えた宮守はヴェールを被っていて肝心の顔が見えなかった。
帝も御簾の奥で姿を現さない。
「やっと見えましたが……顔は見えないですね」
「式典でも顔は出さないのか。夕花、せっかく来たのにすまない」
「いえ、こんな立派な式典に参加出来ただけで光栄ですから」
「そう言ってもらえると助かる」
白夜は微笑んで夕花の頭を撫でる。人が多くて緊張していたが、それだけで強張っていた体から力が抜け、ホッとしたのだった。
式典は途中で音楽の演奏や舞の披露、幻羽族の偉い人のスピーチなどが挟まり、夕花は長い式典に疲れてしまった。
「ちょっと休憩をしてもいいでしょうか」
式典の第一部が終わったところで、夕花は白夜に断りをいれて席を立った。
「ああ、途中まで俺も行こう」
ちょうど区切りがついたこともあり、会場ロビーは人々で賑わっていた。白夜と別れてお手洗いに向かう。
用を終えてロビーに出たが、人が多く白夜の姿が見当たらない。キョロキョロしていた夕花の目に、愛菜が綺麗な振袖を着てこちらに向かってくるのが見えた。おそらく父も招待されており、愛菜と一緒に参加しているのだろう。愛菜とはまだ距離があり、夕花には気付いていないようだ。しかし、彼女もお手洗いに向かう途中らしく、このままでは進行方向にいる夕花にいつ気付いてもおかしくない。
夕花は顔を背けたまま、ロビーの端の細い廊下をさっと曲がる。
物理的に視界が遮られ、夕花はホッと息を吐いた。
混雑したロビーとは異なり、この細い廊下には人気がない。先ほどからずっと感じていた疲労感が人酔いのせいもあったのだろう。人の少ない場所でようやく楽になってきた。
「そこの娘、ここは立ち入り禁止だ」
壁に寄りかかり、ゆっくり呼吸していると、突然そんな声をかけられ、夕花は肩を震わせた。
「す、すみません!」
この会場を巡回していた衛士たちの姿に、夕花は反射的に頭を下げた。
「立ち入り禁止の札が見えなかったのか?」
「み、見落としていたようです……」
愛菜から隠れようとするあまり、立ち入り禁止の札に気付かなかったのだ。
衛士は不審げに夕花をジロジロ見てくる。
「本当か? まさか新しい宮守様を探りにきたのではあるまいな」
「あ、あの……ち、違います……」
大柄な衛士二人に睨まれ、夕花は萎縮した。かつて、橋門を抜ける際にこうやって問い詰められたことを思い出してしまったのだ。それが却って怪しい態度に見えてしまったのかもしれない。衛士がジリジリ距離を狭めてくる。
「では何故そんなにも狼狽える? やましいことがあるのではないか?」
「つ、連れと逸れてしまって、探していただけなんです」
「それだけで立ち入り禁止区域に入り込むはずがないだろう! 嘘をつくな!」
怒鳴られて夕花は涙ぐむ。
衛士は夕花に警杖を突き付けた。刃物ではないとはいえ、恐ろしさに震える。
「本当に……そんなつもりは……も、申し訳ありません……どうかお許しを……」
「やはり怪しいな。どこの家の者だ。身分を証明するものは?」
夕花は血の気が引いた。
月森家の名前を出したら白夜に迷惑がかかってしまうかもしれない。言っていいものだろうか。逡巡する夕花を、衛士はまたもや怒鳴りつけた。
「おいっ、出せないのかっ!?」
「まあまあ、そんなに威丈高に言うのはおよしなさい。若いお嬢さんではありませんか」
その時、穏やかな年配の女性の声が割って入ってくれた。
「ですが……我々もこれが職務ですので」
「もちろんわかっていますよ。でも、怒鳴る必要はないでしょう」
「は、はあ……申し訳ございません」
彼女はかなり偉い人なのか、衛士の態度が改まったのを感じた。
と、そこに白夜の声が聞こえた。
「──申し訳ありません。彼女は月森家の縁者です」
白夜は急ぎ足で現れ、夕花を庇ってくれる。おそらく身分を証明するものを見せたのだろう。衛士の態度はすぐに軟化した。
「……行ってよし。立ち入り禁止区域には気をつけなさい」
「は、はい。すみませんでした」
夕花は深々と頭を下げた。
「お連れの方とと会えてよかったわね」
「あ、ありがとうございました……」
顔を上げると、穏やかな雰囲気の老婦人と目があった。優しそうな笑みを浮かべてくれる。
彼女は立ち入り禁止区域の奥に消えていった。
「そろそろ第二部が始まるのに君が戻ってこないから探していたんだ」
「す、すみません。愛菜がいたので見つからないように隠れたら、立ち入り禁止の場所だったみたいで……」
「そうだったのか。ところで今の女性は?」
「私もわからないのです。怒鳴られていたところを庇ってもらいました」
「立ち入り禁止区域に向かっていたし、案外、今の人が夕花の祖母かもしれないな」
白夜のそんな冗談に、夕花は微笑む。
「ふふ、そうだったらいいですね。優しそうな方でしたから」
「それじゃ、会場に戻ろう」
「はい」
1
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる