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27.漏出の愛欲※(カイ)
しおりを挟む夜の支度を済まし、カイの部屋に来ている。普段使われることがないためか物が少ない。どこに居ていいか悩んでいると、既にベッドで胡座をかいているカイに手招きされる。促されるまま行くと腕を引っ張られ、後ろから抱きしめられる。そのまま倒れ込むようにベッドに横になる。
「今日は何もしないから隣で寝ててくれ。」
今日はってなんだよ!と心の中で突っ込む。それよりアルベルトがただの挑発に乗って条件を飲むようには思えない。結局教えて貰えなかったし・・・。
「アルベルトになんて言ったんだ?」
「はぁ、こういう時に他のヤツの名前を出すもんじゃねぇよ。」
思いのほか苛立った声に、謝るために振り返ろうとしたがカイに首元を撫でられ叶わなかった。
「これ・・・、あいつか。」
なんのことか分からず、返事を損ねているとカイが撫でていたところへ吸い付く。
「んっ!?」
「他は付けられてねぇか?」
急なことに固まっていると、背中側の服を捲られる。背中であろうがまじまじと身体を見られたら、さすがに恥ずかしい。
俺を転がして次は前を見ようとするため、手を抑え抗議する。
「いきなりなんだよ、さっき何もしないって言っただろ!」
「そうは言ったが・・・。男のその言葉を信じたヤツが悪い。」
拗ねているような、開き直るようなカイの物言いに反抗心が湧く。
「約束は約束だからな。」
掛布団を掻き集めて、身体を丸める。
カイの手は俺に触れるか触れないかの距離で躊躇っている。
「俺だってナオトを大事にしたい。本当にするつもりなんてなかったよ。でも、次会える保証なんかねぇんだから欲も出る・・・ダメか?」
そんな顔するなよ。いつもみたいに強気に笑っていればいいのに。次に会える保証がないという言葉に胸が痛くなる。頭の片隅では分かってる。考えないようにしてたのに。
さっきだって騎士達が鍛錬をしているところを見てきた。剣や、更には攻撃性のある魔法を使ってるんだ。騎士としての日々に命が掛かっているのは一目瞭然だ。そんなん言われたら断れないだろ。
沈黙が長かったせいか、カイが「分かったよ、おやすみ。」と離れていき寝ようとしている。
慌ててカイにすり寄り、腕にしがみついて見上げる。
「・・・誘い方なんか分かんないんだけど。」
「充分だ。」
カイは、俺に覆いかぶさり優しく触れるだけのキスをする。そうかと思えばぬるっと舌が入ってきて貪るようなキスに変わる。
「んっ、・・・・ふぁあっ、カイ、」
カイの熱い口内が体の熱を助長させる。呼吸が上手くできない。息苦しくなり目が潤む。その内、目に溜まりきれなかった涙が溢れる。
「嫌なら無理するなよ。同情はいらねぇ。」
「同情?ちがうよ。カイのことが大切なんだ。だからちゃんと無事でいてくれないと困る。」
カイの首に腕を回して治癒と、カイの体に膜を張るように魔力を流し込む。いつまで持つか分からないけど、守れればいいな。
お互いに服を脱いでいく。カイの身体は筋肉質なだけではない、骨格から違う。胸元には細長いケロイドがある。俺は心音を確かめるように厚い胸板に手を添える。
何度もキスをして、肌が触れ合うところから少しずつ魔力を流していく。その度にほんのりと天色の光が灯る。
「随分余裕だな。」
「カイが優しすぎるんだよ。もっと荒くしていいよ。」
「せっかく抑えてやってんのに、そんな事言っていいのか?」
カイの大きな手が俺のを扱く。
「うっ、あぁっ・・・んっ。カィ」
俺もカイのものに手を伸ばす。思った以上に大きく熱いそれに気持ちが昂る。カイの息遣いも荒くなっていく。
「ナオト・・・。付き合わせてごめんな。」
まだそんなことを思っていたのかと、俺に覆い被さっているカイをめいっぱいの力でひっくり返す。
「何で伝わってないんだよ。」
自分で香油を塗る。不安だけど多分大丈夫。カイに跨り反り返るそれを少しずつ入れていく。
「・・・・はぁ、あっ。ン」
「っ、やめとけ。ちゃんと慣らしてから。」
カイは俺の腰を掴み抜こうとする。俺は抵抗するようにカイの手を退けて腰を落とそうとしたが、勢い余って最奥を突いていまう。
「゛あぁっあ!・・・ふうっ・・・・はぁ、はいっ・・た?けど・・・。」
軽くイッた感覚と、先端から垂れる精液。
「んっ!ばか!無茶しやがって・・・。」
「カィ、好き、だ、・・・っぅ、俺のとこに、また、ちゃんと戻ってきて。」
こんな事言うのは困らせるだけだと分かってる。でも『次』の約束を取り付けずにはいられない。カイの余裕のない顔も、聞こえる吐息も一つ残らず俺の記憶に残しておきたい。
カイにも俺と同じ気持ちであって欲しい、俺の気持ちも伝わって欲しいと動こうとするが芯をつくようなカイのものに脚がガクガクと震え力が入らない。
「う、ごけなっ。カイっ」
カイは上体を起こし俺の体に腕を回す。ゆっくりと俺の中を探るように動く。そして、首元や胸部に痛みの走る吸い付くようなキスを落とされていく。
下腹部の圧迫感は慣れることはないが、痛みから快感へ変わる。探るように動いていたそれも、俺の息遣いに合わせてイイところに突き上げてくる。
「ぁああっ!カ、イ、・・・んっ。好きっ。カイっ!」
押し上がってくる快感に、迫って来る波から逃げられない。強くなっていく律動にただ、しがみつき嬌声と共にカイの名前を叫ぶ。
「カイぃ!あぁっ、・・カっ、イ好き!はぁっあ!あっ・・・。」
「はぁ・・・出すぞっ。」
同時に果て、脈打ちを感じ終わる。完全に力が抜け、体重を預ける俺を包み込んでくれる。剛腕な腕に支えられ縋るように見上げる。
「はぁ・・・カイ、もっと俺の名前呼んで、好きって言ってくれよ・・・。」
「好きなんて綺麗なもんじゃねぇ。・・・執着だ。名前なんか呼ぶと離れるのが惜しくなっちまうだろ。」
カイは俺の頭を枕がある方へ導く。汗ばんだ髪を掻き上げ、真上に見えるオリーブ色の瞳が今は獣のようだ。出会った頃の単純に豪気なだけではない。貪欲な劣情と、執着心、でも確かに純粋な愛が見える。
「それって愛してるって言うんじゃないの?俺はいつでも、ずっとカイのこと待ってるから言葉にしてほしい。ちゃんと名前呼んでくれるまで終わらないからな。」
俺は手を広げカイに天色の光を纏わせる。事情により消費したカイの体力を回復させる。
「寝かせないつもりか?」
カイは俺の耳朶を噛み、刻むように囁く。感じやすくなった体はそれだけでビクビクと震える。
「ナオト・・・愛してる。」
繰り返し耳元で囁かれる名前と愛の言葉、再び繋がれるのは身体だけじゃない。
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