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モノカケラ10

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 春夏秋冬「はるなつあきふゆ」……。花鳥風月の季節です。八景などという言葉があるように、自然の治癒力は素晴らしいと思う。四季折々の季節を感じいずる時、斜頸に似た干渉を思い出す。傾斜面を滑りながら、浪漫を感じる。そりで滑る人あり……。勢い良く滑るも滑走しながら木にぶつからんとす……。「だいじょうぶですか?」の声掛けが命取りだとは、誰が思いましょうか。

 スキー場で出会えし青年は、瞳の美しき性格のおっとりした感受性が強く、稀に見る白馬の王子に見えたという。白馬の王子が木にぶつかるかな……。そんな他愛もない会話から始まった。恋愛とはいつも盲目。

 「人が転んだら、痛い思いをしたら、声をかけましょう。」そのような教育が間違っているとは思わない。ときと場合によるだろうし、それで痛い思いをするならば、自己責任となるだろう。しかし、この男性は初めから違ったのである。全てが計算尽くだとは思えない。そんなお茶目がいたとしたらば、女性はどのように対処すべきであろうか?

 「瞳孔が開いています……。」まさか、薬物依存症者だなんて誰が思いましょうか?恋愛対象には歳が違いすぎます。相手もわたしなどに恋をするはずも御座いません。そう思うのが、当たり前だと思うのです。

 怪我をした御仁を放置して去れば、どうでしょうか?家訓の名折れと言われましょう。優しさが救うとは申しません。ですから、あなたには、して欲しいのです。これまで何人の女性が騙されたのかなど、誰が信じえましょうか……。わたしは、私のすべき事をしたまでです。

 「ちょっと…やだ………。」

 『竹取物語は好きかい?』「はい。大好きです。」ダービースタリオン3というゲームをしながら、彼が聞いてきた。『じゃあ、ビデオを観ようか?』と言うと、ブルーレイをゆっくりと取り出して、パイオニアの機器へと挿入する。大画面が広がる。43インチのディスプレイに広がる物語。4Kウルトラで観る映像は、優しかった。

 今から考えれば、どうしてイカゲームじゃないの?ダビスタって古過ぎない?などなど突っ込みどころが満載であろうと思う。夜も更けてきて、じゃあ帰るね。ありがとう御座いました。駅まで送ってゆくよ。どうもありがとう!この会話が災難を呼び込むでしょうか?幸せな時間……。わたしが右側を歩く。彼が左側を歩く。自然と手と手がぶつかり合う。でも一回目だし……。ここは断っておこう。

 そう思い直し。彼の瞳を見つめると……。あなた誰……。

 わなわなと力が奪われてゆく。小刻みに震える足先。彼はこちらを向いて『寒いのかい?』と聞いてきます。意識が飛びそうです。へなへなと道路に突っ伏してしまう。どれくらい時間が経過したのでしょうか……。温かい……。しかし、自分のお家ではありません。

 何やら影が遣って来ます。力の入らない指先。痺れた感じがする舌先。縺れたように歩けない足元。心臓が飛び出しそうな口元。ぼーっとする……。意識が薄れてゆく……。

 次に目が覚めると、お洋服がありません。どうしたのでしょうか?暗ーい、裸電球が揺れている……。さっきの場所とは違うみたいです。ここはどこなのでしょうか?

 「痛い……!!」電気がビリビリって走った感じで目が覚めます。裸電球から雫が垂れており、どうやら感電したみたいです。目の前には食事が置かれてありました。ここはどこなのでしょうか?視点が定まりません。感電したからでしょうか。舌先が凍えています。足が靴もどろんこっまみれっ、です。

 次に起きた時は、鳥のさえずりが聞こえます。朝なのでしょうか?時間の感覚がまるでありません。「もう……やだ……どこなのよ……。」

 目の前には、先程と異なる食事が置かれています。天井から日が差すようにして、明かりが燈りながら、地図を指し示しています。「wakonia 48006 と記載されています。」壁は蝋で塗った刳ったような跡があります。触れると、ヌチャリと嫌な音を立てました。

 どうやら、幻想を見ていたようです。ずっと夢の中にいたようなのです。朗々と音が響いています。嫌な音ではありません。突然、ドンドンドンドンッッッ!壁を叩く音がしました。隣にも誰かはいっているのでしょうか?

 上からは時折、トイレを流す音が聞こえてきます。失礼な人……。人がいる頭の上でお手洗いを流さないでくれるかしら……。わたしは、悲しみに暮れながら「泣かないもんっ……。」と言いました。そう言った後なのに「ふんふん……。鼻を啜る……。うぇーん……。しくしくと涙が止まりません。」どうやら壁の中の国に閉じ込められたようなのです。

 ここにあるものはなんだろうと思い、見回します。お手洗い。お食事、かべ、かべ、壁……。脳が弾けたようになり、回想を行います。

 私は誰……。お前は誰だ……。その声だけが響きます。私の名前は「桜……。」春に咲く「桜です……。」春夏秋冬の移ろいは早く、季節の変わり目を彩る。そして、今も凍えながら、季節の彩を感じています。

 そして眠りへと落ちてゆく……。

 「ちょっと…やだ………。」私は抵抗できる声を上げました。この人たち誰?「離して…やーだー……。」声は空しく響きます。次の瞬間「さむ…。その場に蹲りました……。」凍えて死んでしまうわ。そう呟きながら、辺りを見渡します。かべ、かべ、壁です。一体ここはどこなのでしょうか?

 人質のように囚われの身になりながらも、悶える肉体は、一糸乱れぬ胡蝶蘭のようです。しかし、その形は、とてもではありませんが、「尊敬や愛などとは程遠い存在でした。」

 引き摺るように連れて行かれた先には、乳母車のような、平均台のような……。お産婦台があるのみでした。抵抗する暇もなく、お産婦台へと乗せられて、足を開かれたまま、ガチャリ、ガチャリと手も足も動かない形へ……。

 どうしたらいいのでしょうか……。
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