36 / 50
35.葛藤※(アルベルト)
しおりを挟むクリスが持ってきてくれた薬を飲み、俺は、自室のベッドで横になっている。アルベルトは部屋に残っていて、ベッドに腰をかけ心配そうに俺を見下ろす。
俺の体温を確かめるように、おでこや頬を触っている。体温の低いアルベルトの手が俺の肌の上を滑っていき、くすぐったい。俺はアルベルトの手を取り頬に擦り寄せる。
「アルベルトは、体温が低いから冷たくて気持ちいいな。」
「・・・・・っ!」
パッと瞬時に手を振りほどかれたことに驚き、寂しさが湧き上がる。
「えっ?なんで?・・・あぁやっぱり風邪移ったらダメだもんな。ごめん。鍛錬中だったんだろ?俺は大丈夫だから戻っていいよ?」
寂しさは残るが、こればかりは仕方がない。大人しく寝ようと目を瞑ると、ドンっと音がした。驚いてそちらを見るとアルベルトが頭を壁に打ち付けていた。
「ちょっ!何してんだよ!?」
俺は急なことに起き上がり慌てて止めに入る。壁にもたれかかっていたままのアルベルトの頭が少し俺の方に傾いた。見えたおでこが少し赤くなっている。
なんて声をかけていいか悩んでいると、アルベルトがボソッと何かを言ったのが聞こえた。
「傍で看病していたいが、必要以上に触ってしまいそうだった・・・。」
いじけるような、そんな声に笑ってしまう。
「ははっ、もしアルベルトに風邪が移ったら、俺が治癒したらいいよな?」
俺はアルベルトの横髪をそっと耳に掛け、キスをしようとしたが、口元を手で覆われ出来なかった。
「熱が高いから休んでくれ。私は一度自室に帰る。」
そういうと転移魔法でも使おうとしたのか、俺の口元から手を離し、後ずさる。俺はアルベルトを逃がすまいと、隊服の袖を摘む。
「行かないで、アルベルト好きだよ?お願い?」
俺は袖を掴んだまま目を瞑る。アルベルトは優しいから、多分俺の手振り切ることはない、と思う・・・。
何秒たったかな。そろそろ目開けたいかも。諦めようとした時、そっと触れるか触れないかのキスをされた。思っていた何十倍も軽いキスに物足り無さを感じる。
「足りないよ。もっと。」
俺は、アルベルトの腰に手を回しもう一度キスをせがむ。
「体調が治ってからにしてくれ。頼むから。・・・ナオトことが大切なんだ。大事にしたい。」
そう言って俺を離そうとする。俺の事を思って離れようとしてるなら譲れない。アルベルトの身体に回している手に力を込める。そのまま俺が無言のままでいると「なるべく負担にならないようにするからな。」と待ち望んでいた言葉が降ってきた。
服をはだけさせて、向かい合い俺がアルベルトの上に跨ぐように座る。熱を帯び、固くなるそれはお互いに興奮していることの証明で、恥ずかしくもあるし、嬉しくもある。アルベルトのごつごつとした手が二人分のそれを優しく包み込みゆっくりと扱いていく。俺はアルベルトの首の後ろに手を回す。
これがいつもは俺の中に入っているのだと考えると欲しくなってしまう。そんなことが頭を過ぎっているうちに下半身からの刺激が全身に伝わって、声が漏れる。
「んっ、はぁ・・・、あっ。んん。」
いつもキスをしたり、顔が近くにあることはたくさんあったけど、こんなに長い間この距離で見つめ合うことはなかった。
至近距離で、自分が感じる顔を見られるのは恥ずかしい。俺は手の甲で顔を隠し、なるべく見せないように目を逸らしてしまう。すぐに顔を隠していた手が退けられキスをされる。
「・・つっ、ふぁ、あっ・・・んぁみっ、ないでぇ」
アルベルトもちゃんと感じてくれているか心配で見上げると、肩で息をしながら堪えるように俺を眺めている。息を荒くしているアルベルトの吐息も近い。どちらのか分からない先走り液が垂れていく。少しずつ激しくなっていく手の動きに、卑猥な音が耳を犯す。そのうち快楽の波が襲ってくる。
「あっ!んっ、・・・そんなっ、あっ!んっっ、もうっ、あぁ!」
ドクっと、先端から熱いものが放たれ、身体が震える。
「ごめっ、俺だけイッちゃった。」
イクの我慢できなかった。アルベルトの顔見れない・・・。
息を整えている間アルベルトは俺の額にキスを落としてくれている。アルベルトにもちゃんと気持ちよくなって欲しい。
俺は、スッと下に降りていきアルベルトのまだ固いものを舐め上げていく。
「・・・ナオト、・・・っ、無理するなよ。」
熱が出てて体温が高いから口内も温かくてきっと気持ちいいはず・・・。俺はアルベルトの反応を確かめるように見上げる。
「ふぅちのふぁか、ひもちぃぃ?」
「っ・・・!そこで喋るな!・・・ナオト・・・。」
舐めている俺の頭をずっと撫でてくれている。咥えてるのが苦しくて、裏筋を舐めたり手で触ったり・・・。時折ビクビクするのが嬉しくて、深くまで咥え込み頭を上下に動かす。
「ナオトっ、もう 離してくれっ!・・・・うっ、っ」
あっという間にドクドクという脈打ちと、口内に拡がる苦いものを感じる。口で受けとめたものを反射的に飲み込んでしまった。
苦くて、ドロっとした液体が俺の喉をゆっくり落ちていく。
「んっ、にがい・・・・・。気持ちかった?」
「・・・・。すまない。」
申し訳なさそうに言うアルベルトに俺はムッとする。
「気持ち良くなって欲しくてしたのに、そんな顔するなよ。アルベルト大好きだよ。」
「あぁ、私もナオトが大好きだ。」
その後は、アルベルトが汗だくの身体を拭いてくれた。身体を拭く手付きがいつにも増して優しくて、たまには風邪引いても良いかなと思った。
薬のおかげか事後だからか、上がっていた体温が少しずつ下がっていき、それに並行して意識も薄れていく。俺の隣にはアルベルトが添い寝してくれている。体温を、気持ちを確かめるようにお互いに額を擦り寄せる。そして、アルベルトの香りに包まれながら心地よく眠りについた。
31
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる