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しおりを挟むあれは、10年前。
高校生の私は初めて人を殺した。
相手は親だった。
家族は仲が良かった。
しかし事件がある1年前、父親はリストラされた。
最初は次の仕事が見つかると信じていた。
しかし、世の中は無情で父親の仕事は見つからなかった。
一獲千金を狙いギャンブルにも手を出した。
結果は分かりきってる。
借金だけが残った。
呑んだ事のない、酒に溺れた。
絡まれたくなくて、家出して、おばあちゃんに頼んで家を借りた。
その時に気付けばよかった…。
私が家出していなければ…。
事件が起こる前日、私は家から学校に行く時、偶然弟の左京に会った。
「えっ?左京だよね、どうしたの?」
左京は全身痣だらけ、腕にはタバコの跡、あまり食べさせてもらって無いからか、痩せこけていた。
「ね…姉ちゃん。助けて!」
「父さんと母さんは?」
「お袋はパチンコから帰って来てない。親父は、姉ちゃんが家出してから、より一層酷くなって。」
「左京、ごめん。私が家出なんかしたから酷い目にあって。とりあえず、これ食べて。」
昼食のおにぎりを左京に手渡した。
「美味しい!姉ちゃんありがとう。」
「もっと食べて!」
私は電話で学校に休む事を伝えると、左京の手を引いて家に向かった。
「ここが姉ちゃんが今住んでる家?」
「そうだよ、そして左京もここに住むんだよ。」
「いいの?俺迷惑かかるよ。」
「何言ってるの?家族なんだから迷惑かけて当たり前だよ!」
「ありがとう。」
あの時、左京も連れて行けば傷付く事は無かった。
左京も嫌な思いもしなくてすんだ。
家族を傷つける家族なんか、もう家族じゃない!
私の中で糸が切れた瞬間だった。
私は急いでホームセンターでナイフを購入した。
ナイフを鞄に入れ、家を出た。
ターゲットのいる家に入った。
「ただいま…。」
しかし、誰もいなかった。
私は物陰に隠れ、酒瓶の山付近を見ていた。
日が変わるとお父さんが帰ってきた。
パチンコでもしていたんだろうか?
「おい!左京!いねぇのか。どこ行きやがった!」
不機嫌だ、こんなお父さんは見た事がない。
意を決して、父さんに近付いた。
「父さん、ただいま。」
「れ、玲華!いつ帰って来たんだ?」
「さっき、話がしたくて。」
「話?」
「今左京は私の家にいる。もうこの家は戻らない。」
「何だと!」
「そして、私も別れを言いに来た。「バイバイ」」
「ふざけるな!子供のお前達が何が出来る。生活出来るわけないだろが!そんな戯言言うならば……ぐっ!」
父さんは腹部を見るとナイフが刺さってる事に気付いた。
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