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17.臥所の余韻

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 倦怠感と腰の痛みで、余韻から抜け出せない。それに、いつ目を開けようかが悩みどころだ。さっきから俺の髪を撫でたり、時折おでこにキスしたりしている。瞼を閉じたままでも相手がアルベルトだと断言できるのが居た堪れない。

 ポーカーフェイスは得意なはずなのに口元が緩みそうになる。いっそのこと思い切って目を開けようとしたときアルベルトが部屋から出ていってしまった。
 安堵の溜め息を漏らし起き上がると、やはりそこには誰もいない。窓の外は宵の空だ。身体も拭かれていて、寝巻も着せてくれている。全身からアルベルトの匂いがして落ち着かない。
 寝たふりでは気持ちが持たないから、本当に寝ようとしていたところ扉が開いた。

「目が覚めたんだな。身体は大丈夫か?」
 どうやら軽食を持ってきてくれたらしい。アルベルトは、それを机に置くとベッドに腰を掛ける。俺はまともに顔が見れなくて寝返りを打つ。
「ナオト・・・?」
「俺は大丈夫だから、服もありがと。」
 事後感のある会話にさらに顔に熱が昇っていく。そっぽを向いたまま、どうしたものかと悩んでいるとアルベルトの儚げな声が聞こえる。
「やっぱり嫌だったか?」

 そこでハッとする。俺がアルベルトを拒絶した感じになってる?全然違うのに。どうにかして誤解を解こうと思うのに、視線を交わすことは出来ないから目線だけ送る。
「嫌じゃない。むしろ、その・・・、幸せすぎて恥ずかしくてそっち見れない。」

 それだけ言うと俺は布団を頭まで被る。うまく言葉にできないもどかしさが滲む。ただ、アルベルトのことを嫌ってる訳ではないことが伝わればいいなと開き直り自分に及第点を送る。

 反応がない事に不安になり布団を被ったまま体の向きを変え、ちらっとアルベルトの方を覗き見る。手で口を覆い僅かに頬を赤らめている。アルベルトにしては珍しい表情に心が浮き立つ。見入っていると、手首あたりに引っ掻き傷があることに気がつく。思い出される最中の記憶。

「・・・アルベルトごめん、いっぱい爪立てちゃったよな。治癒するから手貸して?」
 俺は布団の中から手を差し伸べるが、指を絡め取られる。
「これは治さなくて良い。ちなみに背中もヒリヒリするから、跡が残ってると思うぞ。」
 イタズラな笑みを浮かべるアルベルトに胸が沸き立って、もう一度布団を頭から被った。
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