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6 やり返す作戦その1
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レオンは魔術騎士団の仕事中に抜け出してきたらしく、話が済むと慌ただしくカフェから去っていった。
「差し当たって、君が存分に俺をいじめられるように二人で出かけることにするか。週末、十時に迎えに行く」
そんな一方的な約束を残して。
そして何故か私の目の前に、二個目のケーキがやってきていた。
「先に出られたオルブライト様がお支払いを済まされております」
「えっ、私の分もですか?」
「はい。それから帰りしなに、こちらを注文されていきましたが」
そう言って差し出されたのがこのチーズケーキだった。
上に焦げ目がついていて、とても美味しそうだ。チーズケーキも私の好物なのだ。
「お召し上がりになりますか? お包みも出来ますよ」
運んできてくれた店員さんにそう聞かれ、チーズケーキもここで食べていくことにした。
「うう、美味しい……」
外側は焦げているが苦くはない。むしろカラメルのような風味がついているくらいだ。味は酸味が少なく濃厚で、しっとりした口当たりがたまらない。
──レオンってば、やっぱり私の好みを知ってるみたい。
不思議だ。
てっきりレオンはこれからも私をいじめ抜くために婚約するつもりなのかと思ったが、それならこんな風に私を喜ばせる必要はないはずだ。
──わかった! きっと私がチーズケーキを嫌いだって誤解してるんだわ!
だからわざわざチーズケーキを注文してから去ったのだ。きっとリサーチ不足だったに違いない。
──でも、そうはいかないんだから!
美味しいチーズケーキを食べながら、週末にレオンに意地悪する算段をつけ始めたのだった。
※※※
作戦を練っているとあっという間に週末になった。前日には興奮して中々寝付けなかったくらいだ。
「よし、やるわよ!」
まるで私がこの日を楽しみにしていたみたいで心外だが、ようやくあの憎きレオンにやり返せるのだ。気合いも入るものだ。
「グレイス、レオン様が迎えにきましたよ。婚約を嫌がっていたと聞いたけれど、上手くいきそうでよかったこと」
上機嫌のお母様が私を呼びにきた。
約束の時刻通りだ。
お母様は私を見て眉を寄せた。
「まあグレイスってば、そんな地味な服で行くのつもりなの? 普段着でしょう、それ」
「ええ、これで構わないわ」
私はいつも通りの服装で向かうことにした。レオンにも騎士服はおろか、派手で目立つ格好はしないように連絡済みである。
「でも……せっかくレオン様とのデートなのだから、もっと可愛い服を着たらいいじゃないの。あ、もしかして服を買っていただく約束をしたのかしら?」
「はずれですお母様。待たせてしまうので、もう行きますね」
応接室に行くとレオンが待っていた。ちゃんと私が連絡した通り、比較的地味な服装である。レオンは外見が良すぎるのでそれでも目立つが仕方ない。
レオンは私を一目見るなりパッと顔を輝かせる。
──なるほど、今後はそういう演技をするってわけね。
まるで私たちの関係が上手くいっているかのような振る舞いをするつもりなのだ。今後私がレオンにいじめられて、それを告発したとしても誰にも信じてもらえないだろう。
──いいえ、負けないんだから!
「やあ、会いたかったよグレイス」
「そう。私はそうでもないけれど。早く行きましょう」
私の塩対応にお父様もお母様も真っ青になっているが、これはそういう勝負なのだ。
「グレイスはどこへ行きたいんだ? 今日は君が望む場所に向かおう」
私はニッと笑う。
幼い頃にいじめられたのをやり返すのだ。まずはレオンの苦手そうな場所に連れて行くことを思いついたのだ。
レオンは肉体派で、魔術騎士として普段から鍛えている。それに元々の体力が軒並み外れているのは、子供の頃から引っ張り回されたことで骨身に染みていた。
一方、私は子供の頃から本を読んだり室内で大人しく過ごすのが好きだ。
つまり私のホームであり、レオンにはアウェーとなる場所。
「──図書館に行くわ!」
私はビシッと告げる。
図書館はおそらくレオンにとって縁がなく、居心地が悪い場所のはずだ。
「わかった。王立図書館でいいんだな。行ったことはないけど場所は把握している。さあ、行こうか」
レオンは私をエスコートして歩き始めた。
行ったことがないとはしめたものだ。平気そうな顔をしているけれど、きっと内心では困っているはず。
「図書館で何か探し物か?」
「いいえ、本を読むのよ」
私は図書館が大好きだ。
紙とインクの匂い、パラパラと本を捲り物語に没頭する静謐なひととき。地味だと言われても私はそういう時間を愛している。
図書館へ着くとまっすぐに本棚へ向かった。
エスコートされてはいるが、私はレオンのことを気にせずに本を選び、日差しが当たらず、かといって薄暗くもない席に着席した。そのまま本を開いて黙々と読み始める。
レオンが隣の席に座り、私の方を見ているようだが、本に没頭するうちにそれすら気にならなくなっていく。
「……はあ、面白かったぁ」
しばし後、本を読み終わり、パタンと閉じた。
本の世界に浸っていた後の緩やかな疲労感も好きなのだ。肩が凝って頭が重いけれど、それを感じながら読んでいた本の内容を思い返すのも、たくさん読んだ実感がして楽しい。
ふと時計を見れば二時間以上経過していた。
ハッとレオンのことを思い出して横を向くと、レオンはこちらを見たままじっと座っている。
「あ、レオン……!」
いたことを忘れてました、とは言いにくい。
それにこれはレオンへの意地悪なのだ。
「グレイス、楽しかったか?」
「え、う、うん……」
レオンは焦れたり、うんざりした様子もなく、自然体で座っている。
「あ、あの……疲れなかった?」
「いや、全然。本を読むグレイスを眺めているだけで幸せだったから」
──おかしい。私のペースに巻き込んでうんざりさせる嫌がらせのはずなのに、レオンはまったく堪えた様子がない。
「ええと……」
「グレイスとお喋りもしたいんだが、図書館だし控えよう。そろそろ喉も乾いただろう」
レオンはそう言ってまた私をエスコートして図書館から出る。
「グレイスはこの後の予定を考えているのか?」
「う、ううん……」
図書館で思う存分本を読み、レオンをくたびれさせることしか考えていなかったのだ。
レオンの言う通り喉も乾いているし、お腹も空いてきた。
「じゃあ、ランチは俺のおすすめの店に行こうか」
──あれあれあれ? なんだかレオンのペースだ。おかしい。こんなはずじゃなかったのに。
私は頭にクエスチョンマークを浮かべたまま、レオンに着いていった。
「差し当たって、君が存分に俺をいじめられるように二人で出かけることにするか。週末、十時に迎えに行く」
そんな一方的な約束を残して。
そして何故か私の目の前に、二個目のケーキがやってきていた。
「先に出られたオルブライト様がお支払いを済まされております」
「えっ、私の分もですか?」
「はい。それから帰りしなに、こちらを注文されていきましたが」
そう言って差し出されたのがこのチーズケーキだった。
上に焦げ目がついていて、とても美味しそうだ。チーズケーキも私の好物なのだ。
「お召し上がりになりますか? お包みも出来ますよ」
運んできてくれた店員さんにそう聞かれ、チーズケーキもここで食べていくことにした。
「うう、美味しい……」
外側は焦げているが苦くはない。むしろカラメルのような風味がついているくらいだ。味は酸味が少なく濃厚で、しっとりした口当たりがたまらない。
──レオンってば、やっぱり私の好みを知ってるみたい。
不思議だ。
てっきりレオンはこれからも私をいじめ抜くために婚約するつもりなのかと思ったが、それならこんな風に私を喜ばせる必要はないはずだ。
──わかった! きっと私がチーズケーキを嫌いだって誤解してるんだわ!
だからわざわざチーズケーキを注文してから去ったのだ。きっとリサーチ不足だったに違いない。
──でも、そうはいかないんだから!
美味しいチーズケーキを食べながら、週末にレオンに意地悪する算段をつけ始めたのだった。
※※※
作戦を練っているとあっという間に週末になった。前日には興奮して中々寝付けなかったくらいだ。
「よし、やるわよ!」
まるで私がこの日を楽しみにしていたみたいで心外だが、ようやくあの憎きレオンにやり返せるのだ。気合いも入るものだ。
「グレイス、レオン様が迎えにきましたよ。婚約を嫌がっていたと聞いたけれど、上手くいきそうでよかったこと」
上機嫌のお母様が私を呼びにきた。
約束の時刻通りだ。
お母様は私を見て眉を寄せた。
「まあグレイスってば、そんな地味な服で行くのつもりなの? 普段着でしょう、それ」
「ええ、これで構わないわ」
私はいつも通りの服装で向かうことにした。レオンにも騎士服はおろか、派手で目立つ格好はしないように連絡済みである。
「でも……せっかくレオン様とのデートなのだから、もっと可愛い服を着たらいいじゃないの。あ、もしかして服を買っていただく約束をしたのかしら?」
「はずれですお母様。待たせてしまうので、もう行きますね」
応接室に行くとレオンが待っていた。ちゃんと私が連絡した通り、比較的地味な服装である。レオンは外見が良すぎるのでそれでも目立つが仕方ない。
レオンは私を一目見るなりパッと顔を輝かせる。
──なるほど、今後はそういう演技をするってわけね。
まるで私たちの関係が上手くいっているかのような振る舞いをするつもりなのだ。今後私がレオンにいじめられて、それを告発したとしても誰にも信じてもらえないだろう。
──いいえ、負けないんだから!
「やあ、会いたかったよグレイス」
「そう。私はそうでもないけれど。早く行きましょう」
私の塩対応にお父様もお母様も真っ青になっているが、これはそういう勝負なのだ。
「グレイスはどこへ行きたいんだ? 今日は君が望む場所に向かおう」
私はニッと笑う。
幼い頃にいじめられたのをやり返すのだ。まずはレオンの苦手そうな場所に連れて行くことを思いついたのだ。
レオンは肉体派で、魔術騎士として普段から鍛えている。それに元々の体力が軒並み外れているのは、子供の頃から引っ張り回されたことで骨身に染みていた。
一方、私は子供の頃から本を読んだり室内で大人しく過ごすのが好きだ。
つまり私のホームであり、レオンにはアウェーとなる場所。
「──図書館に行くわ!」
私はビシッと告げる。
図書館はおそらくレオンにとって縁がなく、居心地が悪い場所のはずだ。
「わかった。王立図書館でいいんだな。行ったことはないけど場所は把握している。さあ、行こうか」
レオンは私をエスコートして歩き始めた。
行ったことがないとはしめたものだ。平気そうな顔をしているけれど、きっと内心では困っているはず。
「図書館で何か探し物か?」
「いいえ、本を読むのよ」
私は図書館が大好きだ。
紙とインクの匂い、パラパラと本を捲り物語に没頭する静謐なひととき。地味だと言われても私はそういう時間を愛している。
図書館へ着くとまっすぐに本棚へ向かった。
エスコートされてはいるが、私はレオンのことを気にせずに本を選び、日差しが当たらず、かといって薄暗くもない席に着席した。そのまま本を開いて黙々と読み始める。
レオンが隣の席に座り、私の方を見ているようだが、本に没頭するうちにそれすら気にならなくなっていく。
「……はあ、面白かったぁ」
しばし後、本を読み終わり、パタンと閉じた。
本の世界に浸っていた後の緩やかな疲労感も好きなのだ。肩が凝って頭が重いけれど、それを感じながら読んでいた本の内容を思い返すのも、たくさん読んだ実感がして楽しい。
ふと時計を見れば二時間以上経過していた。
ハッとレオンのことを思い出して横を向くと、レオンはこちらを見たままじっと座っている。
「あ、レオン……!」
いたことを忘れてました、とは言いにくい。
それにこれはレオンへの意地悪なのだ。
「グレイス、楽しかったか?」
「え、う、うん……」
レオンは焦れたり、うんざりした様子もなく、自然体で座っている。
「あ、あの……疲れなかった?」
「いや、全然。本を読むグレイスを眺めているだけで幸せだったから」
──おかしい。私のペースに巻き込んでうんざりさせる嫌がらせのはずなのに、レオンはまったく堪えた様子がない。
「ええと……」
「グレイスとお喋りもしたいんだが、図書館だし控えよう。そろそろ喉も乾いただろう」
レオンはそう言ってまた私をエスコートして図書館から出る。
「グレイスはこの後の予定を考えているのか?」
「う、ううん……」
図書館で思う存分本を読み、レオンをくたびれさせることしか考えていなかったのだ。
レオンの言う通り喉も乾いているし、お腹も空いてきた。
「じゃあ、ランチは俺のおすすめの店に行こうか」
──あれあれあれ? なんだかレオンのペースだ。おかしい。こんなはずじゃなかったのに。
私は頭にクエスチョンマークを浮かべたまま、レオンに着いていった。
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